時には昔の話を
記事作成日:2020/11/20 執筆:加藤英宝
この記事は2020年11月20日にnoteで掲載された記事をこらむに移行したものです。
店主もこのMTGに世界に足を踏み入れて結構長い。
今までに色々な方の買取をやってきた。
その中でも引退された方の買取は特に楽しい時がある。
それは、デッキがそのままになっている場合。
引退された際にデッキを崩さず、
その当時のデッキのまま買取に出してくれた時、
「この人はこんなデッキをプレイしてたんだなぁ。」
と思いながらカードを見るのがとにかく楽しい。
その中で今までで一番面白かったデッキを今回のお話に。
デッキの時代はおそらく第4版の時代。
MTGの最初の日本語版は第4版なので、
その頃かそれより少し前に作られたデッキなのだろう。
西暦にして1995年か1996年頃のデッキということ。
全てのカードが英語版だった事も覚えている。
あまりにインパクトがあったので、
一度見ただけで60枚全て覚える事が出来た。
デッキはこんなデッキだった。
-クリーチャー0枚-
-インスタント4枚-
4《稲妻/Lightning Bolt》
-ソーサリー6枚-
2《火の玉/Fireball》
2《ハリケーン/Hurricane》
2《地震/Earthquake》
-エンチャント12枚-
4《繁茂/Wild Growth》
4《ほとばしる魔力/Mana Flare》
4《ティタニアの歌/Titania’s Song》
-アーティファクト18枚-
4《アラジンのランプ/Aladdin’s Lamp》
4《アラジンの指輪/Aladdin’s Ring》
4《友なる石/Fellwar Stone》
2《ジェイムデー秘本/Jayemdae Tome》
2《赤の魔力貯蔵器/Red Mana Battery》
2《緑の魔力貯蔵器/Green Mana Battery》
-土地20枚-
4《ミシュラの工廠/Mishra’s Factory》
8《山/Mountain》
8《森/Forest》
こんなデッキ。
赤緑で生物0という珍しいデッキだ。
昔のカードを説明無しでわかる人なら、
このデッキがどんな事をしたいのかわかるはず。
ひとまず説明を入れていこう。
たぶんこのデッキの肝の部分は
《ティタニアの歌/Titania’s Song》
というカードだ。
《ティタニアの歌 / Titania’s Song》
コスト:3緑
エンチャント
すべてのクリーチャーでないアーティファクトはその能力をすべて失い、
そのパワーとタフネスがそれぞれ、
その点数で見たマナ・コストに等しいアーティファクト・クリーチャーになる。
ティタニアの歌が戦場を離れた場合、この効果はターン終了時まで持続する。
レア
初出はアンティキティ、Revised等にも再録されているカード。
太古の昔からある緑の怪しいレアなのだが、
結構能力が馬鹿に出来ない面白いカード。
《機械の行進/March of the Machines》の元祖みたいなもの。
《機械の行進》と違うのは能力を消し飛ばすという点。
「能力を失わせる」
という能力はMTGの世界では稀有な存在で、
特にMTG黎明期ではかなり珍しい。
この《ティタニアの歌》を置いてあると、
《Black Lotus》もただの紙切れと化す。
今回の話には全く関係がないが、
《マイコシンスの格子/Mycosynth Lattice》と一緒に置くとややこしい。
普通の人だと「え?これどうなるの?」と必ず混乱する。
このデッキは何をしたいのかと言えば、
《ティタニアの歌》+アーティファクトで勝ちたいのだと思う。
アーティファクトはあんまり説明の必要がない。
時々《ジェイムデー秘本》だけ使うが、
基本的にはコストだけ見てもらえればいい。
なにせ《ティタニアの歌》で能力を失い、
コストの数字のパワー/タフネスの生物になるので。
《アラジンのランプ》コスト:10
《アラジンの指輪》コスト:8
《友なる石》コスト:2
《ジェイムデー秘本》:4
《赤の魔力貯蔵器》:4
《緑の魔力貯蔵器》:4
うん、こいつらでぶん殴りたいんだな。
特に、
《アラジンのランプ》を10/10
《アラジンの指輪》を8/8
にして殴りたいんだな。
あと、
《ジェイムデー秘本》を4/4
にして殴りたいんだな。
本で殴るってファイナルファンタジーか。
(※FFには本を武器にして殴れる作品がいくつかある。)
そしてそのために
・《ほとばしる魔力》
・《繁茂》
を入れたんだな。
で、それだけじゃマナが余った時に面白くないから、
X火力を入れたんだな。
たまに《アラジンの指輪》でショットガン撃ちたいんだろうな。
ちなみにMTG wikiにすら書いていないのだが、
《アラジンの指輪》はMTG黎明期に本当に
「ショットガン」
というあだ名がついていた。
あと、元ネタである、「アラジンと魔法のランプ」だが
「指輪からビームが出る」という記述はない。
それはともかく、
やりたい事を適当に突っ込んで、
とりあえず《稲妻》4枚採用したら、
デッキが60枚になったんだな。
という竹を割ったような構成。
あまりにコンセプトが面白くて、
この60枚のデッキを見た時に笑ってしまった。
1人で買取作業をしていて声に出して笑ったデッキだった。
1ターン目:《森》に《繁茂》つけてエンド。
2ターン目:《山》置いて《ほとばしる魔力》置いてエンド。
3ターン目:2枚目の《ほとばしる魔力》か4マナカードへ展開。
4ターン目:《アラジンの指輪》or《アラジンのランプ》
5ターン目:《ティタニアの歌》からパンチ!
6ターン目:パンチ&X火力でとどめ!
だいたいこんな感じを想定しているのだろう。
こんなにうまく行くとは思えないが。
そういえば、マナ加速カードで展開を早め、
コストの高いフィニッシャーにつなげるデッキを
「ランプ」
と総称するが、
《アラジンのランプ》がフィニッシャーである事を含め、
まさにランプデッキではないだろうか。意味は異なるが。
(マナ・ランプ/Mana Ramp とアラジンのランプ/Aladdin’s Lamp)
いや、間違っているのはわかっているのだが、
このデッキのマナ加速とフィニッシュまでの流れは、
一応ランプデッキの祖とも言えなくはない。
このデッキを作った人、
時代を先取りする構築力を持っていたのでは?(笑)
少なくともこのデッキに名前をつけるなら、
「赤緑ランプ」
になるはずだ。
ランプがダブルミーニング。
このデッキを作った人は大会にこれで出たのだろうか。
もし出たのなら何勝何敗だったんだろうか。
とても気になるデッキだ。
そしてこのデッキ、第4版のみで構築可能だ。
1枚たりとも他セット無しでいける。
本当に第4版時代のカードだけで組んだデッキだったのだろう。
黎明期にこんなオリジナリティ(と漢気)溢れるデッキを構築していたとは。
なかなかの猛者だ。
だが、わかる。
このデッキの構築者はMTG大好き野郎だったと。
MTG大好き野郎だからこそ、
ここまでとがったデッキ構築をしたのだと。
店主はこういうクレイジー(褒め言葉)が大好きだ。
出来る事なら引退前にお会いして対戦したかった。
ちょっぴり残念。
さらに、このデッキは現在オールドスクールでそのまま行ける。
全カードが第4版で作れるなら、オールドスクールでは全て問題ない。
《ティタニアの歌》の能力で、モックスシリーズを封殺する事も出来る。
モックスどころか、
《冬の宝珠/Winter Orb》だろうが、
《ネビニラルの円盤/Nevinyrral’s Disk》だろうが、
《拷問台/The Rack》だろうが、
問答無用で無効化&生物化させて《地震》で流せる。
それなりに理にはかなっている。それなりにだけど。
このデッキ、一応ちょっといじれば、
もう少しだけスピードアップ可能なので、
誰かやってみる気のある人はおらんじゃろうか。
結構面白いような気も。
ただ、真面目に作ろうとしたら、
《アラジンのランプ》がデッキから抜けそうだ。
ではまた。