KOF93
記事作成日:2025/05/19 執筆:加藤英宝
タイトルは某有名格闘ゲームの名ではない。
そこから取った名前ではあるけどね。
店主のひとりごと。その7 1993年に生まれたカードについて
ここで書いたもの。
思ったより反響があって、
やってみたいと言う人が意外といた。
ざっとおさらいでルールを書いてみる。
α
β
Unlimited(カード302種)
アラビアンナイト(カード78種)
・1993年に発売されたものだけを使う。
・デッキは60枚以上。
・4枚制限。
・1枚制限カード無し。
・禁止カードはアンティに関するカードのみ。
αとβとUnlimitedはカードのセット内容は同じなので、
(αには《Volcanic Island》と《黒の防御円》が無いが基本は全て同じ。)
実質使えるカードは
Unlimited+アラビアンナイト
というだけ。
某有名格闘ゲームとはわかっている人はわかっている。
通称KOF94だ。
格闘ゲームとしてチーム戦という新しいシステムを採用し、
当時大ヒットした格闘ゲームの1つ。
今回紹介しているレギュレーションは、
1993年に発売されたものだけを使う事と、
THE KING OF FIGHTERS 94’というゲームは1994年から生まれたものなので、
THE KING OF FIGHTERS 93’が存在していない事から、
敬意と洒落っ気を込めて、
KOF93の名でこの遊び方に名前をつけてみた。
知らない人が多いだろうが、
このKOFのSNK社はサウジアラビアの王太子殿下が筆頭株主になっている。
この王太子殿下は任天堂、スクウェア・エニックス、カプコンなどの株も所有しており、
相当ゲーム好きな王太子殿下なのだと思われる。
王太子殿下、Cardshop Serraも会社ごと買う気はありませんか?
さて、この遊び方に話を戻そう。
1枚制限すら無いという事は、
オールドスクールやヴィンテージで1枚制限を食らっているカードが4枚使えるわけだ。
誰もがすぐにパワー9の事を思い浮かべるだろう。
案外そこだけではない。
他にも
《悪魔の教示者》
《Library of Alexandria》
《Wheel of Fortune》
《チャネル》
《魔力の櫃》
《太陽の指輪》
《Time Vault》
《天秤》
あと、オールドスクールで制限されている《精神錯乱》が該当する。
この時代ってみんなホントにどんなデッキ組んでたんだろう。
1993年という時代は
インターネット黎明期なんて言葉で表現する事すら出来ない時代だ。
インターネットのイの字も無い。
Windows3.1の日本語版が1993年の5月18日に発売だそうだ。
(英語版は1992年4月6日らしい)
Windows3.1ってなんやねんというレベルだ。
そもそもWindows95の時代(1995年)でもインターネットはほぼ無い。
時代的にはWindows98の時代(1998年)くらいからやっと普及してきた感があった。
つまり、
1993年という時代は現代のように
「わからない事はググれ」
という事は不可能な時代だ。
(そもそもグーグルという検索エンジンどころかネットがないのだから)
誰もが手探りでデッキを作っていた暗闇の時代。
そんな中でこんな複雑なゲーム、
多くの人が強いデッキに辿り着けなかったのではないだろうか。
さらに言えば、
カードショップなんてものも無かったわけで、
シングルカードを取り扱ってくれるショップなんてあるわけがない。
(アメリカに片手で数えるくらいの店数であったかもしれないが)
欲しいカードは本当に知り合い同士で交換する以外の道はほぼ無かったはず。
当時をやっていた人がいたらインタビューしてみたい程だ。
・・・いたわ。
これ書いてる最中に思い出した。
いたよ、一人。
Sethだ。
Sethについてのこらむはこちら:
MTGへのスタンス2
SethとSerraの10日間
SerraとSeth
おすし。
彼に聞いてみよう。
簡単に和訳↓
貴方はその頃にどんなデッキを使っていたか覚えていますか?」
「赤緑、《密林の猿人/Kird Ape》が好きだったよ。」
「だいたいで構いません。
貴方のデッキ60枚を教えて下さい。」
「私はアラビアン・ナイトの発売日から1994年1月頃のデッキを知りたい。」
「メール送ったよ。」
「ありがとう。」
さすがSeth。
「この時期」
と限定して言ってもデッキの内容を”記憶”している。
記録じゃなく記憶であることがすごい。
(自分も出来るんだけど、これ多分普通じゃない記憶力)
話からほとんど間を置かずにメールが来た。
その送られてきたデッキリスト。
4《ラノワールのエルフ》
2《ゴブリン気球部隊》
1《アリ・ババ》
4《密林の猿人》
1《エルフの射手》
-インスタント8枚-
4《巨大化》
4《稲妻》
-ソーサリー15枚-
3《ハリケーン》
4《火の玉》
3《分解》
1《新たな芽吹き》
4《チャネル》
-アーティファクト3枚-
1《Mox Ruby》
1《Mox Emerald》
1《Black Lotus》
-土地22枚-
11《森》
2《Taiga》
9《山》
-合計60枚-
やるなぁ、Seth。
1993年の赤緑のチャネルファイアボールだ。
《エルフの射手》が1枚ってあたりに、
「手に入らなかったのかな?」感があってリアルだ。
疑う事の無い当時のデッキだろう。
《Taiga》2枚というところもリアリティがある。
そういえば《太陽の指輪/Sol Ring》も入っていないな。
持っているなら入れるはずのカードだろうし、
持っていなかったのかな。
一応さらに聞いてみる。
簡単に和訳↓
1《Mox Emerald》
1《Black Lotus》
これらはデッキに1枚のみです。
それは1枚制限のルールが入ったからですか?」
「いいえ、私は1枚しか持っていなかった。」
「おー!」
「《ハリケーン》が3枚入っているのは、
《シヴ山のドラゴン》を持っていなかったからだ。」
ついでにメールに書いてあった。
「《Taiga》が4枚じゃないのは、
Revisedが発売されるまで持っていなかったからだよ。」
だって。
間違いないね。
制限も何も無い時代のデッキそのものだ。
《エルフの射手》や《Taiga》は当時の所有枚数って事だ。
《太陽の指輪/Sol Ring》も持っていなかったと考えて間違いないだろう。
X火力10枚搭載なんてバランス的にも良くないが、
「本当に持っていたカードだけで組み上げた」
のなら納得だ。
《チャネル》4枚持っていたのが熱い。
あと、何より会話がいい。
Sethはとても頭の良い人だから、
「英宝なら《ハリケーン》3枚がデッキ的に変だと思い、質問してくるだろう」
と予想した上で先周りしてこの回答をしたんだとわかる。
こっちの性格もバレている(笑)
Seth、本当にすごいな。
この時代を生きた人の生の言葉だ。
さすがはバーン様だ。
(彼のフルネームはSeth Burn)
それにしても、自力でこれに辿り着いたのかな、Seth。
彼なら辿り着いていてもおかしくない。
このデッキ、そのまんまコピーして使ってみたくなるなぁ。
その頃のSethと同じ気持ちを少しでも味わってみたい。
“KOF93″を当時経験していたってかなりすごい話だ。
タイムマシンと記憶消去方法の両方が必要だが、
経験出来るものなら1993年に行って、
完全なゼロからMTGをスタートしてみたいものだ。
ああ、そういえばこれ読む人もわかっていない人が多そうだから書いておこう。
このKOF93って、
当時は「スタンダード」だったわけよ。
呼称としてはスタンダードでもType2でもなんでもないんだけどね。
このルールでしか遊べなかったわけ。
名前は無いレギュレーションで、
MTGを遊ぶならこの方法、というだけだったの。
αとβとUnlimitedはカードセット内容が同じで、
それ以外の初のカードセットがアラビアンナイト。
そりゃあこれしか無かったら
あるものだけで遊ぶ世界になるよね。
日本のMTG的には生き字引野郎の自分だけども、
ここまでは経験していない。
ちくしょう、もうちょっと早くMTG知る方法あったらなぁ。
そんなわけで、
この1993年を純粋に経験してみたく、
こんな名前をつけて提案してみたところ。
やる気ある人いるかな?
ではまた。



