EDHデッキ紹介その57(Borborygmos Enraged/怒れる腹音鳴らし)
記事作成日:2014/11/11 執筆:加藤英宝
今回のEDHデッキ紹介はお客様のリクエスト。
《怒れる腹音鳴らし/Borborygmos Enraged》でEDHのデッキを作って欲しいとのこと。
「前回に引き続き、またしてもうだつの上がらないジェネラルだ」
と思った人、正解。
《Borborygmos Enraged/怒れる腹音鳴らし》
コスト:4赤赤緑緑
伝説のクリーチャー サイクロプス(Cyclops)
トランプル
怒れる腹音鳴らしがプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、あなたのライブラリーの一番上から3枚のカードを公開する。これにより公開された土地カードをすべてあなたの手札に加え、残りをあなたの墓地に置く。
土地カードを1枚捨てる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。怒れる腹音鳴らしはそれに3点のダメージを与える。
7/6
神話レア
伝説のサイクロプスは《怒れる腹音鳴らし》と《腹音鳴らし/Borborygmos》だけ!(2014年時点)
だからどうしたというレベルの話。
8マナというとても重たいコストから、
カラーマーカー以外の役目があるのかと言いたくなる。
カラーマーカーとはジェネラルを統率者領域に置きっぱなしで、
デッキの色を表示させておくだけの役割しかないジェネラルを選んだ際の言い回し。
EDHにおいてジェネラルというものは、
プレイ出来てナンボである。
つまり、
・コストが軽くて、使いやすい生物
・コストが重くてもアドバンテージをとれる生物
の2種が好まれる傾向にある事は当然。
8マナでアドバンテージを保証してくれるわけではない生物は、
この条件としてあまりに失格ちゃんである。
そのうえ、指定コストが「赤赤緑緑」と4つもある。
お客様のリクエストでも無かったら、
このカードでデッキを作ったかどうかも怪しい。
マジック・ザ・ギャザリングの世界には理不尽なカードというやつが多くある。
その理不尽とは大きく分けて2つ。
・コスト以上のパフォーマンスを誇る理不尽に強いカード
・明らかに悪い意味でだけコストを重くされて理不尽に弱く作られたカード
という2つだ。
言うまでもなくこの《怒れる腹音鳴らし》は後者だ。
(一応言っておくが能力は弱くない。)
《怒れる腹音鳴らし》がトーナメントに登場すると思ってカードをデザインしているのだろうか。
しかもこいつはタチが悪い事に神話レアだ。
ボックスを購入したユーザーがこれをパックから引いたら、
どれだけガッカリすると思っているのだろう。
少しはユーザーの事を考えてカードをデザインしろと言いたい1枚である。
なお、明らかに悪い意味でだけコストを重くされて作られたカードは、
「せめてあと1マナ軽ければギリギリ使えるのに。」
と言えるようなカードが多い。
しかし、《怒れる腹音鳴らし》はせめてあと2マナと言いたくなる。
このカードが7マナであってもあんまり嬉しくもない。
仮にコストが2赤赤緑緑だったらEDHでデッキを作る人もいたはずだ。
指定コストが4つもある8マナで、たったの7/6と、
ハッキリ言って昨今のクリーチャーの強さからしてもこれは弱い。
3発殴れればジェネラルダメージ21点に到達はするが、
殴り始める速度が遅いのは致命的。
《自由なる者ルーリク・サー/Ruric Thar, the Unbowed》という、
赤緑の優秀ジェネラルがいる事もあり、
わざわざ《怒れる腹音鳴らし》を選択したい人は少ない。
能力が決して弱いわけではない。
ただ、無駄に重たい。
これだけ重たいのなら、
「このカードを唱えた時に墓地から最大3枚土地を回収」
「滅殺2か速攻+呪禁」
「パワーとタフネスは8/8以上」
あたりを追加してくれないとお話にならない。
さて、どうやってデッキを組んだものかと考えていた。
このリクエストを受けて2日目の朝、
起きた途端に閃いたデッキが下記。
ジェネラル:《怒れる腹音鳴らし/Borborygmos Enraged》
クリーチャー10枚
《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》
《ヤヴィマヤの古老/Yavimaya Elder》
《耕すツリーフォーク/Tilling Treefolk》
《クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix》
《アルゴスの庇護者、ティタニア/Titania, Protector of Argoth》
《土地守/Groundskeeper》
《永遠の証人/Eternal Witness》
《迷える探求者、梓/Azusa Lost but Seeking》
《ムル・ダヤの巫女/Oracle of Mul Daya》
《背信のオーガ/Treasonous Ogre》
インスタント3枚
《自然の要求/Nature’s Claim》
《輪作/Crop Rotation》
《この世界にあらず/Not of This World》
ソーサリー18枚
《信仰無き物あさり/Faithless Looting》
《修復/Restore》
《探検/Explore》
《硫酸の波/Wave of Vitriol》
《法務官の相談/Praetor’s Counsel》
《壌土からの生命/Life from the Loam》
《ギャンブル/Gamble》
《Wheel of Fortune》
《汚損破/Vandalblast》
《調和/Harmonize》
《森の占術/Sylvan Scrying》
《燎原の火/Wildfire》
《破滅の儀式/Rite of Ruin》
《破壊的な力/Destructive Force》
《耕作/Cultivate》
《木霊の手の内/Kodama’s Reach》
《迫り来る復興/Creeping Renaissance》
《新たな芽吹き/Regrowth》
エンチャント6枚
《Gaea’s Touch》
《森の知恵/Sylvan Library》
《踏査/Exploration》
《マナ結合/Manabond》
《芽ぐみ/Burgeoning》
《双子神の指図/Dictate of the Twin Gods》
アーティファクト9枚
《予見者の日時計/Seer’s Sundial》
《世界のるつぼ/Crucible of Worlds》
《記憶の壺/Memory Jar》
《Mana Crypt》
《太陽の指輪/Sol Ring》
《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》
《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》
《どん欲の角笛/Horn of Greed》
《生体融合外骨格/Grafted Exoskeleton》
プレインズウォーカー2枚
《野生語りのガラク/Garruk Wildspeaker》
《紅蓮の達人チャンドラ/Chandra, Pyromaster》
土地51枚
《Bazaar of Baghdad》
《Taiga》
《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》
《ミシュラの工廠/Mishra’s Factory》
《変わり谷/Mutavault》
《忘れられた洞窟/Forgotten Cave》
《平穏な茂み/Tranquil Thicket》
《枯渇地帯/Blasted Landscape》
《薄煙の火口/Smoldering Crater》
《滑りやすいカルスト/Slippery Karst》
《モスファイアの谷/Mossfire Valley》
《根縛りの岩山/Rootbound Crag》
《火の灯る茂み/Fire-Lit Thicket》
《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》
《統率の塔/Command Tower》
《ケッシグの狼の地/Kessig Wolf Run》
《ヤヴィマヤのうろ穴/Yavimaya Hollow》
《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》
《乾燥台地/Arid Mesa》
《霧深い雨林/Misty Rainforest》
《血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire》
《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》
《吹きさらしの荒野/Windswept Heath》
《Maze of Ith》
《海の中心、御心/Mikokoro, Center of the Sea》
《古えの墳墓/Ancient Tomb》
《山賊の頭の間/Hall of the Bandit Lord》
《黄塵地帯/Dust Bowl》
《不毛の大地/Wasteland》
《露天鉱床/Strip Mine》
《幽霊街/Ghost Quarter》
11《森/Forest》
8《山/Maountain》
——————————
土地51枚というちょっと変わった構成。
《怒れる腹音鳴らし》を使い、
しかも能力でなるべく勝つという方法にするため、
このような偏った構成に。
土地デッキの亜種のような構成。
ただし、
《燎原の火/Wildfire》
《破滅の儀式/Rite of Ruin》
《破壊的な力/Destructive Force》
《硫酸の波/Wave of Vitriol》
の4枚で相手の土地を破壊しながら戦うデッキになっている。
特に統率者2014で登場した、
緑の土地破壊カード《硫酸の波》はなかなかのもの。
《Wave of Vitriol/硫酸の波》
コスト:5緑緑
ソーサリー
各プレイヤーはそれぞれ自分がコントロールする
すべてのアーティファクトとエンチャントと基本でない土地を生け贄に捧げる。
これにより生け贄に捧げられた土地1つにつき、
そのコントローラーは自分のライブラリーから基本土地カードを1枚探し、
それをタップ状態で戦場に出してもよい。
その後、これにより自分のライブラリーを探した各プレイヤーは、自分のライブラリーを切り直す。
レア
自分の土地も壊れてしまうが、
土地は後で回収も出来るうえに、
基本土地も多めに入れてあるので、自分にはそれほど支障がない。
単色デッキ相手にはあまり効かないが、
多色には威力を発揮する。
また、
マナアーティファクトやエンチャントも「生け贄」なので、
破壊不能がついている《ダークスティールの鋳塊/Darksteel Ingot》や、
エンチャント・神のカードたちでも問題なく除去可能。
自分のパーマネントも壊されるとはいえ、
なかなかに柔軟性があるカードである。
クリーチャーが壊せない代わりに、
エンチャントを壊せる《ジョークルホープス/Jokulhaups》のようだ。
緑の《ジョークルホープス》と言っても過言ではない。
デッキは、
ダメージを与える方法は相当に少なく、
ジェネラルである《怒れる腹音鳴らし》が潰されてしまうと、
攻撃力が無いに等しい存在となる。
《怒れる腹音鳴らし》の能力で土地をプレイヤーに投げつけて、
相手のライフを削り切るかたち以外は、
間違って殴りきってジェネラルダメージ21点を叩き出せた場合くらいのもの。
そんな線の細いのデッキの特筆すべき1枚は下記。
《Creeping Renaissance/迫り来る復興》
コスト:3緑緑
ソーサリー
パーマネント・タイプを1つ選ぶ。
あなたの墓地にある選ばれたタイプのすべてのカードをあなたの手札に戻す。
フラッシュバック(5)(緑)(緑)
(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、
そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。
その後それを追放する。)
レア
このカードをスタンダードやモダンで撃った事のある人はまずいないはずだ。
ヴィンテージやレガシーではそもそもこんなもの撃つ人はいない。
EDHでさえ撃った事のある人が少ないソーサリー。
イニストラードのガッカリレアの1つ。
能力は案外と面白い。
ソーサリーやインスタントが戻せないのが緑らしい。
このデッキならばどのパーマネント・タイプを選ぶかは言うまでもない。
《怒れる腹音鳴らし》を出して、
手札の土地をひたすら3点ダメージとして投げつけた後に、
このソーサリーを撃って「土地」と宣言すれば、
弾丸再装填。
再度土地を投げつければ、
状況次第で合計100点以上のダメージを叩き出す夢のカードだ。
しかも、フラッシュバックもついている。
つまり、
1:土地を全て投げつけ。
2:《迫り来る復興》通常プレイ。
3:土地を回収して全て投げつけ。
4:《迫り来る復興》フラッシュバックプレイ。
5:土地を回収して全て投げつけ。
と動くとかなりのダメージが稼げる。
というより相手がよほどのライフで無い限り、
3人全員倒せるくらいの数字だ。
フラッシュバックがあるおかげで、
《Bazaar of Baghdad》や《壌土からの生命》の発掘で墓地に落としても、
全く問題が無い1枚という事。
このデッキではアドバンテージの塊のようなカードだ。
土地を墓地から全て回収後に、
《マナ結合》での全土地プレイも豪快で面白い。
また、
《生体融合外骨格》を《怒れる腹音鳴らし》につけて、
プレイヤーに土地を4枚投げつければ、毒殺可能だったり、
《双子神の指図》と《怒れる腹音鳴らし》が組み合わされば、
土地1枚で6ダメージが飛んで行ったりする面白い構成だが、
《生体融合外骨格》と《双子神の指図》はロマン枠の域を超えない事が多い。
安定を望む場合は、
《地平の探求/Seek the Horizon》
《稲妻のすね当て/Lightning Greaves》
《地図作り/Cartographer》
《苦しめる声/Tormenting Voice》
《燃え立つチャンドラ/Chandra Ablaze》
などの選択が良い。
デッキの構成上、
どうしてもスピードが無いので、
いわゆるガチと呼ばれるジェネラルたちのデッキには、
一切太刀打ち出来ない。
楽しくEDHをする際に使うデッキとして、
組んでみてはいかがだろう。
ではまた。