α版とβ版のお話。
今回のお題はα版とβ版のお話。
α版(初版:黒枠)が発売されたのは1993年8月。
β版(初版:黒枠)が発売されたのはそこからたった2ヶ月後の1993年10月。
ついでにUnlimited(第二版:白枠)が発売されたのはそこからさらにたった2ヶ月後の1993年12月。
Revised(第三版:白枠)が発売されたのはUnlimitedから約半年後の1994年4月。
言うまでもなく、これが世界初のトレーディングカードゲームの発売。
Magic: The Gatheringがカードゲームの王様としてこの世に君臨した年。
数えてみれば今からもう15年以上も前の事。
αとβとUnlimitedのカードセット内容は基本的に全て一緒。
とはいえ違いがいくつかある。
αには、
《Volcanic Island》
《黒の防御円/Circle of Protection: Black》
の2枚が存在しない。
ただ「入れ忘れた」という素晴らしい理由だ。
αとβの時間差がたったの2ヶ月のため、
αだけでデッキ構築していた人はまずいないだろうが、
αだけで組むと黒だけ防御円で防げない色だった。
この「入れ忘れた」という理由のおかげで、
βの《Volcanic Island》が高値になっている。
αが無い分だけ他のデュアルランドよりも枚数が少ないからである。
αとβには他にも違いがいくつかあり、
《Cyclopean Tomb》:コストが書いてない。(本来のコストは4)
《エルフの射手/Elvish Archers》:パワーとタフネスが逆。(α版は1/2、β版以降は2/1)
《オーク弩弓隊/Orcish Artillery》:α版のコストが1赤(本来のコストは1赤赤)
《オークの軍旗/Orcish Oriflamme》:α版のコストが1赤(本来のコストは3赤)
《赤霊破/Red Elemental Blast》:α版はカードタイプがインスタントだった。(本来はインタラプト)
の5種のエラーカードが有名だ。
《赤霊破/Red Elemental Blast》だけはカードタイプ:インスタントが、
現在のルールではむしろ適性になっている。
インタラプトって何?という人に説明をしておくと、
「スタック中にインタラプトが乗ったら、
インタラプトでしかそれに対応出来ない」
と言えばわかるだろうか。
昔、《対抗呪文/Counter Spell》もインタラプトだった。
例えば、相手プレイヤーがクリーチャー呪文を唱えたとしよう。
これを自分が《対抗呪文/Counter Spell》で打ち消そうとする。
この時点で、
今のルールなら、相手プレイヤーは《渦まく知識/Brainstorm》を撃って、
それから《赤霊破/Red Elemental Blast》を撃てる。
昔はインスタントとインタラプトが別だったのでこれが出来ない。
(《渦まく知識/Brainstorm》がインスタントのため)
《対抗呪文/Counter Spell》というインタラプトがスタックに存在したら、
それに対抗出来るのはインタラプトだけというルールだった。
この頃のカウンター呪文はこのルールであるがゆえに、
今よりももっと強かった。
このルールが無くなり、インタラプトも全てインスタントというルールに変化し、
ルールはよりわかりやすいものになった。
また、気づいた人もいると思うが、
これをもっと極端にしたものが「刹那」というルールだ。
αの《赤霊破/Red Elemental Blast》は現在のルールであればカードタイプに間違いはない。
当時では、
「インタラプトにはインスタントでは割り込めない」
だったので、
「αの《赤霊破/Red Elemental Blast》は弱い!
インスタントと書いてあるから青の呪文をカウンターできない!」
などという冗談が飛んだ事もある。
αとβの区別がつかないとお客様に言われた事がある。
カードの角を見ると案外簡単に見分けがつく。
αは今のカードのカットと違って角がまるい。
βは今のカードのカットと同じだ。
また、
全てのカードに共通しない違いだが、一部のカードはαとβで記述が違う。
一例を出しておこう。
これはαとβの《極楽鳥/Birds of Paradise》。
左側がα、右側がβ。
見ての通り何故かαのほうは「//」と入っている。
βのほうはFlyingで改行されているため、
行数も違う。
さてさて、
これを読んでいる人の中でβのスターターやブースターをあけた事のある人はいるだろうか。
Cardshop Serraのこらむを読んでいる人がどのくらいいるかは知らないが、
βのパックをあけた事のある人は読んでいる人の1%程度ではなかろうか。
自分は2回ある。
1回目は友人達とスターターを開封した。
2回目は世界選手権の参加資格を蹴っ飛ばして、
世界選手権の会場で行われたサイドイベント、
「βを開けられるドラフト参加権」
を賭けたシールド戦で優勝してブースターを開封している。
この時は周囲の友人に、
「世界選手権出ないとか、馬鹿じゃないか?と思ったが、
あっさりと優勝して権利獲得するあたり、何も言えなくなった。」
「さすが世界選手権蹴っ飛ばすだけの事はある。」
などと言われた。
この開封した2回のうち、
1回目のスターター開封時、
出てきたレアがαだった。
何を言っているのかわからないと思う人も多いだろう。
βを開封しているにもかかわらず、レアだけがαのカットだった。
角がまるかったのだ。
しかもその時βスターターを開封した4人全員がだ。
その当時、もちろん何故こうなったのかなんて理解出来なかった。
ただ、「なんか悔しい」と思ったものだった。
また、
「αレアをわざわざβレアを抜いて入れなおして、
パックを綺麗に閉じたんじゃないか?」
なんて事も考えた。
今はそんな事はないが、
丸いカットのαより通常カットのβのほうが価値がある
と見なされた時代でもあった。
なお、出たレアは
《Wheel of Fortune》
《Fastbond》
の2枚。この時代はスターターから出るレアは2枚。
3枚になるのはRevisedからだ。
あの当時記憶が間違っていなければ、
βのスターターを3万円くらいで開封した。
少なくとも現在の値段なら、
この2枚で元がとれている数字だ。
《Wheel of Fortune》はその後PSA鑑定にかけて8がついた。
ついた評価は「α版 Wheel of Fortune PSA8」である。
このβから出るαレアというものは、
別におかしな事ではない。
知っていればおかしな事ではないと言うのが正解だろう。
タネ明かしは、
「α刷り過ぎちゃった♪
めんどうだからβに入れちゃえ♪」
という一瞬耳と目を疑いたくなる理由だ。
信じられないかもしれないが、これが本当。
とはいえ、βの中にαが混入していても、
発行枚数ではβのほうが多い事には変化はない。
このβから出るαカードについては、
このこらむのαとβの区別のところにあった、
「全てのカードに適応出来ない違いだが、一部のカードはαとβで記述が違う。」
というものでも証明されている。
βのパックからαカットのαの記述のレアが出たのだから、
このカードはβのレアではないと言い切れるだろう。
しかし、この事でWotC社に文句を言ってはいけない。
1つには、おおらかな時代だったのだろう。
また、αだけで言っても最初に刷ったカードを半年かけて売る予定だったのだが、
それをたった6週間で売り切ってしまった。
今でこそMTGは世界的カードゲーム、カードゲームの王様となり、
WotCはそのMTGの親となっている会社だが、
当時はとても小さい会社だった。
WotC社もその当時、
まさかMTGがこれほど世界的なカードゲームになると思わなかったのだろう。
これはWotCにとって嬉しい誤算が2つあったということ。
・MTGが即売れてしまうヒット商品だった。
・MTGがその後、自社の最高のメイン商品になった。
ここは想像に過ぎない部分だが、
αの刷って余ったレアを捨てるのはもったいないと考え、
経費削減の一部のような感じでβの中に入れた可能性はある。
小さな会社だった当時では仕方ないのかもしれない。
そして予想以上の速度で売れたため、
急ピッチで次のβ版を用意したという事情も重なったのだろう。
現存する未開封のβがあとどのくらいあるかはわからない。
が、その中の一部にはαが混入していると思われる。
もしこれを読んだ人が開封してαが出ても、
WotC社を恨まないであげてください。
ではまた。









