束の間の邂逅その2
《束の間の開口/Temporal Aperture》
コスト:2
アーティファクト
(5),(T):あなたのライブラリーを切り直し、
その後、一番上のカードを1枚公開する。
ターン終了時まで、
そのカードがあなたのライブラリーの一番上にあり続けるかぎり、
あなたのライブラリーの一番上のカードを公開した状態でプレイするとともに、
あなたはそのカードをそのマナ・コストを支払うことなくプレイしてもよい。
(そのマナ・コストに(X)が含まれる場合、Xは0である。)
レア
前回同様、タイトルは漢字変換のミスではない。
これまた久しぶりに会った方、Iさんとのお話。
この方とは10年は会っていなかった。
MTGを始めた頃に知り合い、
よく遊んだ仲間の1人。
店主よりも結構年上で、
当時の仲間の兄貴分の1人。
ドラフトの卓を囲む際に、
お金がない学生さんに、
「ドラフトだけでもやらないかい?
こちらがお金を出すから、
手に入れたカードは後でもらうという条件で。」
と言ってくれて、
卓を立たせてくれる事も多く、
色々なところでお世話になった人。
当時デュアルランドも揃わないのに、
「Type1やろうぜ!」
(Type1とは当時のヴィンテージの呼称)
などと言い出したクレイジーがいたのだが、
このIさん、のってくれた1人でもあった。
ヴィンテージを始めた頃なんて、
誰もが
《太陽の指輪/Sol Ring》
《悪魔の教示者/Demonic Tutor》
《新たな芽吹き/Regrowth》
くらいしか持っておらず、
とてもとても可愛いヴィンテージデビューばかりだった。
《Wheel of Fortune》すら持っている人が限られていた。
時々パワー9の内、1~2枚持っている人はいたが、
9種全て所有なんて人は誰もいなかった。
この当時、公式にはレーティングというものがあった。
レーティングとは、
「強さを示すための指標となるポイント制度」
と言えばいいだろうか。
1600点から始まり、
ちっちゃな大会に出て、
同じ1600点の人と対戦すると、
片方が1596点になり、
片方は1604点になる。
といった感じに点数が変動し、
その点数の高い人が強いという指標があった。
このレーティングというやつはよく出来ていて、
例えば、
1800点の人が
1500点の人と対戦した際に、
1800点の人が勝ったら1点くらいしか得られない。
1500点の人が勝ったら8点得られる。
(大会の規模によって動く最大点数は変化。)
といった具合に、
強い人は弱い人を倒してもポイントを得られなくなる。
このレーティング制度は今は廃止されてしまったが、
当時はそれが指標の1つで、
・スタンダード部門
・リミテッド部門(シールド、ドラフト)
・エターナル部門(現在のレガシーとヴィンテージ)
という感じに部門分けされ、
各部門につき、
・あなたは世界で何位
・あなたは日本で何位
といったことがわかるようになっていた。
そして、
この頃に日本でレガシーやヴィンテージをやる人は少なかった。
定期的に大会を開催する場所はほとんど無かった。
が、
例外だったのが静岡県。
富士市で主催してくれた人がいたおかげで、
レガシーをやる環境があった。
その影響からも沼津市で大会を主催していた自分は、
「俺んとこでもそういうのやりたい。」
と思ってヴィンテージやレガシーを始めた。
この富士市と沼津市の大会に出場した人達がいたことで、
日本のエターナルレーティングの上位は静岡県民が多かった。
これはどういう事かと言うと、
一度もレガシーやヴィンテージに参加した事がない人は、
レーティングに名前が乗らないため、
ランキングに名前が出ない。
この頃だと一度でもエターナルの大会に参加した途端に
「日本で500番以内」
くらい余裕だった。
そこそこに勝てるようになり、
大会でも4勝1敗程度を出せるようになると、
日本で10番以内も簡単な世界だった。
富士市の大会の主催の方などが、
「日本のMTGで静岡は魔境扱いされていたと思う。」
と言っていたが、
本当にそうだったかもしれない。
そんな魔境にもお付き合いしてくれたIさん。
やるとなったら気合が違ったのか、
《Nether Void》を買ったり、
《Sinkhole》を買ったり。
最終的にはパワー9も全部揃えた猛者だった。
店主の周囲でもかなり早い段階でパワー9を揃えていたと思う。
この当時の静岡県西部の事情はわからないけれども、
自分が把握している範囲では、
静岡県内でパワー9を全て所有していたのは4人。
その内の1人がIさんだった。
そのIさんも神河救済付近で自然消滅的に引退。
喧嘩をしたわけでもなく、
引退宣言があったわけでもなく、
いつの間にかMTGから離れていたという感じだった。
それから10年以上、
先日たまたま連絡をいただき、
「MTGのカードを手放したい。」
とのことだった。
日を決めてIさんの家にカードを取りに行った。
その量たるや、
段ボール箱10箱分をゆうに超えた。
さすがとしか言い様がない。
そして出てくるカードがこれまた強烈。
《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》
《古えの墳墓/Ancient Tomb》
《血染めの月/Blood Moon》
《不毛の大地/Wasteland》
《霊気の薬瓶/AEther Vial》
《Elvish Spirit Guide》
といったエース級カードが裸で出てくる。
当時あまり見向きもされなかったり、
ただのアンコモンだからね!
という扱いだったので、
当然と言えば当然なのだけれども、
段ボール箱を発掘しているととにかく驚く。
《血染めの月》にいたってはThe Dark版が裸で出てきた。
カードをお店に運び終わった後、
Iさんと一緒に食事に行った。
そこでIさん、
「そういえばデュアルランド40枚って、
昔24000円で買ったんだよね。」
にまんよんせん?!
40枚で?!
1枚平均が600円。
今、24000円じゃ《Plateau》1枚くらいしか買えない。
たぶんこのIさんがデュアルランドを揃えたのは、
25年くらい前だろう。
1995年ぐらいだ。
こらむを読んでいる人の中には、
まだ生まれていない人がいるかもしれない。
それにしても驚きだ。
まさかデュアルランド40枚で24000円とは。
そんなに初期に購入されていたとは思わなかった。
結構古参な方だと思う店主でも、
デュアルランドを1枚600円で買った事はない。
一番安かったものでも、
イタリア語の《Plateau》の700円。
もちろんボロボロのやつだ。
エクステンデッドという今は無いレギュレーションで、
デュアルランドが
「エクステンデッド落ち」
した時に大きく下落した時の価格がこれだった。
エクステンデッドは今でいうモダンみたいなもの。
このエクステンデッドはそこそこにプレイヤーもいて、
日本各地でそれなりに大会も行われていた。
店主も結構エクステンデッドは好きで、
最高戦績時は日本で3位だった。
その後、
エクステンデッドがグランプリなどのプレミアイベントで採用されなくなったり、
モダンという新しいレギュレーションが作られたりした。
それによりだんだんと下火になっていった結果、
エクステンデッドは2013年8月7日に廃止されてしまった。
Iさんは当然エクステンデッドでも遊んでおり、
本当に精力的にプレイされている方だった。
この当時、
ヴィンテージ、レガシー、エクステンデッド、
リミテッド、スタンダードをやっていれば、
レギュレーション全制覇だ。
そんな御方の引退となるとカード資産も相当なもの。
ヴィンテージとレガシーはともかくとしても、
「この人の資産、
当時のスタンダードやエクステンデッドで、
作れないデッキ無いんじゃない?」
というくらいの資産があった。
その中のデュアルランド40枚が、
まさか24000円で購入されていたとは驚きだった。
個人的にこれだけ精力的にプレイされていた、
しかも当時の兄貴分の人の資産を引き取らせてもらった事は、
とても光栄な気持ちだった。
そんなIさん、カードを手放す際に、
「これからのMTGプレイヤーのために。」
とデッキを1つプレゼントしてくれる事になった。
このデッキについてはIさんが店主に全面的にお任せというお話になったので、
今から店主が責任を持ってデッキ構築。
RTキャンペーンでお客様の誰かにプレゼント予定!
Iさん、色々な形でお世話になり、
そして最後にカードを託してくださってありがとうございます!
引退しても貴方はこれからも変わらず我等の兄貴分でいてください!
ではまた。
記事作成日:2020/11/27