Cardshop Serraのできるまで其の壱

お客様よりリクエスト。
「Cardshop Serraはどんな経緯で出来たのか」
せっかくなので滅多にないお話…というかとんでもないお話を書いてしまいましょう。
長くなると思います。

Cardshop Serraをやる前…というのか、
MTGを始めてさほどの時間経たずして、
自分で大会を開くに至った。

考えてみれば今から10年近く前の話。
Cardshop Serraの話をするにあたって、
A、B、Cの3人の男の話をしようと思う。
(Cさんは相当後にしか出てきません。)

この頃の大会の人数は非常に多く、
今のように地方都市では開催も厳しいなんて話とは違い、
開催すれば悪くても50人は来るほど。

大会を主催するようになった後、
友人(Aさん)から
「自分がカードショップを開くから、手伝ってくれないか?」
と言われた。

また、ある人からも声をかけられた。
「知り合い(Bさん)がカードショップを開くから、手伝ってくれないか?」
と。

この2つのお店の手伝いをする事に。
当時から
「一般的に販売された公式カードなら知らないカードは無い」
くらいの知識があった事と、
人をまとめる立場にあった事が、
この2つのお店にスカウトされた理由なのではないかと思っている。

Aさんはゲームの専門学校を出た20代後半のお金持ちの末っ子。
Bさんは脱サラした元プログラマーの30代の人。
(現在出てこないCさんは少し離れた市に住む20代後半の男。Aさんと歳は同じくらい。)

お金持ちの末っ子(Aさん)は親から資金を借りて(もらって)お店をスタート、
脱サラした方(Bさん)は自身と友人の資金でお店をスタート。

違ったかたちとはいえ、両方を手伝う事になったSerra。

一緒に話を進めると混乱を招くので、
まずはA店のお話から。

4月に開店。
この時点で資金を何に使った、何を仕入れたという話は、
全くしないわりに、何故かお店の内装だけ中途半端に出来ていたA店。

入り口のドアは綺麗だが、何故か看板は無い。
お店の名前はAさんと自分で決めるのかと思いきや、
いつのまにか勝手に決まっていた。

せめてもの救いは、店内にガラスケースが1つあることだけだった。
開店するほんの少し前にこのお店の問屋契約を、
何故か店主ではなかった自分がするという有様。
今から考えれば安心ビーフ100%って書いてあるくらい安心出来ない状況。

普通に考えたら、
「お店をやろう」
と言い出した店主であるAさんが問屋探してくるものだろうと、
今ならば思う。

しかし自分はあまり深く考えず問屋契約を済まし、
当時の最新カードセットであったウルザズレガシーや、ウルザズサーガの仕入れをすることにした。

これがお店のスタート。
もうこの時点で頓挫しているなんて思った人、
正解だけれど不正解。
このAさんの親はお金持ち。
お店の立地条件は随分と入り組んだ場所にあった最悪な場所だが、
土地はそのAさんの親のもの、
建物(店舗)もAさんの親のものだ。

つまりどういうことか。
・お店のの動きが頓挫しても準備段階でも、家賃の支払いの必要は無い。
・家賃が存在しないからお店は資金不足では潰れない。
・お店の資金さえ親が出しているため、Aさんは失敗しても痛くもかゆくもない。

さらには、Aさんは末っ子。
跡取り息子ではないため、どう考えても甘やかされている。

一応真面目に書いておくと、
いくら建物と土地がAさんの親のものであっても、
親は固定資産税を払わなければいけない。

この固定資産税は、
マンション、アパート、店舗を借りた金額に比べれば安いものなのだが、
自分が知る限り、Aさんは一度も親に支払いをしなかった。

ここまで書いておわかりかと思う。
そう、潰れようがないお店だ。
Aさんの親がお金持ちである限り。

・家賃が無い。
・看板が無い。
・契約した問屋が無い。
・古物商許可証が無い。
・最初に用意するべき在庫が無い。
・最寄り駅と呼べる駅がほとんど無い。
・通りに面していない。

絶望的な条件だ。

この条件で営業を開始するカードショップは日本でここだけ!

と、某週刊誌のフレーズのように言っても何の自慢にもならないが。
こうは言うものの、この条件でお店やれって言われたら、
今なら喜んでやる。家賃が無い店舗なんて楽過ぎる。

さてさて、お店の話に戻ろう。
このお店の最大の欠点はやはり通りに面していないところ。
「ふらっと立ち寄るお客様」はいないのだ。
看板も無いので、
ただの建物に誰かが突然入る事は無い。

つまり、最初のお客様は全てSerraの友人。
AさんにはSerra以外にあまり友達がいなかった。
(考えてみるとこれは相当致命的だ。)

雇われの立場で、勝手に資金を使えるわけでもないので、
自分のやれる事を探した。

「せめてお店に見えるようにしなければ」

と考え、
まず、お店の前に独断で自動販売機を設置。

自動販売機はポツンと道端にあるものもあるが、
やはりお店のドア付近の置いてある事は多い。

電気代はとられるが、
「ここに何かお店がある」
と見せる方法の1つになる。
他の面でもお金のかからない方法での工夫をいくつかした。
しかし、Aさんは仕事らしい仕事をほとんどしなかった。

お店の掃除をしないどころか、ちらかす一方。
店番はやるが、四六時中、秋葉原のおでん缶をつまみつつ、
ウルティマオンラインをやる始末。
わざわざ秋葉原のおでん缶をケースで買ったのだそうだ。
言うまでもなくこのおでん缶は冷えたままだ。
仕事中にこの冷えたおでん缶を食べている。
この光景に「お金持ちの末っ子」のイメージはない。
別におでん缶を食べる事を悪いとは言わない。
が、片付けもせず蠅がたかる状態はひどいものだった。
蠅がたかっても平気な顔をしているだけでも普通ではない。
立地条件は悪くともそこはお店なのだから。

仕事をしないオーナーはとにかく頭が痛かったが、
とりわけ困ったのは仕入れをしてくれない事だった。

「○○と××は売れるから仕入れておいて。
△△はお客様が予約だからこれも仕入れて。」

と言ったものを仕入れせず、(本人は忘れているようだった)
自分の趣味のトレーディングカードを仕入れて喜んでいた。
(当然そのカードは売るのではなく、自分で開けていたAさん)

さらに謎なのはお店からデュエルスペースに入るために、ドアを作ったAさん。
このドア、何故か市民ホールや○○劇場、映画館にあるような、
両開きの豪華なドア。
間違いなくカードショップに似つかわしくないドア。

開ければその先にはライブ用のホールでも広がっていそうなドア。
ドア開けると壁はベニヤ板というデュエルスペースしかないのに。
ドアだけ豪華。(しかもお店の看板は無い)
意味不明にもほどがある。

このドアに50万円以上使ったというのだから呆れて物が言えない。
ドアに50万円使ったカードショップも日本でここだけだろう。
自分「何故、ドアに?他にかけるべきお金があるのでは?看板とか。」
と言ったところ、

Aさん「いらないところにお金をかけるのが○○家の血筋です!」

とコブシを握り締めて力説。
Serraの頭には「前途多難」という漢字4文字だけが浮かんでいた事を、
Aさんは知る由もないだろう。

後々に知った話だが、
Aさんはこのショップを開くにあたり、
親からもらった「おこづかい」は500万円だった。

世の中ではこれをゆとり教育って言うんでしょうか。
(世代は違うんですけれども。)

家賃に関しては、
「お店がまわるなら6万円、ちょっときついなら3万円、どうしてもなら0円」
と親と取り決めがあったそうだが、
これを全く払わなかった。

それどころか、Serraの給料も支払わなかった。
そう、タダ働きである。
今も昔も気持ちは変わらないものだが、
自分は余程にMTGが好きなのだろう。
この状況に立たされてもニコニコと仕事をしていた。

8月も終わりに差し掛かったある日、
Aさんから「気持ちです。」と1万円渡された。
自分はこれを突っ返した。

「仕事は家賃等の経費をしっかり払うところからスタート。
俺は我慢出来るからまず、親に家賃を払うのが筋。
このお金はまずAさんの親に支払うべきだ。」

考えてみれば、
Aさんはオーナーという立場なのだから、
「給料を払うも、家賃を払うも全てAさんの仕事のうち」
というのが正当な物言いであるとは気づかなかった当時の自分。
そして、
そもそも「気持ちです。」と言って給料まがいの1万円を渡す人は、
経営者としては失格である。

そこから二週間後、
お店を閉めて1人でお店の中で掃除をしていた夜中の2時。

ぐしゃぐしゃになった書類の中から
見覚えのある封筒を見つけた。

中身は無いと思いつつ、中を確認をしたら入っていた1万円。
このぐしゃぐしゃの書類は、
基本的に全て捨てるゴミの箱だった。

最終確認で見た中に入っていた、1万円の入った封筒。

給料も貰わず黙って働き、
「まず家賃」と言って相手に返した1万円は捨てられていた。
金持ちのAさんにとって1万円はゴミだったかもしれない。

ドアの件、仕事をしない件、お金の件、
色々な事が積み重なり、このお店を辞める決意をした。

Aさんと一度真剣に話をしたかった。

そのためにAさんの持っているカード資産を一度取り上げ、

「真面目に話をしてください。その後に返します。
真面目に話をしてくれなければ、貴方の資産のカードは捨てます。」

と言った。今にしてみれば愚かな怒り方だと思わなくも無い。
しかしAさんはまともに言葉の通じる男ではなかった。

一度Aさんの親にもかけあってみたものだが、
もっと絶望的だった。

Aさんの親は
「あんたはうちの○○(Aさんの名前)を不幸にして楽しんでいるでしょう?」
と、とんでもない事を言われ、
もう、このお店にいる事は無い、と思った。

半年間、掃除も接客も仕入れも1人でやり、
これで給料をずっと請求しなかった人間に対して、
この仕打ち、この物言いは許せなかった。

最後に退職金として小額のお金はもらったが、
怒りはおさまらないままだった。

自分が辞めるこの時までに、

Aさんは「お小遣いの500万円」は使い切ったと言っていた。
500万もあれば、
当時のシングルカードは一揃い集められるほどだ。
仕入れに使ったわけでもないのに、
500万というお金を何処に消し飛ばしたのだろう。

まさか…ドア…?

Aさんのお店を去るという事は、
自分の友人全員がAさんのお店のお客様でなくなる事。

Aさんはそれをわかっていたのだろうか。
その後、あのお店がどうなったかなど興味は無いし、
自分は一切知らない。
場所だけなら実家からすぐそこだったのだが。

歴史に「もし」は無いが、
あえて1つだけ。

「もしも、自分の思いのままにあのお店をレイアウトし、
自分の考える仕入れが出来たのであれば、
今もお客様の来るお店に出来ただろう。」

続く。

ではまた。




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