災難の輪
記事作成日:2021/04/19 執筆:加藤英宝
怪しいカードが出た。
このカードだ。
《Wheel of Misfortune/災難の輪》
コスト:2赤
ソーサリー
各プレイヤーはそれぞれ、秘密裏に0以上の数値を選ぶ。
その後、プレイヤーは全員同時にその数値を公開し、
これにより公開された数値の中の最大値と最小値を決定する。
災難の輪は、その最大値を選んだ各プレイヤーにそれぞれ、
その値に等しい点数のダメージを与える。
その最小値を選ばなかった各プレイヤーはそれぞれ、
自分の手札を捨て、その後カードを7枚引く。
レア
カード名からしても、
《Wheel of Fortune》
の亜種だとわかるカード。
カードの効果も似ているし、コストは同じ。
ちなみに
「Misfortune」
だけの直訳では不幸。
もちろん災難も間違いの訳ではない。
カードの効果は最初に読むと首をかしげる効果。
わかりやすく書くと、
「みんな数字を1つ決めて、
全員でその数字を公開しよう。
一番大きい数字の人はその大きい数字のダメージをくらえ。
一番小さい数字の人は何も起きない。
で、一番小さい数字の人以外は、
今ある自分の手札を捨てて新しく7枚引け。」
統率者レジェンズのカードなので、
多人数戦向きのカードデザインがされている。
1対1でやった場合は
「最大値でも最小値でもないプレイヤー」
がいなくなる。
1対1でも多人数戦でも、
すべてのプレイヤーの選んだ数が同じだった場合、
全プレイヤーにその選んだ点数のダメージが入り、
全プレイヤーはカードを捨てて7枚引くことが起きない。
1対1ではおおむね
「片方が何も起きず、
片方が指定数のダメージ+手札を捨てて7枚引く。」
になる。
このカード、EDHでとりあえず入れておいても十分使い物になる。
当たり前の話だが、EDHに限らず、
《災難の輪》を撃つ人は自分の手札を変えたい時に撃つ。
撃たれた側はそれを見越して数字を考える。
選択としては、
1:自分も手札を変えたい。
2:自分はこのままの手札が良い。
という二択が最初に来る。
1の人は当然、
「最小値にならないように、
かといって自身のライフが危険にならない範囲。」
の数字を選びたい。
ここは残りライフによっても変わるが、
結構な心理戦がある。
数字の選定は真剣に考えるとかなりシビアで、
選択次第で即敗北にも繋がりかねない。
こういった部分は元のカードである《Wheel of Fortune》と大きく違う。
2の人の場合は、
単純に手札を変えたくないだけなら0と言えばOK。
最小値が0なのだから。
あとはカウンター呪文を持っていて、
他人の手札が変化する事を良しとしないなら打ち消す、
《双つ術/Twincast》のようなコピー呪文で場を混乱させてみる。
といった選択があるが、
これは特定の場合のみ。
自分の経験で、
このカードをEDHで1ターン目に撃ち、
自分:フェッチを使っているので39
対戦相手3人:40
の状況から、
自分:15
A:20
B:20
C:0
と指定し、
ライフが
自分:39のまま
A:20
B:20
C:40
となり、
手札は
自分:7枚に補充
A:新しい7枚に変化
B:新しい7枚に変化
C:変化無し
となった。
1ターン目にしていきなりライフ半分が2人、
自分は15で最大値くらいかと思ったが、
予想に反して20が2人もいて驚いた。
0を指定した人は余程捨てたくない手札だったのだろう。
なお、ここまでプレイして状況的にも有利と思ったが、
この勝負は最終的には負けた(笑)
ここまで行っても勝てない時もあるのがまた面白い。
さて、ここまでは前座。
この《災難の輪》にはちょっと変な事が起きる、
いや、起こせる。
その起こせるカードというのは、これ。
《Intervention Pact/仲裁の契約》
コスト:0
〔白〕 インスタント
このターン、あなたが選んだ発生源1つが次にあなたに与えるすべてのダメージを軽減する。
あなたは、これにより軽減されたダメージに等しい点数のライフを得る。
あなたの次のアップキープの開始時に(1)(白)(白)を支払う。
そうしない場合、あなたはこのゲームに敗北する。
レア
これだけでなくてもOK。
《ダメージ反転/Reverse Damage》というアルファからあるカードでもOK。
というより《ダメージ反転》を契約サイクルカードにしたのが《仲裁の契約》なので。
これ以外にも変な事が起こせるカードがあり、それは後述。
手順的にはシンプル。
1:《災難の輪》を撃つ。
2:《災難の輪》がスタックに乗っている状態で《仲裁の契約》を撃つ。
3:対象は《災難の輪》を指定。
4:ありえない程の数字を言う。
だけ。
1~3の手順でなければいけないのは、
呪文の処理に入ってしまうと《仲裁の契約》を撃つタイミングが無くなり、
呪文処理中に指定数字のダメージが入ってしまうから。
これを行うと、
《災難の輪》で本来受けるはずだったダメージが0になり、
その軽減されたダメージ分のライフを得る。
つまり
「3億!」
と言えば現ライフ+3億のライフとなる。
これだけなら馬鹿げたコンボで笑っておしまい。
問題は《仲裁の契約》を撃った人が2人以上いた場合。
どうなる?と言っても別に1~3の手順は変わらない。
4の手順時に影響が出る。
「どっちがより大きな数字言えるの?」
という話。
でかい数字言えるかどうかなんて、
これただの雑学知識じゃねえか!
という事。
よく使われる言葉で言えば、
「天文学的数字」
というやつを知っているかどうかだ。
経済や一般生活の中ではせいぜい出てきても、
億、兆、そしてその次の桁の「京」(読みはけい)くらいだ。
その後が全部言える人は理数系の人か、
雑学を知っている人か、
ただの変人だ。
店主は小学校の時に図書室にあった本で覚えた。
京の次は
垓(がい) 10^20
𥝱(じょ) 10^24
穣(じょう) 10^28
溝(こう) 10^32
澗(かん) 10^36
正(せい) 10^40
載(さい) 10^44
極(ごく) 10^48
恒河沙(ごうがしゃ) 10^52
阿僧祇(あそうぎ) 10^56
那由他(なゆた) 10^60
不可思議(ふかしぎ) 10^64
無量大数(むりょうたいすう) 10^68
とこここまで。
ここまでなら常識とは言わずとも、
知っている人がそれなりにいる話。
つまり、一人の場合なら、
「《災難の輪》撃ちます!
んで《仲裁の契約》撃ちます!
無量大数ゥゥゥゥ!!
イヤッホォォォウ!!」
でOKだ。
他のプレイヤーが「無量大数」のライフがあるわけがないので。
ついでに言うと《仲裁の契約》である必要もない。
「あなたがこのターンに受けるダメージは0になる。」
「あなたのライフを0以下にするダメージは代わりにあなたのライフを1にする。」
「《白金の天使/Platinum Angel》をコントロールしている。」
「《白金の帝像/Platinum Emperion》をコントロールしている。」
「対戦相手が《深淵の迫害者/Abyssal Persecutor》をコントロールしている。」
とんでもない数字を言うという条件なら、
このどれかに当てはまればOK。
そして、これが2人以上になると、
「どっちがより大きな数字言えるの?」
の勝負になってしまう。
わかりやすいのはEDHのような多人数戦で、
《深淵の迫害者》が出ていると、
《深淵の迫害者》のコントローラー以外は誰も敗北しない。
EDH4人戦だとすると3人無敵状態の人がいるわけだ。
で、その際に「無量大数」と言えば必ず最大になるの?
と言われるとそんな事はない。
簡単な言い方で、
「現ライフを超えてしまう数字を言っても死なないプレイヤー」
が2人以上いる状況で無量大数と言ったら、
普通の知識範囲であればまず負けない。
というよりも、
「普通、とりあえず無量大数って言っておくんじゃない?」
くらいの認識のはず。
だが、普通の知識範囲を超えた数字を言う人もありえる。
A「《災難の輪》撃ったぞ!
俺は《白金の天使》がある。」
B「俺は《崇拝/Worship》があるので、
何ダメージくらっても1は残るぞ。」
C「俺は対応して《仲裁の契約》を撃つ。」
D「・・・どうぞ。」
↓
A「んじゃいっせーので数字行くぞ。
いっせーの!」
A「無量大数!」
B「無量大数!」
C「演説。」
D「0。」
↓
AとB「演説?」
C「演説。キミタチの言う無量大数は10の68乗。
演説は10の69324642199981295394350956544乗。
私の勝ちだな。
演説ライフを得て残ライフは演説と35だ。
あとはアップキープの支払いを忘れないように、と。」
AとB「ハァ?」
という。
知らない人も読んだ途端に何コレ?
と思うような話のはず。
知らない人のほうが多いだろうからこそ、
こんな馬鹿な記事を書いているのだ。
多分こういう事を言い出すMTGプレイヤーはあまりいないはずだし、
こんな事を想定する人も少ない。
この演説というのは仏教の数字の数え方にあるそうだ。
知っている人は知っているが、
仏教の生まれた地、インドは昔からド派手な数字が大好きだ。
仏教に限らずインドの教えは数がぶっとんでいる。
さすがは0を生んだ国。
他の国とはスケールが違う。
さ、意味も無く桁のぶっとんだ世界の数字を羅列していこうか。
倶胝 10^7
阿庾多 10^14
那由他 10^28
頻波羅 10^56
矜羯羅 10^112
阿伽羅 10^224
最勝 10^448
摩婆羅 10^896
阿婆羅 10^1792
多婆羅 10^3584
界分 10^7168
普摩 10^14336
禰摩 10^28672
阿婆鈐 10^57344
弥伽婆 10^114688
毘攞伽 10^229376
毘伽婆 10^458752
僧羯邏摩 10^917504
毘薩羅 10^1835008
毘贍婆 10^3670016
毘盛伽 10^7340032
毘素陀 10^14680064
毘婆訶 10^29360128
毘薄底 10^58720256
毘佉擔 10^117440512
称量 10^234881024
一持 10^469762048
異路 10^939524096
顛倒 10^1879048192
三末耶 10^3758096384
毘覩羅 10^7516192768
奚婆羅 10^15032385536
伺察 10^30064771072
周広 10^60129542144
高出 10^120259084288
最妙 10^240518168576
泥羅婆 10^481036337152
訶理婆 10^962072674304
一動 10^1924145348608
訶理蒲 10^3848290697216
訶理三 10^7696581394432
奚魯伽 10^15393162788864
達攞歩陀 10^30786325577728
訶魯那 10^61572651155456
摩魯陀 10^123145302310912
懺慕陀 10^246290604621824
瑿攞陀 10^492581209243648
摩魯摩 10^985162418487296
調伏 10^1970324836974592
離憍慢 10^3940649673949184
不動 10^7881299347898368
極量 10^15762598695796736
阿麼怛羅 10^31525197391593472
勃麼怛羅 10^63050394783186944
伽麼怛羅 10^126100789566373888
那麼怛羅 10^252201579132747776
奚麼怛羅 10^504403158265495552
鞞麼怛羅 10^1008806316530991104
鉢羅麼怛羅 10^2017612633061982208
尸婆麼怛羅 10^4035225266123964416
翳羅 10^8070450532247928832
薜羅 10^16140901064495857664
諦羅 10^32281802128991715328
偈羅 10^64563604257983430656
窣歩羅 10^129127208515966861312
泥羅 10^258254417031933722624
計羅 10^516508834063867445248
細羅 10^1033017668127734890496
睥羅 10^2066035336255469780992
謎羅 10^4132070672510939561984
娑攞荼 10^8264141345021879123968
謎魯陀 10^16528282690043758247936
契魯陀 10^33056565380087516495872
摩覩羅 10^66113130760175032991744
娑母羅 10^132226261520350065983488
阿野娑 10^264452523040700131966976
伽麼羅 10^528905046081400263933952
摩伽婆 10^1057810092162800527867904
阿怛羅 10^2115620184325601055735808
醯魯耶 10^4231240368651202111471616
薜魯婆 10^8462480737302404222943232
羯羅婆 10^16924961474604808445886464
訶婆婆 10^33849922949209616891772928
毘婆羅 10^67699845898419233783545856
那婆羅 10^135399691796838467567091712
摩攞羅 10^270799383593676935134183424
娑婆羅 10^541598767187353870268366848
迷攞普 10^1083197534374707740536733696
者麼羅 10^2166395068749415481073467392
馱麼羅 10^4332790137498830962146934784
鉢攞麼陀 10^8665580274997661924293869568
毘伽摩 10^17331160549995323848587739136
烏波跋多 10^34662321099990647697175478272
演説 10^69324642199981295394350956544
無尽 10^138649284399962590788701913088
出生 10^277298568799925181577403826176
無我 10^554597137599850363154807652352
阿畔多 10^1109194275199700726309615304704
青蓮華 10^2218388550399401452619230609408
鉢頭摩 10^4436777100798802905238461218816
僧祇 10^8873554201597605810476922437632
趣 10^17747108403195211620953844875264
至 10^35494216806390423241907689750528
阿僧祇 10^70988433612780846483815379501056
阿僧祇転 10^141976867225561692967630759002112
無量 10^283953734451123385935261518004224
無量転 10^567907468902246771870523036008448
無辺 10^1135814937804493543741046072016896
無辺転 10^2271629875608987087482092144033792
無等 10^4543259751217974174964184288067584
無等転 10^9086519502435948349928368576135168
不可数 10^18173039004871896699856737152270336
不可数転 10^36346078009743793399713474304540672
不可称 10^72692156019487586799426948609081344
不可称転 10^145384312038975173598853897218162688
不可思 10^290768624077950347197707794436325376
不可思転 10^581537248155900694395415588872650752
不可量 10^1163074496311801388790831177745301504
不可量転 10^2326148992623602777581662355490603008
不可説 10^4652297985247205555163324710981206016
不可説転 10^9304595970494411110326649421962412032
不可説不可説 10^18609191940988822220653298843924824064
不可説不可説転 10^37218383881977644441306597687849648128
読み方?ごめん、わかんないや。
最後のだけ知っていればいいんだよ、最後のだけ。
「不可説不可説転」は「ふかせつふかせつてん」
一生言わないかもしれないけど、
《災難の輪》撃ってどんな数字でも言える時は、
「不可説不可説転!」
と言えばOK。
でも実際のところ、ありえるかと言えば、
デッキに《災難の輪》+《白金の帝像》あたりなら、
別に入っていてもおかしな事もない。
自分一人で決める際にむちゃくちゃな数字言い放題だ。
全くもって実用的でないという程でもない。
むしろ1回くらい言ってみたいロマンに加えて、
デッキ的に弱いような話でもない。
ちょいといけると思ったらデッキに仕込もう。
《災難の輪》+《仲裁の契約》のようにライフが増える場合は、
これに加えて《霊気貯蔵器/Aetherflux Reservoir》さえあれば、
全員を張り倒す事が出来るのだから。
《霊気貯蔵器》の必殺技、竜撃砲を撃ち放題。
たかが50点ライフごとき、
100回どころか1億回払っても屁でもない。
それだけのライフを払おうとも、蚊が刺した程にも感じない。
これでまた1つMTGに強くなったはずだ!
今日の講義はこれで終了!
さあ、EDHで《災難の輪》+《仲裁の契約》+《霊気貯蔵器》コンボを決めよう!
ではまた。