【お題】EDHにおけるマナバランスその1(土地編)
記事作成日:2025/01/20 執筆:加藤英宝
Twitterでお題いただきました第二十一号。

土地 (マナソース)の枚数はどれくらいが適切なのでしょうか?
マナファクト 土地を置く 呪文など、 土地以外 のマナソースと土地の比率はどの程度にすべき でしょうか。
目安や算出法があれば是非知りたいです。
特に《Mox》や《魔力の櫃》などの高額カードに手が出ない場合について伺いたいです。
(現状困っているのは《太陽の化身、ギシャス》と《戦争織り、タンティス》のデッキで、
緑は使えますが土地やアーティファクトとのシナジーが取りにくいです。
コンボも特にありません。)
デッキによるとしか言えないところではある。
単色かそうでないかでも結構違うので、
一概に言い切れないけれどもそれでも良いじゃろか。
あと、マナバランス(土地以外のカード)と土地バランスはちょっと違う話なので、
それはそれで別の記事で良いじゃろか。
ではスタート。
いきなりの結論
ズバっといこう。
土地33~35枚目安!
これ一応真面目に理屈はある。
一般的60枚構築では土地20枚は基本だ。
多いデッキでは25枚もありえる。
25/60と言えばもう半分近い。
これをEDHで考えてみよう。
60枚で土地20枚なら、
そのままの比率でデッキは
ジェネラルを除外した99枚→土地33枚
という事になる。
余程のデッキで無い限り、
デッキの土地が30以下になる事はまず無い。
というか普通事故る。
いくらフリーマリガンが一回認められているとはいえ、
それを加味した構築で土地比率を下げるのは間違っていると言わざるを得ない。
そういう考えでデッキを構築するのはド素人思考、ギャンブル思考であり、
店主は絶対にオススメしない。
ここでガチ・カジュアル論争をしたいわけではないが、
ガチを自称する人ほどこのデッキバランスを崩してくる。
妙に土地の少ないデッキを作ってくる人がいるが、
あれはおおいに間違っている。
強さとは常に勝率を高く安定させているものであって、
「今日強い人」「回ったら強いデッキ」は論外である。
土地比率はどうあるべきか?
とりあえずこのガチ・カジュの話はここでストップ。
本題が大切。
デッキの土地比率はどうあるべきなのか。
EDHというゲーム性でこれを考えてみよう。
「EDHで3ターン目までにゲームは終わるのか?」
さすがにそんな事は多発しにくい。
特に
《宝石の睡蓮》
《魔力の墓所》
の2枚が禁止になっている2025年1月の今、
(これ書いている後に解禁されたらまた環境変わる。)
当然の事ながら瞬殺出来る速度は落ちている。
それに誰もが凶悪極まりないデッキを持つわけではないし、
凶悪極まりないデッキ同士が当たると案外長期戦になりもする。
それらを想定したうえで、
普通は5~10ターン目をむかえても何もおかしくはない。
いらない反論をしてくる人がいるから書いておくが、
ガチ4人になっている環境下でも3ターン目までに決着なんて事は少ない。
統計取ってみるとわかる。
それでも必ず3ターン目までに決着という程の環境と4つのデッキがあるというのなら、
店主の前に統計数字とデッキ4種を持って来い、と言っておこう。
さてさて、まずは自分のデッキを見据えてみて、
だいたいでいい。
「だいたい何ターン目に何枚土地置きたいか?」
これを考えてみるのが重要。
普通に考えてみれば3ターン目に3枚目の土地はだいたいのデッキが置きたい。
4ターン目でもそんなもんじゃないだろうか。
5ターン目に5枚目の土地は「・・・うーんなくてもいいか?」って人もいるかもしれない。
初手手札7枚。
初手からドローはあるから4ターン目には合計11枚ドローしている。
99枚中の11枚。
これで土地4枚は引くかどうか。
ご理解いただけると思うが、
デッキの土地が30枚以下は土地2枚でも止まりかねないリスキーな配分だ。
緑単エルフでそのくらいで構わん!というのなら止めない。
とりあえず長年EDHしてきた店主からは、
「緑単エルフじゃない限りやめとけ。」
と言っておく。
一応言っておくと緑単エルフでも土地28枚以下はさすがに危ないだろう。
さらにEDHのある程度のデッキは4マナ以上のカードの採用は多い。
60枚のデッキで
「ピッチスペルとコストを踏み倒す予定のカード以外全部3マナ以下」
なんて事はある。
(一例:レガシーのショーテル、ヴィンテージのオース)
それでだいたい土地20枚なのだ。
EDH99枚のデッキで4マナ以上のカードを何ターン目に撃つのか。
1~2ターン目にマナ加速、
3ターン目にセットランドから4マナのスペル、
4ターン目にセットランドから5マナ以上のスペル・・・
といった考えで考えた場合でも、
やっぱり3~4ターン目に土地が必要になってくるケースは多い。
あとは1~3マナの呪文を複数唱える場合にも影響してくる話だ。
土地の少ないデッキは回る?
ちょっとここで過去の悪い例を出してみよう。
ある人Aさんが《艦長シッセイ》のデッキを作っていた。

A「シッセイを2ターン目にだいたい安定して出せるようになった。」
店主「土地枚数は?」
A「28枚。」
店主「それで2ターン目が安定するの?」
A「だいたい。」
と言った事がある。
そんな事がありえるだろうか。
《艦長シッセイ》のコストは2白緑。
4マナだ。
(ちなみに《宝石の睡蓮》が存在していない時代だ。)
1ターン目に何をしたら、2ターン目の4マナが安定するというのだろう。
MTG歴四半世紀を超える自分でも99枚のハイランダーデッキでそんな事が出来る気はしない。
ヴィンテージで《Mishra’s Workshop》やパワー9入れていても、
安定するわけじゃない範囲だぞ、4マナって。
この答えは簡単で、
「思い込み」「勘違い」である。
まともな統計も計算も出来ていないのである。
本人はそれでいいと思って構築している。
実際にこのデッキと戦ってみたが、
とても弱かった。
理由は言うまでもない。
仮に早いターンでシッセイが着地しても、
単体除去を一発食らった段階でストップするからだ。
状況によっては手札に戻す呪文でも再度出せない事も。
EDHでは
「除去されたジェネラルを追加マナを払って出し直す。」
事も考慮しても土地をギリギリまで切り詰める事はプラスにならない事が多い。
1~2回ジェネラルを除去されると覚悟した構築のほうが良いのだ。
デッキの土地が31枚、33枚、35枚、37枚・・・と2枚飛ばしくらいで考えてみても、
引きやすさは当然結構違う。
店主のデッキの土地枚数
ずっと数字出して計算と確率の話をし続けていてもいいのだけれども、
もっとシンプルに実例見せたほうが早そう。
店主の持ってるEDHデッキ。
《万物の座、オムナス》:土地35枚
《創造の座、オムナス》:土地37枚
《パルン、ニヴ=ミゼット》:土地33枚
《ゴアガッツ団の親分、ラッガドラッガ》:33枚
《養育者、マーウィン》:土地30枚
《ギャレンブリグの領主、ヨルヴォ》:土地31枚
《Treizeci, Sun of Serra》:土地34枚
《巻物の君、あざみ》:土地32枚
《岸無き海、エルージュ》:土地34枚
《巡礼者アシュリング》:土地36枚
《歩哨竜、ミーリム》:土地34枚
ここまでは現在持っているデッキ。
過去のやつも少し書いておこうか。
《生ける卒論、オクタヴィア》:土地34枚
《ナズグルの首領》:土地34枚
《永久忠義の義丸》&《燃えさし爪の使い魔、ケディス》:土地33枚
《船壊し、ダーゴ》&《三度の再誕、ジェスカ》:土地33枚
《老いざる革新者、ジョイラ》:土地33枚
《ギトラグの怪物》:土地35枚
《Ken, Burning Brawler》:土地34枚
《永遠王、ブレイゴ》:土地34枚
一番少なくて《養育者、マーウィン》で土地30枚。
一番多くて《創造の座、オムナス》で土地37枚。
オムナスは理由がしっかりあって、
能力が上陸だから。
追加ターン+ドロー加速+追加セットランドでとにかくアドバンテージを稼ぐので、
土地ばかりの構成で構わないようなデッキに仕上げている。
仮にどんなにすっ転んでも4ターン目に4枚目の土地置きたいし、
オムナスが出ない状況は避けたい。
そのためかなりの土地枚数になっている。
店主のオムナスと対戦した人の感想では、
「場に出てドローで1枚アドバンテージとられるうえに、
放っておくと手がつけられない。
かといって除去したところで、
土地が豊富にあるデッキなので再プレイが容易。
再度場に出るとまた1ドロー入るので、
それも厄介。」
という感じの事を複数の人に言われる。
安定しているデッキというのはこういう強さがある。
土地が少なめのほうでは《ギャレンブリグの領主、ヨルヴォ》が31枚。
これは当然エルフの《養育者、マーウィン》同様でマナ展開がある程度できるのと、
重たいカードはそれほど多く突っ込まない事が理由だ。
どちらもマナエルフ大量投入の構築だからできる芸当。
《巻物の君、あざみ》の32枚は、
1マナのウィザードが大量
2マナのアーティファクトが大量
からギリギリまで切り詰めた構築だからだ。
あとこのデッキを崩す手前で《宝石の睡蓮》と《魔力の墓所》が入っていた。
《巻物の君、あざみ》さえ着地すればドローが安定するので、
そこから先はあまりマナに詰まる事はない。
軽量に作られたデッキを除けば、
土地33~35枚を基点に作られているのがわかるだろう。
土地の切り詰めは結局リスクだ。
EDHに限った話ではないが、
MTGのデッキ構築は基本的に
「土地とそうでないカードの比率のせめぎあい」
である。
いらない時の土地は困るし、
逆に初手で土地事故を起こしていればマリガンせざるを得ない。
そういう葛藤の中で最も重視すべきは、
「平均的な引き方をした際に、
最も勝率が高い比率にしておくこと。」
である。
切り詰めたからといってこれが高まるわけではない。
前述した通り、
「今日強い人」「回ったら強いデッキ」は論外である。
そういう構築は上振れ下振れが激しく、
上振れした時の勝ちに引っ張られてしまい、
(特に心理的に脳内麻薬が出て気持ちいいとなってしまうため)
ギャンブル的な考え方に陥りがちだ。
それは完全に間違いであり、
計算が上手な人でもこの思考に落っこちてしまう事もある。
EDHは麻雀同様に対戦相手が3人いる。
その中で勝率を見ていく事が大切だ。
1位ならずとも2位をしっかりとれるプレイが重視されるのが麻雀だ。
1位を取らなきゃ意味がないという打ち方はお金を賭けた麻雀にありがちだが、
あれですら本当は間違っていて、
長い目で見た時に負けないのは
「2位を堅実に取りに行けるプレイのスタイルを保つ事」
である。
EDHに話を戻すと、
ガチ・カジュアル論争以前にだ、
「MTGを楽しむ」が一番重要な話だ。
その中で、
「土地を切り詰め過ぎて土地事故を起こしやすく、
マリガン回数も多め、
そして回ったら強い上振れギャンブル思考のデッキ」
は楽しいのか?
土地事故が起きたら「何も出来ない時間」を過ごすし、
マリガンの回数が多いのは「他人と自分の時間を無駄に潰す」ことになる。
何もいい事はない。
プレイの手前の段階でこれを考えたら、
わざわざ「つまらなくする」「時間を無駄にする」事はあるまい、ということ。
最後に
まぁまぁ長期戦になりがちの環境を見ても、
「ちょっと土地枚数多いかも?」
なんて思いながら気楽に構築するくらいで良いので、
目安は土地33~35枚、
不安なら土地37枚くらいまで考えても良いだろう。
あとは自分のジェネラルと相談。
重たい生物だったら35枚は安定して入れると思ってて良いかと。
もともとが競技めいた環境ではない事も加味して、
肩の力を抜いて構築してみよう。
次回は土地以外のカードについて解説。
ではまた。


