再録禁止について2020年版その2。
記事作成日:2020/10/16 執筆:加藤英宝
再録禁止について2020年版。のお話の続き。
そもそも、
再録禁止が云々という話を大きく話題にしている人達が気づいてない事や、
違う視点がある。
今回はそこからお話をしていこうと思う。
再録禁止リストにばかり目が行ってしまう昨今、
それだけが全てではないという事にも目を向けてもらいたい。
最初の発行以来一度も再録されていないカードがある。
例えば
《Reset》
というカードがある。
こんなカードだ。
《Reset》
コスト:青青
インスタント
この呪文は対戦相手1人のターンの間で、そのプレイヤーのアップキープ・ステップの後にのみ唱えられる。
あなたがコントロールするすべての土地をアンタップする。
アンコモン1
このカードはレアリティがアンコモン1で、
レジェンドのカードだ。
レジェンドのカードはとてもややこしく、
アンコモン1は
「出にくいアンコモンだがレアではない。」
という立ち位置。
「レアリティにレアが無いセットは
アンコモン枠の最高レアリティをレアとして扱い、
再録禁止リストに選出される可能性がある。」
というものからも外れる。
一度はトーナメントカードになった事もあり、
それなりの値もつくカードだ。
このカードがいつ再発行されるか。
それはWotC社の方針次第。
再録する気が無い、
またはいつまでも単純に再録されないのであれば、
それは再録禁止カードと大差はない。
現状、WotC社は
「再録禁止リストのカードは再録しない。」
という事を守っている。
けれども、
再録禁止リストに無いカード達を、
必ずしも再録するわけではない。
一度の再録もされておらず、
なおかつ再録を希望されるカードは、
確かに再録の確率は0%ではない。
こんな言い方をしたら、
くだらない陰謀論めいたものになってしまうが、
もし、
「裏・再録禁止リスト」
のような、
表に出しているものとは別の、
再録する気がないカードリストがあったら、
そのカードはずっと再録される事がない。
もっとも、「裏・再録禁止リスト」がもし存在する場合、
いつの間にか内容が更新されていても、
ユーザーが知る事も無い。
こんな馬鹿げた話はともかくとして、
現状の結果、または未来において、
一切再録される事がないカードは、
再録禁止カードとの差異はほとんど無いのだ。
0%と1%未満では意味は大きく違うけれども。
前述の《Reset》は2020年の時点で、
再録禁止リストに入っていないが、
一度も再録されていないカードである事は間違いなく、
現状として、
いつか必ずの再録を約束されているわけでもない。
こういうカードは他にもいくつかある。
中には
「うん、いつか再録されるかも。」
と思うものもある。
例えば、そこそこの値段がついているものでは、
《Elvish Spirit Guide》
《雲の宮殿、朧宮/Oboro, Palace in the Clouds》
《親身の教示者/Personal Tutor》
このあたり。
《Elvish Spirit Guide》はいつかどこかで、
「エルフの指導霊」
なんて名前で日本語版が出てもおかしくなさそうだ。
《親身の教示者》は同セットにある緑の教示者カード、
《森の教示者/Sylvan Tutor》がジャッジ褒賞になっているため、
これまた十分に再録の可能性がある。
何が言いたいのかというと、
「再録禁止リストは確かに表向きまず再録されないけれども、
もしかしたらそれだけが再録されないカードとは限らないですよ。」
という事。
とは言うものの、
昨今のWotC社は市場の人気カードを再録する事や、
特定の限定商品を出す事により、
「集金活動ばかりしている。」
と言われてしまっている。
どこかの海外の方は、
「今のMTGの新商品に金を出す価値などない。」
とまで言ってしまった程だ。
そこで次のお話だ。
次のお話はオールドスクール。
ちょっとこの文章の先を読む前に、
ある質問を書くので、
考えてみてもらえないだろうか。
「何故オールドスクールという遊び方は生まれたのか?」
という質問。
誰が作ったのかも気になるところだが、
今回のこらむで重要なものは、
「何故生まれたのか」
のほうだ。
もう少し言い方を変えたほうが、
持論が伝わりやすい。
「何故オールドスクールという遊び方を作ろうと思ったのか?」
という言い方。
これは確かめる術はないのだが、
こうなのではないか?
と思うものがある。
その理由に再録禁止リストが絡んでくる。
オールドスクールは地方ルールなどが少々あるが、
基本的に使えるセットは、
アルファ
ベータ
アンリミテッド
アラビアンナイト
アンティキティ
レジェンド
ザ・ダーク
フォールン・エンパイア
1994年までに出たプロモカード
だけだ。
時々
コレクターズ・エディション(CE)
インターナショナル・エディション(IE)
もOKにするなんて話もある。
実際にCE、IEを解禁したところで、
環境が変わるわけでもないので問題無さそうな感じだ。
このオールドスクールという遊び方の純正ルールは、
・再録版は一切認めない。
Revisedのデュアルランドだろうが、
Summerのデュアルランドだろうがダメ。
・英語版以外は一切認めない。
レジェンド、ザ・ダークにはイタリア語版があるが当然ダメ。
Revisedはフランス語版、ドイツ語版、イタリア語版があるが、
そもそも前述の「再録版は認めない。」のルールにも抵触するのでダメ。
つまり、純正のオールドスクールは、
「基本セットはアンリミテッドまでしか認めない。
言語は英語版だけで再録も一切認めない。
基本土地ですら、最低でもアンリミテッド版を使え」というルール。
一般的なマジックプレイヤーにはとても厳しい。
「オールドスクールを純正で1デッキでいいから組める人?」
と質問して、手を挙げられる人は果たしてどれだけいるだろうか。
おそらく全体の1%もいないだろう。
普通に考えたらこの純正オールドスクールは流行るとは思えない。
実際に日本のようにコレクターがそれなりにいる市場であっても、
純正オールドスクールはちょいと厳しい。
そんな遊び方が何故生まれたのか。
それは、
WotC社が信用出来ないと思ったコレクターが考えたのでは?
と考えている。
どういう事なのかと言うと、
WotC社を信用しないコレクターは、
「いつかWotC社は再録禁止を撤廃するかもしれない。
もし経営者が変わったら、会社がピンチになったら、
それ以外の様々な理由の何か1つでもあったら、
再録禁止を平然と撤廃して、
《Black Lotus》やそれ以外の高額カードを再録するかもしれない。
いくらデータとはいえ、
Magic Onlineでもヴィンテージマスターズなんて作ったくらいだ。
何をするかわからない。」
といった不安があった。
そして、
「ならば、再録されたとしても、
再録されたカードでは遊べない遊び方にしてしまったらどうだろう?」
という考えに至ったのではないだろうか。
もちろんのこと、
「MTGの最も古い時代の世界を今の人達も含めて楽しもう!」
は主な目的である事は間違い無いと思うけれども、
オールドスクールを考えた人(人達?)は、
こういう再録禁止関連の思いもあったのではないかと思う。
実際のところ、
オールドスクールというものが認識されるようになってから、
「オールドスクールでしか活躍しないカード」
の値段は著しく変化し、
同時に、
「純正オールドスクール用カード」
は再録されたカードに対して格差がつくようになった。
わかりやすいカードではデュアルランド。
かなり前の話になるけれども、
店主が個人的にRevised版のデュアルランドを海外から買った事があった。
Revised版を注文したのに、
ちょくちょくアンリミテッド版が入っていた。
当時の自分も、
「ま、いっか。どっちでも変わらないし。」
と思っていた。
値段も大きく変わる程のものでも無かった。
2020年の今、
どこのカードショップでもそんなザルな事はしてくれない。
「Revised版が無かったからアンリミテッド版入れておくね。」
なんて事をサービスでやらないだろう。
そのくらいに値段の格差は開いた。
オールドスクールは
「オールドスクール需要」
という言葉が出来るくらいにはカードの価格に影響を与えた。
「古いカードしか認めない」
という姿勢の遊び方が定着すれば、
WotC社がいくら再販版を作ろうともそれらは認められない。
そうなれば昔のカードの価格の下落は防ぐ事が出来る。
そして実際にそうなった。
現状オールドスクールのルールは少々緩和されており、
一番定着しているルールでは、
・旧枠かつイラストが同じであれば再録版もOK
・Foilは旧枠でもダメ
・他言語版も上記2つの条件を満たしていればOK
といった形式になっているが、
定着したルールであればこそ、
純正でありたいと思うプレイヤーは出てくるものだ。
もしオールドスクールを作った人が、
この話のように
「WotC社を信用しておらず、
古き良きカード達の価格の下落を防ぎたい。」
という気持ちも込めてオールドスクールを作ったのなら、
その目論見は成功したと言える。
今回のお話は何が言いたいかというのをまとめると、
1つは「再録されなきゃ再録禁止されているのと変わらない事もあるよ」というお話。
もう1つは《Reset》のように再録の可能性があれども、
オールドスクールのような遊び方が出来た事で、
WotC社の信用が落ちたとしても、
仮に再録されたとしても、
「古いカードはユーザーが独自ルールを作る事で、
それらの立場を確保されているよ」というお話。
そういえば一度も大会すら実行されなかったという、
ナイトメア’99(リンク先は店主のnote)という遊び方も、
古いカードのみ使える遊び方の1つだった。
さすがにあれは定着しそうにないが。
ともかく、
多くのユーザーがWotC社に不安を覚えている事は間違いないだろう。
再録禁止の撤廃はおそらくしないと思うけれども、
それでも100%信用しきれないからこそ、
多くの人々が話し合い、新しい遊び方を考え、
四苦八苦して今のオールドスクールの環境を作ったように思える。
カードショップを経営する者という立場を抜きにして、
1人のMTGプレイヤーとして、
WotC社には失っている信用の回復に努めてほしい。
ではまた。