フラッシュハルク
フラッシュハルクというデッキをご存知だろうか。
ヴィンテージでは流行のデッキの1つと言えるデッキである。
(2008年前半期)
MTGは《死体の花/Cadaverous Bloom》というカードが出て以来、
いくつものコンボデッキが存在してきている。
今回のお話はこのコンボデッキのお話。
《閃光/Flash》というカードの効果がルール改正で変更されて出てきたデッキである。
フラッシュハルクという名前は
フラッシュ=《閃光》
ハルク=《変幻の大男/Protean Hulk》
から来ている。
《閃光》というカードの現在のテキストは
《Flash/閃光》
コスト:1青
インスタント
あなたは、あなたの手札にあるクリーチャー・カード1枚を場に出してもよい。
そうした場合、あなたがそのマナ・コストを最大2まで減らして支払わない限り、
それを生け贄に捧げる。
レア
こうなっている。
また、《変幻の大男》は
《Protean Hulk/変幻の大男》
コスト:5緑緑
クリーチャー ビースト(Beast)
変幻の大男が場から墓地に置かれたとき、
あなたのライブラリーから点数で見たマナ・コストの合計が6以下になるように
クリーチャー・カードを好きな枚数探し、それらを場に出す。
その後、あなたのライブラリーを切り直す。
6/6
レア
この2つのカードの効果だけでおわかりだろうか。
まず《閃光》を使い、
《変幻の大男》を場に出す。
マナコストを支払わず、《変幻の大男》は場から墓地に置かれる。
ライブラリの中から別のクリーチャーカードが出てきて、瞬殺。
という具合だ。
下記はそのサンプルデッキ。
クリーチャー10枚
4《変幻の大男/Protean Hulk》
1《ハートのスリヴァー/Heart Sliver》
4《悪性スリヴァー/Virulent Sliver》
1《森を護る者/Sylvan Safekeeper》
インスタント25枚
4《渦まく知識/Brainstorm》
4《閃光/Flash》
4《召喚士の契約/Summoner’s Pact》
4《否定の契約/Pact of Negation》
4《Force of Will》
1《Ancestral Recall》
1《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》
1《吸血の教示者/Vampiric Tutor》
1《神秘の教示者/Mystical Tutor》
1《残響する真実/Echoing Truth》
ソーサリー4枚
3《商人の巻物/Merchant Scroll》
1《悪魔の教示者/Demonic Tutor》
アーティファクト6枚
1《Black Lotus》
1《Mox Pearl》
1《Mox Sapphire》
1《Mox Jet》
1《Mox Ruby》
1《Mox Emerald》
1《水蓮の花びら/Lotus Petal》
土地15枚
4《汚染された三角州/Pollited Delta》
2《溢れかえる岸辺/Flooded Strand 》
1《島/Island》
3《Tropical Island》
4《Underground Sea》
サイド
4《虚空の力線/Leyline of the Void》
1《残響する真実/Echoing Truth》
1《蒸気の連鎖/Chain of Vapor》
1《再建/Rebuild》
1《ハーキルの召還術/Hurkyl’s Recall》
3《強迫/Duress》
2《青霊破/Blue Elemental Blast》
2《根絶/Extirpate》
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このサンプルの場合は、
《変幻の大男》が墓地に置かれた時の効果で出てくるのは、
《ハートのスリヴァー》
《悪性スリヴァー》
の2種だ。
状況次第で
《森を護る者》
も選択するが、
基本は2種である。
当然、
全てのスリヴァーが速攻と毒能力を持って、攻撃、
毒カウンター10個以上が一瞬にしてプレイヤーに乗り、
瞬殺である。
毒カウンターのルールなんて覚えていない!
なんて人もいるかもしれない。
毒カウンターとは、
一部のカードの能力によってプレイヤーが得るカウンターであり、
いずれかのプレイヤーが毒カウンターを10個以上得た場合、
そのプレイヤーは次に優先権が発生した瞬間に敗北となる。
毒カウンターはプレイヤーに乗るカウンターなので、
《魔力の導管/Power Conduit》等で取り除く事は出来ない。
MTGの今までの歴史上、
毒カードで勝つという条件の中で、
これほど強いデッキは無いであろう。
最速で1ターン目に相手を倒せるデッキである。
また、このサンプルデッキとほぼ同じデッキを使用し、
筆者が第三回東海道ヴィンテージ決勝戦で優勝している。
強さはお墨付きと言っていいだろう。
筆者はサイドボードに《誤った指図/Misdirection》も有りと考える。
ピッチカウンタースペル8枚じゃ心もとない!
同キャラ対戦時は数が命だ!
なんて状況も0ではない。
また、
《召喚士の契約》
《否定の契約》
この2種だが、アップキープにコストの支払いは無いと言っていい。
これを撃ったターン=相手が倒せているターン
で無ければならないからである。
その逆、支払いを要求されるアップキープが来ようものなら、
まず勝てていない状況であると言える。
このカードを撃つならば、このターン勝ちに行け!と言い切ってもいい。
また、相手からはサイドボードから、
《虚空の力線》
を使われ、ゲーム開始時に置かれているケースもある。
しかし対策は出来ていて、
《残響する真実》や《蒸気の連鎖》で、
手札に戻し、あとは自分のターンで決めるだけである。
手札に戻すという手間の分だけ決まるまでに時間を食うが、
それでもおおむね勝ちきれる事は少なくない。
1度だけトーナメントで対処不可能だった状況がある。
実際にこのカードが一番決定的な対処方法である。
それは《計略縛り/Trickbind》である。
「《変幻の大男》の墓地に置かれた時の効果に」
と言われ、
しかも《Force of Will》や《否定の契約》で打ち消す事が出来ない。
こればかりはどうする事も出来なかった。
次のターンに《召喚士の契約》の2緑緑を払えずに負けた。
(払えていた場合は相手に倒される前にもう一度コンボを決めればいいだけなのだが)
この《計略縛り》を除けば、
かなりの状況へは対処可能なデッキである。
とはいえ、《虚空の杯/Chalice of the Void》でX=1とX=2を指定されたらかなり厳しくなるが。
ところがこのデッキ、
2008年6月1日のルール改正により、
《閃光》が制限カードになってしまった。
《商人の巻物》も制限カードになってしまった。
《渦まく知識》も制限カードになってしまった。
いくらなんでもコンボのためのカードと、
コンボカードを揃えるためのカードを、
一度に制限されてしまうとこのデッキの生きる術は難しい。
このデッキがトーナメントを席巻した事が多々あったのだろう。
《商人の巻物》は「青い悪魔の教示者/Demonic Tutor」と言えるカードなので、
仕方が無いと思わなくも無い。
《渦まく知識》に関しては制限するか?と言いたくなってしまう。
ルールを決める人たちは相当にコンボデッキがお嫌いのようだ。
《渦まく知識》をコンボを揃えるためのカードではなく、
通常のドロー操作としてだけ使うプレイヤーも少なくないだろうに。
制限されたカード、制限されてしまったデッキのコラムなんて無意味だろうって?
それを言わないでくれ。
これを書き終えた日の次の日に制限カードが発表されたんだ。
書いている自分も
「制限?!どれだけタチの悪いジョークだ?!」
と思ったほどである。
自分はこのフラッシュハルク、
まだ諦める事無く研究してみようと思うものだが、
さすがにこの3枚の制限はデッキの崩壊に近い。
ではまた。