社長のおしごと
記事作成日:2024/06/20 執筆:加藤英宝
質問箱でこのような質問をいただいた。
お題

その業界の人でないとわからない、知っているようで知らない世界を良ければコラムで紹介していただけたらと思います。
回答
自分でも案外この回答は難しい。
何をやっているんだろう?と思い返してみると結構バラバラだ。
あまりにやっている事が色々になりすぎたのか、
それとも部下が単純に問題なだけだったのか、
店主は部下にとんでもない事まで言われた事がある。
「お前は無能だから、経営権をよこせ。
お前は社長から会長職にでもなってそのへんで遊んでろ。」
この台詞は、
Cardshop Serraに勤めた二人の人間が結託し、社長でありオーナーであるこの店主に対して叛逆した時に言われた。
全くすごい事を言ってくる二人だなと思った。
言われたのはこれだけではない。
「お前は接客が下手だから、接客もするな。」
「お前なんかお泊りまじっくにいないほうがいい。
俺たちでお泊りまじっく企画するから勝手にやらせろ。」
常軌を逸した発言だとは思った。
が、
店主はこれらの台詞を言われたときに、
「わかった。
そんなにも自分が無能であるのなら、
また、二人がそれほど有能であるのなら、
それを証明するのが一番だ。
半年間、二人の好きにやってみてはどうだろう。
ただし条件をつける。
経営状態が明らかに悪化するとわかった時や、
こちらが想像もしない程に危ない事をした時など、
緊急と判断した時は二人を止めるよ。」
と、
この二人に自由にやらせてみる事にした。
この当時、それでも社長という立場は書面上は変わらないしこらむを書くのも自分だけだ。
ただ、販売、仕入れ、買取、片付け、掃除…といった一般的業務についてこちらで一切の管理をしないで黙って見ている事にした。
三ヶ月もかからなかった。
この二人は大失敗を犯しお店に大損害を与えた。
(この大失敗は希望があったら別で書いてもいいかもしれない。)
この三ヶ月の月間売上はなんとその前1年、後10年(現在までという事)の売上の中でも最低を示す結果となった。
接客、お泊りまじっくについても二人は大失敗。
日程もしっかりと計画出来ず、また人も集められずで計画は頓挫。
加えて、ここには書かない大損害ももう1つ。
間違ったらCardshop Serraごと無くなる程の事だった。
あの時、自分ともう1人が動かなかったら会社は倒産していた。
さすがにこの状況は看過出来ずに二人を止めた。
止めるのもある意味でオーナーの仕事。
自分の仕事の場合はこの10年前の時でも今でも色々なもので、
人材育成、統括、こらむ書き、仕入先の模索、
経営の勉強、人材探し、仕入れ、接客、質問箱回答・・・
スタッフが気づかない売り切れ商品の管理と仕入れ、
と多岐に渡っている。
手をつけない仕事を書くほうが早いかもしれない。
手をつけない仕事は、
・発送、梱包、商品の取り出し
・商品登録、買取、単純な注文対応
・Cardshop SerraのTwitterアカウントの運用
・店頭でのレジ対応
くらいだろうか。
あ、でもCardshop Serraアカウントの運用に口出す事あるなぁ。
今月のKからは、
「お前はふんぞりかえっているだけで遊んでいるだけだろ。」
などと言われる。
いくら仕事をしていると言っても彼は信じてくれない。
全くひどい友人をもったものだ。
それから、社長の仕事とは本当の意味では別。
代表取締役の意味でもある。
東北の震災の際に、東京電力は清水正孝という人が社長だった。
この人は当然の如く当時の社長として最も責め立てられた。
「お前が社長なんだからお前が責任をとれ!」
とそこらじゅうから言われた。
これが社長のお仕事。
「会社の顔になり、責任を取らされる。」
というのは仕事だ。
何せこの立場は理不尽極まりない。
まず社員からは、
「社長何もやってない。」
なんて思われがち。
無能な社員なんて、
「俺がいないと会社が回らない。社長マジ無能。」
と言い出す人が出てくる。
よくある学生から社会人になって言い出す
・寝てない自慢
・忙しい自慢
・俺がいないと会社が回らない自慢
いつの時代でも変わらない三大恥ずかしい自慢。
そしてこういう発言の先に
「社長無能。」
が出てきちゃうから困りもの。
「じゃあお前が社長やってみろ。」
なわけだが、これをやらかしたのが冒頭に書いた社員二人だ。
こんなちっぽけな会社であろうとも彼等は何も出来ずに失敗し、会社の経営をピンチに陥れたわけだ。
最も
「そんな奴を入社させたお前の責任だろ。」
と言われたら当然その通りだ。
つまり、一番悪いのは自分だ。
それが社長ってものだ。
次に理不尽なものは、他人の失態の責任を追及されてしまう事だ。
これは金銭面と不祥事そのものの面の両方。
東京電力のように大きな会社だと個人が金銭面の責任を取らされる事はまず無いが、小さな会社では社長が責任を取らされる事もある。
不祥事は
「会社の代表なんだからお前に責任があるんだよ!!」
と世間から言われる部分。
「え?俺自身はなんもやってねえのになんで俺が悪いって話になるの?」
という気持ちがあっても、間違っても口にしてはいけない。
ウチの会社のように小さな会社では、金銭面は100%社長のもとに降り掛かってくる。
これは説明が簡単。
例えば銀行から1億お金を借りていたとしよう。
当然毎月の返済をしなければならない。
利子もついている。
で、ここで社員の不祥事で会社潰れたとしたら、
「ハイ、社長さん1億の負債そのまま責任取ってくださいねー!」
となる。
会社が銀行から融資を受ける際に連帯保証人に名を連ねたらこれで責任を取らされる。
一社員はこんな負債を抱えさせられる事はない。
単純に明日から職が無くなるというだけだ。
これを読んでいる社会人で会社員の人は、もうちょっと社長や会社役員、部長、店長クラスの人に優しくしてあげよう。
上位職の人というのは結構苦労するのだ、こういう事があるから。
一社員のやらかし一発で店長クラスの人が、
「ああ、あいつの失態はお前の監督不行き届き。だからお前の給料下げるからな。」
なんて言われちゃう事もある。
社長の場合は、
「お前が全責任背負って融資の金全額背負えよ。」
になる。
上位職とはこういう労苦が当たり前なのだ。
小さな会社では社長と会社は一蓮托生。
一人だけ地獄を見させられる事も少なくない。
Kが言うように、
「ふんぞりかえっているだけ」
は半分仕事である。
ふんぞりかえっているだけで仕事が回るようにしておくのが仕事だ。
これは私見ではあるが、この東京電力の社長のように、
「責任をとって辞任」
なんてのをよく聞くが、半分論外だと思っている。
世間様はそれを望む声も確かにある。
しかし、実際はただの逃げである事のほうが多い。
しかもだいたい勝ち逃げ。
この東京電力の社長だった清水正孝は、アメリカのニュースでも「経営者が雲隠れ」と大々的に批判されている。
辞任という手段は真に責任を問われるものではないと自分は思っている。
理想論も込みの話をしてしまうけれども、
「責務を全うしたうえで社長の座に居続ける事こそ責任の取り方」
であると考えている。
もちろん社長というのは基本的にその会社で一番給料が高いので、その椅子に座り続けたい人は多いだろうから、周囲からは
「そんなに社長の椅子に座り続けたいのか!」
と批判を受ける事もあるだろう。
その一言も正しい。
会社の規模ややっている事次第では、それでもその椅子に座り続けたほうが世の中に良い場合もある。
とても難しい判断だ。
どちらが正しいとは一概に言い切れない。
そして言い切れないからこそ、社長の仕事とは難しい。
「責任を取る事」
なんて言葉は簡単だけれども、
「じゃあそれって何やってんの?」
って言われてしまうと、
「えーと・・・」
となってしまうのも事実だ。
Kの言葉はそういう意味では核心を突いているとも言える。
とこんな感じなのが社長のお仕事ではないかと。
そういえば同業他社のオーナーは何をしているのだろう?
他の人の意見も聞いてみたいところだ。
ではまた。
