遊べる株券
記事作成日:2014/11/27 執筆:加藤英宝
遊べる株券。
このこらむタイトルは何のことなのか。
説明は不要だろう。
マジック・ザ・ギャザリングのことである。
また別名では、
「札束で殴りあうゲーム」
である。
どちらの単語も、
ブラックユーモアというか、
ジョークの類で言われるマジック・ザ・ギャザリングのあだ名だ。
適切な表現はどちらかと言えば「遊べる株券」のほうだ。
シングルカードの相場価格は日々変化していき、
・禁止改定
・新レギュレーションの発表
・スタンダード落ち
・各レギュレーションでの解禁
・新セットの発売
など、多くの理由で価格が上へも下へも動いていく。
マジック歴1~2年の人や、
ライトユーザーには縁の無い話なのだが、
シングルカード1枚にそれなりの金額をかける人々にとって、
この価格の変動はとても大切なものだ。
自分の持っている株券(カード)の合計額は人それぞれとは言うものの、
マジック歴が5年以上になってくると、
この数字は馬鹿に出来ない数字になってくる。
やろうと思えば、
マジック歴5年以上で、
それなりにマジックにお金を使っているプレイヤー3~5人が、
全てのカード資産を放り出す覚悟であれば、
カードショップが1つ出来上がる。
(その後経営していけるかどうかは別として。)
マジック歴10年以上の年季の入った人の場合、
1人のカード資産でカードショップ開店になることも。
トレーディングカードゲームの世界では、
実はこの状況はとても稀な状況だ。
他のカードゲームの多くでは、
・そもそもシングルカードの値段が安すぎて「遊べる株券」と呼ぶには無理がある。
・レアカードが次のエキスパンションでコモンに落ちる場合がある。
・カードの作りが悪く、材質も良くないため、保管に向かず、価値が下がりやすい。
・そのカードゲームそのものが廃れてしまい、市場価値が格段に下がる場合。
といった理由で、
コレクションの価値があまりに安定しない。
マジック・ザ・ギャザリングはスポーツカードのように、
骨董品や芸術品レベルの市場価値が存在している、
非常に珍しいトレーディングカードゲームだ。
レガシーの大会では、
8人トーナメントのテーブルの上に、
合計300万円以上が置いてある事もある。
先日開催された、
グランプリニュージャージー(2014年11/15~11/16)では、
なんと参加者4000名というレガシーの大会だったそうだ。
一人あたりのカード資産平均1万円の資産だったら会場は4000万円だが、
まずそんな事はありえない。
平均はもっと高額で一人あたり10万~30万円だろう。
仮に1デッキ25万円平均とするならば、
会場のプレイヤーの資産の合計額は10億円以上ともなった数字だ。
(ゴブリンやエルフのように多少安いデッキもあるが、
デュアルランドを多用するデッキならば、
平均はこのくらいだろうという予想。)
4000名という参加人数も驚きだが、
これを金額になおしても驚きの数字だ。
マジックがいかに盛況で、
いかに市場が安定しているかがわかる。
何年か前まで、
「1デッキ20万円なんてヴィンテージだけ。」
「1デッキに20万かけるなんて馬鹿げてる。」
「スタンダードがメイン!」
と言われたものが、
一転して
「20万くらい当たり前!」
「レガシーやっても当たり前!」
になったと言ってもいい。
カードショップを経営している中、
「ああ、この1年はデュアルランドあんまり売れなかったなぁ。」
なんて思う年が何年も前にはあったのだが、
ここ数年は、
「ああ、また探してこないとデュアルランドが0になる・・・。」
という言葉に変わっている。
こういった背景には、
マジックプレイヤーの平均年齢が上がった可能性が高いだろう。
とはいえ学生プレイヤーが減ったわけでもないところは、
非常に嬉しいところだ。
あるJ-POPアーティストのお話だが、
今から数年前まで、
そのアーティストのライブに行けば、
制服姿の女子高生が何人もいた。
今、そのアーティストのライブに行くと、
制服姿の女子高生は0である。
数年前に女子高生だったファンは大人になり、
今でもファンを続けているが、
新しい学生ファンの獲得が出来ていないという事だ。
こうなってしまうと人気は下降線をたどるばかりだ。
大人になったファンがやめてしまうと、
人数は減る一報になってしまう。
マジックがこういった事態になっていない事はとても喜ばしい。
マジックのファンが大人になっても、
若年層のファン獲得が出来ている。
自分が知るプレイヤーには小学生もいれば、
60歳を超えている人もいる。
幅広い年齢層に愛される素晴らしいゲームである。
中には夫婦+子供で年単位やっている家庭もある。
ある家庭では、
「新しいエキスパンションが出る一ヶ月前は、
食卓に並ぶおかずが1品減る。」
らしい(笑)
なかなかに微笑ましい光景だ。
話が脱線しかけているので戻そう。
自分は、
今から10年以上前から、
「デュアルランドやレガシー、ヴィンテージで使われるカードは、
いずれ価値が上がるから買っておいたほうが得だよ。」
と言っていたのだが、
周囲のほとんどの人は耳を貸さず、
あまり買う人もいなかった。
中には
「スタンダード以外をやってるなんてお前は馬鹿か?」
「そんな昔のカードにお金かけているなんておかしい。」
「主流じゃない遊び方に価値なんか無い。勝手にやってろクソが。」
と、心ない言葉を投げつけてくる人もいた。
自分はそう言われても黙って自分の信じた道を選んだ。
デュアルランドを揃え、
パワー9を揃え、
今、レガシーで大活躍の古いカードたちを揃え、
それらを集めても満足せずに、
いろいろな古いカードを買い続けた。
結果は言うまでもない。
大勝利である。
マジックにいくらかけたの?
と質問されたら、
「もうわからない。」
と回答する程になったが、
現在持っているカード資産合計額-かけたお金=
という式の答えは、
どう計算してもマイナスの数字にはならない。
趣味としてマジックを楽しみながら、
資産が減らなかったと見れば、
素晴らしい状態である。
株を買って何年も放置して、
株主優待の分だけ楽しみ、
株価は上がっているという状態に近い。
こういう視点でも、
「遊べる株券」
という表現で間違いはない。
「札束で殴りあうゲーム」
という表現も間違いではない(笑)
また、最近のニュースで、
「20代、30代の貯金額は?」
という題があった。
これについて、
周囲の友人たちと、
「貯金額ってカード資産入れる?(笑)
入れる場合と入れない場合とで額がかなり違うんだけど(笑)」
と笑いあった。
他のカードゲームならいざ知らず、
マジックだけは資産や貯金に相当しても良いと思っている。
やろうと思えばそれほどの時間がかからず現金化可能なのだ。
そういえば、
「やろうと思えばそれほどの時間がかからず現金化可能。」
という一面も株と同じだ。
「貯金額は?」
という質問を受けた際に、
所有している株があった場合は、
その株の現在の株価を銀行の残高と足した数字を貯金額とする人は多いはずだ。
銀行員やクレジットカード会社の人と話すときに、
「カード資産が200万円ありまぁす!」
なんて言えない事は間違い無いが、
マジックのカードが全くの資産でないとも言い切れない。
以前のこらむでも書いたが、
「紙(お金)が紙(カード)に変わるだけ」
であり、
「いつか円が破綻したとしても、
マジックが滅びなければ、
カードをドルやユーロに替えられる。」
のである。
言い切ってしまっていいものかどうか難しいものだが、
マジックのカードのお買い物とは、
株の購入でないのなら「両替みたいなもの」だと思っている。
そういえば、
ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の誰だったか、
「自分が生きている間に、
マジック・ザ・ギャザリングの終焉を見る事は無さそうだ。」
と言ったそうな。
この言葉を完全に鵜呑みに出来るかはわからないが、
当分滅びない世界として確立された事は間違い無い。
このこらむを読んだ方、
一度じっくりと自分の資産を眺めてみて、
今後の貯金(カード)の計画を練ってみるのも面白いだろう。
貯金を考えているのなら、
是非、当銀行・・・じゃなかった当店で!
ではまた。