贋物その3。

先日、お客様よりお問い合わせがあった。

お問い合わせの内容は
「カードの真贋を見て欲しい。」
というもの。

こういったお問い合わせはCardshop Serraでは、
比較的頻繁に来る。
お問い合わせしてきたお客様の中には、
「鑑定書をCardshop Serraで発行する事は可能ですか?」
と言ってくる方もいる。
当店では真贋の判断はするものの、
鑑定書の発行は当然していないのでご了承を。
あくまで当店の判断で真贋を見るのみにとどまり、
これ以上でもこれ以下もない。

そして、このカードの真贋についてのお問い合わせ、
おおむねはお客様の杞憂に終わるものなのだが、
時折、偽物に出会う事もある。
今回はその偽物に出会ったお話。

経緯はお客様がヤフーオークションで、
高額カードの出品物に入札をした。
この出品物にはオマケがついており、
出品物のメインである高額カードに匹敵するオマケカードだった。
当然、このような出品の場合、

高額カードの相場価格+オマケカードの相場価格

という落札価格になりがちだ。
例に漏れる事なく、
お客様は高額で落札をした。

そして、この高額カード+オマケはお客様の手元に届いた。
高額カードは本物のようだったが、
どうもオマケカードが怪しいと思ったお客様は、
最初に他店に「真贋を見てくれ」と言ったそうだが、
お断りされたらしい。
至極当然と言えなくはない。
理由は2つ。

1つ目は、
カードショップは真贋を見る事が仕事ではない。
(お金にならない仕事は受けない。)

2つ目は、
真贋に対して責任を持てない。

この2つの理由から普通は受けない。
たまたま当店は変わっているだけなのだ。
別にこんなところで自己顕示をするつもりもないが、
店主がコレクターであり、
MTGが好きだから、
お客様からのこういったお問い合わせにも、
無償でお応えするというだけである。
ただし、当店でも、

・真贋を見るにあたり、送料はお客様もち。
(返送料も含む。)

・仮に真贋について、間違い、トラブル、事故が発生した際に、
当店は一切の責任を負うものではない。


という事は前提としている。

さてお話を戻そう。
この落札をしたお客様はこんな経緯で、
当店にお話を持ってきた。
言うまでもなくこの真贋の判定について快諾し、
お客様はその落札したカードを送ってきた。

スタッフ二人と店主でそれを見た途端に、

「アウト」

の一言だった。
出品されていたメインの高額カードは本物。
しかし、オマケの高額カードは全て偽物だった。

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これがその偽物のカードの画像だ。
画像だけでは少々わかりにくく、
一見本物に見えるかもしれない。
現物を目の前にしても、
ズブの素人ならば騙せるくらいの質がある。

この画像だけでの判断では、
ガイアの揺籃の地/Gaea’s Cradle》がわかりやすいだろうか。
少し印刷の色が濃い。

当店のスタッフには、
店主以外でもMTG歴二桁年数の者が二人いる。
さすがにこの三人の目はごまかせなかった。

以下、本物と偽物の違いをいくつか列挙してみる。

・全体的に印刷が濃い。
・手触りがつるつるしている。
・本物よりやや厚みがある。
・カードを側面から見ると、2枚のカードを張り合わせたようになっている。
・携帯などのライトを当てた時、光が透過しない。

など、細かい点を挙げればキリがない。

また、重さも違っていた。
一般的なFoilでないカードはおおむね1.6g~1.8gの間である。
このこらむのためにいくつかのカードを実際に量ってみた。

初期:《平地/Plains》(ベータ):1.70g
MTG黎明期:《森の伝書使/Sylvan Messenger》(アポカリプス):1.76g
新枠:《軍勢の刃、タージク/Tajic, Blade of the Legion》(ドラゴンの迷路):1.72g
新々枠:《集団の石灰化/Mass Calcify》(Magic2015):1.73g

MTGは時代によって枠が違うので、
その差もあるかもしれないと考え、
このように時代ごとに違うカードを量りに乗せてみたが、
ほとんど変わる事は無かった。
過去に量ったものの結果でも、
軽いものでは1.65g付近のものもあったが、
1.59g以下まで軽いものは量った限りでは無かった。

参考までにFoilは少し重めで1.9g~2.0g。
こちらも実際に量った結果。

最初期Foil:《天使の学芸員/Angelic Curator》【Foil】(ウルザズ・レガシー):2.06g
プロモFoil:《迷える探求者、梓/Azusa, Lost but Seeking》【Foil】(ジャッジ褒賞):1.95g
新枠Foil:《急報/Raise the Alarm》【Foil】(ミラディン):1.90g
新々枠Foil:《真実の解体者、コジレック/Kozilek, Butcher of Truth》【Foil】(モダンマスターズ 2015年版):1.98g
From the Vault:《梅澤の十手/Umezawa’s Jitte》【Foil】(From the Vault:Lore):1.92g

こちらも枠ごとの違いを考慮して複数のものを。
枠が違っても大きく変わる事は無く、
ノーマルカードに比べて少しだけ重たい。

そして、この偽物カードの重さは、
Foilではないノーマルカードでありながら、
重さは1.9g前後だった。
こちらも偽物カードのいくつかを実際に量ってみた結果。

Tundra》:1.91g
Volcanic Island》:1.88g
石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》:1.90g
狼狽の嵐/Flusterstorm》:1.88g
ライオンの瞳のダイアモンド/Lion’s Eye Diamond》:1.90g
世界のるつぼ/Crucible of Worlds》:1.89g

この結果から見ても不自然な重さである事がわかる。
この重さはFoilカードに近い。
この結果をたまたま、偶然で片付けるには無理がある。

お客様には残念なお知らせをしなければならなくなった。
お客様は当店の真贋の通達を受けたのち、
ヤフーと警察に話を持っていった。
が、
どちらも一切動いてくれる事は無かった。
今回のケースはとても厄介なケースだった。
それは以下のような事だ。

出品されていたメイン商品は本物であり、
あくまで偽物であった品はオマケであった。
メイン商品が偽物であった場合は問題になるが、
オマケが偽物である事は問題ではない。
オマケは所詮オマケである。

これがヤフーや警察の言い分なのだそうだ。
出品者も
「ノンクレーム・ノンリターンと書いてあるし、
 あくまでそれはオマケだ。」
の一点張りだったようだ。

言い分としては確かにその通りではあるし、
結果としても十分に予想出来た範囲のお話だった。
ヤフー、警察はMTGの事など理解しにくいので、
お役所仕事的に片付けるだけ。
出品者は今更キャンセルされたくないから、
オークションのお決まり文句の、
「ノンクレーム・ノンリターン」
で通そうとするだろう。

しかし、MTGをそこそこ以上にプレイしている人なら、
これがおかしな事だと気付くだろう。
オマケのカードはメイン出品物と並ぶ程高額である。

Tundra
Tropical Island
Volcanic Island》2枚
ガイアの揺籃の地/Gaea’s Cradle
石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》2枚
狼狽の嵐/Flusterstorm》2枚
ライオンの瞳のダイアモンド/Lion’s Eye Diamond》2枚
世界のるつぼ/Crucible of Worlds
モックス・ダイアモンド/Mox Diamond
金属モックス/Chrome Mox
暗黒の深部/Dark Depth

これほどのものがオマケだろうか?
(それが本物であるのなら。)
別々に出品されてもおかしくない額の品だろう。
このオマケが本物であれば、合計で10万円を超える。
セット売りするつもりがあるのであれば、
オマケという言葉は普通は使わないはずだ。

この出品者は十中八九、
このオマケのカードを偽物カードだと知っていて、
普通に出品して問題が起きるよりも、
オマケ(+ノンクレーム・ノンリターン)と称して、

高額カードの相場価格+オマケカードの相場価格

で落札される事を狙っていたのである。
仮に、メイン商品の相場価格のみで落札されたとしても、
オマケが偽物なので痛くも痒くもない。
そして、
この出品方法であれば、
ヤフーや警察でも手が出せない事も知っていた可能性まである。

これは一般的な目で見れば間違いなく詐欺なのだが、
事件として立件出来ないのである。
詐欺という犯罪は、
とてもとても厄介で、
「詐欺をした」
という明確な証拠や条件を満たす必要があり、
詐欺を行う者はこれをかいくぐるように動こうとする。
そのため、被害者は泣き寝入りするケースも少なくない。
非常に悪質で汚いやり方である。

この出品者が偽物の生産者か購入者かで変わるのだが、
似たような手口で再度同じ事をやる可能性もある。
ヤフーIDも偽物も、
どちらもいくらでも作れるだけに厄介である。

この被害に遭われたお客様と店主は話をし、
こういった被害者を減らすためにも、
Cardshop Serraのこらむに載せるという話になった。

これを読んだ方はどうか高額の品を買う際は気をつけてほしい。
上記のような悪質な手口もありえるので、
安いから、お買い得だから、
といった理由で飛びつく事は危険を孕んでいる事を忘れないで欲しい。

また、真贋について心配になった際は
1つの方法としてはPSA鑑定という方法がある。
デッキで使うデュアルランドのようなカードでは、
PSA鑑定というわけにも行かないだろうが、
相当な高額品のコレクションならばPSAという選択もありえる。
「PSA鑑定だから大丈夫だ。」
と盲信するわけではないが、
1つの信頼出来る機関に判定をお願いする事は、
なんら悪い選択ではない。
当たり前の話なのだが、
そんじょそこらのカードショップが
「これは本物、これは偽物」
とのたまうよりも、
PSAは信用、信頼出来るのである。
自身を卑下して言うつもりなどなく、
当店も「そんじょそこらのカードショップ」の1つなのだ。

しかし、その「そんじょそこらのカードショップ」である、
このCardshop Serraを信用してくださるのであれば、
カードの真贋に限らず、
MTGの事であればお気軽に当店にお問い合わせください。

ではまた。



記事作成日:2016/11/21