最初に高額カードを買った時
ツイッター質問箱でこのような質問をいただいた。
———————
最近初めてガイアの揺籃の地のfoilを購入しました。
大変な高額な取引きで震えています。
英宝さんが初めて購入した高額なカードは何ですか?
またその時の気持ちはどんな感じでしたか?
———————
これはいくらぐらいの事を言えば正解なのだろう?
金額では難しいのでちょっと昔話を交えながら。
自分がMTGを始めた頃だと、
Unlimited版の《Black Lotus》がまだ2万円なんて話だった。
そして、その頃だと、
「え?カードに2万円?」
という会話が飛び交う感じだった。
ネット通販のシングルカードショップは日本になく、
雑誌の広告やチラシで電話通販を受け付けしているショップがある時代だった。
その頃の記憶している限りの価格、
《Thawing Glaciers》3980円
《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon》3480円
《バルデュヴィアの大軍/Balduvian Horde》3980円
こんな感じだったはず。
「ハハッ!
こんな金額払うくらいなら、
パック買うぜ!」
などと甘っちょろい事を言っていた頃。
まだトレーディングカードゲームとして本当にトレード(交換)が成立していた頃。
この頃はシングルカードを買うという意識がほとんど無く、
多くの人が大会に行ったりおもちゃ屋さんに行って、
色んな人とカードの交換をしていた。
個人の価値観ばかりで交換するので、
今のようにスマホで価値を確認という事もなかった。
前述の3枚のカードがなかなかにぶっとんだ金額だった時代、
デュアルランドはこれより安かった。
《Underground Sea》や《Tundra》が1500円程度でも入手出来た。
今では《バルデュヴィアの大軍》を何枚積んでもデュアルランドと交換は難しそうだ。
デュアルランドに憧れを持った店主は、
シングル買いはしなかったが、
誰かのトレード用アルバムにあると、
「これ欲しいです!」
と言って交換していた。
《神の怒り/Wrath of God》
《ハルマゲドン/Armageddon》
《ネビニラルの円盤/Nevinyrral’s Disk》
《極楽鳥/Birds of Paradise》
《地震/Earthquake》
などが高い時代だったので、
これらを出すと結構相手も応じてくれていた。
店主の大好きな某アンコモンの天使さんのほうが高いなんて事もあった。
それでも意地になって収集していたが。
なんとなくの記憶なのだが、
デュアルランド10種4枚の合計40枚を揃えるにあたり、
シングルカード買いはしなかったような気がする。
この頃に日本には
イタリア語版のRevised、通称イタリバが出回っており、
そこらじゅうでイタリバのパックを450円くらいで買えた。
テキトーに買っていればデュアルランドは出るし、
トレードでも出してくれる人も結構いた。
そのため、
イタリア語と英語版ごちゃまぜの40枚はあまり苦も無く揃った。
そこから1年か2年くらいかけて全部英語版にしたのを覚えている。
さて、そろそろ本題に。
最初に買った高額カード。
デュアルランドですらこんな感じの時代で、
高いと言っても今とは感覚も違う。
ただ、なにせお金を持っていない頃だ。
1枚5000円でもまず払えないと思っていた。
今は1枚5000円のカードなんてスタンダードに簡単に存在する時代だ。
こうやって考えてみるとMTGというものが大きく成長したのがわかる。
成長していないのは店主の精神年齢くらいのものだ。
そこから1年か2年かした頃だろうか。
MTG歴3~4年のあたりの時期だったと思う。
自分が持っていたお金をほぼ全て費やして買ったカードは、
β版の《Black Lotus》NMだった。
MTGの象徴であり、
もちろん当時から最強のカードだと言われていた。
この《Black Lotus》を個人取引である人から買った。
その取引相手とはなんだかんだで縁が残り、
今もお付き合いは残っているが、
一度も会った事がないという不思議な人だ。
その当時でも飛び抜けたコレクターだったが、
その頃、
ウルザズ・サーガあたりからメルカディアン・マスクスの時代の時点で、
既にプレイヤーをしている感じではなく、
当時のスタンダードに興味すら無さそうな人だった。
今も多分持っているカードはあるのだろうが、
ウルザズ・サーガ時代のカードすら持って無さそうだ。
未だに年齢すら知らないが、
店主より年上である事とそれなりの収入のある方である事は間違いない。
今も昔も変わらずで、
個人取引での詐欺の危険性はこの時代もあった。
けれども、
この人はとても信用できる人だった。
この《Black Lotus》だけでなく、
それ以外のパワー9もこの人からいくつか買った。
この人は、
「相場より明らかに2割増しくらいの値段」
をふっかけてくるのだが、
文句の言いようがないくらいに状態の良いものを送ってくれた。
この人から買ったパワー9はPSA鑑定にかけてPSA8以上が必ずついた。
この人は、
「この当時の店主の頭の中にあった
MTG日本最高クラスのコレクタートップ5」
の1人だった。
買う時に、
「これから先、自分は一生MTGをやめない気がする。
何年もした時に《Black Lotus》は買えない日が来るんじゃないか?
今でもこんなに高いんだ。
もっと高くなったら自分の財力で買えない日が来ちゃうかもしれない。」
こんな事を思っていた。
最初の一行は正しかった。
残りの部分は正しくなかった。
一生MTGやめないから2枚目以降の《Black Lotus》に手を出した。
そしてまだ《Black Lotus》が欲しいと思っている手遅れな奴だ。
確かに買うのが厳しい値段になっているが、
お金が貯まったら迷わず買ってしまいそうだ。
この人から《Black Lotus》が届いた時、
スリーブから取り出して自分のスリーブに入れ替え、
9ポケットアルバムの真ん中にいれるまでとても緊張した。
「一歩間違って傷つけたらどうしよう?」
という事だけが頭の中をぐるぐるしていた。
《Black Lotus》を手に入れた!
という喜びよりも、
畏れという気持ちがあった。
「畏敬の念」
という単語がもっとも近い感じだった。
手に入れてアルバムに入れてしばらく眺めていた。
どのくらいこのカードを眺めていたかわからないけれども、
「このカードを使うに相応しい強さを身につけよう。」
という気持ちになった。
これが高額カードを最初に買った時の気持ち。
その後、店主はSeth Burnと出会い、
(参考こらむ:MTGへのスタンス2)
彼とコンタクトを取り続けるためにfacebookをやり、
その流れで《Black Lotus》の絵師、Christopher Rushさんともフレンドになれた。
けれども、お会いする事が出来ないまま、Christopher Rushさんは亡くなられた。
一度はお会いしたい方だった。
Christopher Rushさん、
自分はMTG、ひいては《Black Lotus》を後世に残すために頑張って仕事します!
貴方のデザインしたマナシンボル、
MTGのロゴ、そして《Black Lotus》は自分の人生を大きく変えてくれました。
その事に心から感謝しています!
最後に。
《Black Lotus》には今も畏敬の念を持って接している。
これからもこの気持ちのままプレイヤーでいたい。
ではまた。
記事作成日:2020/12/18