Eureka
今回のお題は《Eureka》。
ツイッター質問箱でこのような質問をいただいた。
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エウレカのイラストに相対性理論の式が書かれていますが、
あの冴えない手品師みたいな人はアインシュタインがモデルなのでしょうか?
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ひとまず回答の前に色々と前提の説明が必要なお話。
そして店主はこのカードが大好きなので、
勝手にウンチクを書かせていただく!
昔からこのカードが好きで好きでしょうがないのだ。
まずはカードの効果から。
《Eureka》
コスト:2緑緑
ソーサリー
あなたから始めて、各プレイヤーは自分の手札にあるパーマネント・カード1枚を戦場に出してもよい。
この手順を誰も戦場にカードを出さなくなるまで続ける。
レア
カタカナ発音はローマ字読みそのままでエウレカ。
《実物提示教育/Show and Tell》のようなカード。
というより元になったカードという言い方のほうが正しいのかも。
違いはいくつかある。
《実物提示教育》 は出せる回数は1回だけで、
出せるカードはアーティファクト、クリーチャー、エンチャント、土地。
《Eureka》は全員がパスするまで何回でも出せる。
出せるカードはパーマネントカードなのでプレインズウォーカーもOK。
このカードが出たのはLegendsという大昔のセット。
プレインズウォーカーというカードタイプなんて存在していない頃のセットだが、
昔のテキストの状態でも「パーマネント」と指定されているため、
プレインズウォーカーというカードタイプが出て、
謎のパワーアップを遂げた面白い1枚。
余談になるけれども、
店主はEDHで《Wheel of Fortune》を撃って7枚引き、
そこから《Eureka》を打ち、残りの手札6枚が全てプレインズウォーカーで、
それらを全てを並べた事が1度だけある。
言うまでもないが、
多人数戦でこれを使うと非常に場が荒れるので楽しい。
このカードはそういうロマン溢れるカードでありながら、
レガシーでもトーナメントカードとして活躍する。
非常に稀有な存在だ。
この《Eureka》を調整して作ったのが《超起源/Hypergenesis》だが、
《超起源》は《実物提示教育》と同じでプレインズウォーカーは出せない。
《超起源》は時のらせんのカードで、
その当時はプレインズウォーカーというカードタイプが存在していないので、
《実物提示教育》と同じ書き方になったのだろうが、
それが後々で影響してくるというのは、
カードデザイナーは予測していなかったのかもしれない。
その他にも《Eureka》のようなコスト踏み倒しカードはいくつもあるものの、
《Eureka》程の爆発力があるカードは出ていない。
《Eureka》はギリシャ語で、
何かを発見・理解した時に使われる。
ギリシャの数学者・発明家であるアルキメデスが叫んだとされている。
「私は見つけた!」
「俺は理解したぜ!」
といった感じで解釈すればOK。
このアルキメデスがお風呂に入ったとき、
浴槽に入ると水位が上昇することに気づき、
上昇した分の体積は彼の体の水中に入った部分の体積に等しいという事を理解し、
そのあまりの喜びにお風呂から飛び出して、全裸で街を走り回り、
「エウレカ!エウレカ!」
と言い放ったと言われている。
おおらかな時代だったから良かったものの、
現代の日本でこんな事をやろうものなら即通報である。
偉大なる数学者も一歩間違えれば犯罪者だよ、アルキメデスさん。
猥褻物頒布等の罪だよ。
(俗に言う猥褻物陳列罪と呼ばれるもの。)
聡明な数学者がこの喜び方、
余程の事だったのだろう。
ちなみにこのエウレカ!と叫んだ際に発見したものは、
アルキメデスの原理ではないらしい。
けれどもアルキメデスの原理が有名過ぎて、
この話と混同され
「アルキメデスの原理を発見したときにエウレカ!と叫んだ。」
とする話が通説になっている。
なお、アルキメデスは本当に死ぬ間際まで勉強、研究に没頭する人で、
自国が戦火の中にあっても研究を続け、
敵兵が家になだれ込んで来た際に、
敵兵「お前は誰だ、名前を名乗れ。」
アルキメデス「研究の邪魔だ、黙れ。」
というやり取りをして、
怒った兵士に殺されてしまう。
しかも敵国にも非常に評価されており、
敵国側からも「アルキメデスは殺すな、捕らえろ。」と命令が出ていた。
このアルキメデスが生きていた時代が紀元前で200年くらいなので、
エウレカという言葉は2200年程前からある言葉という事になる。
このアルキメデスの話以外でも
エウレカという単語は知っている人もいるはず。
一例では、
ファイナルファンタジー3にもその名前が登場する。
ファイナルファンタジー3では、
「最後に発見する町の名」
として登場。
そして各種最高クラスのアイテムや魔法を見つける事が出来る。
ここでも「発見」「見つける」という事を意識してつけられたものと思われる。
で、話を《Eureka》のカードに方に戻そう。
このカードの絵には、
「E=MC^2」(イー・イコール・エム・シー2じょう)
と書いてある。
20世紀最高の物理学者と評される、
天才の代名詞、アインシュタインの発表した公式の1つで、
エネルギー(E)=質量(m)×光速度(c)の2乗
というもの。
1905年にアインシュタインがこれを論文で発表している。
(1907年と書いてあるページもある。)
ここから察するに《Eureka》のカードの絵は、
アインシュタインとこの公式の発見に関係しているのは間違いない。
けれども、
魔法使いの三角帽子のほうがアインシュタインなのか、
「E=MC^2」のプレートを持っている方がアインシュタインなのか全くわからない。
なにせどっちのキャラクターも本物のアインシュタインの顔と似てもつかない。
若い頃のアインシュタイン、晩年のアインシュタイン、
どちらを見ても全く似ているものがない。
このあたりはあくまでイラストレーターである、
Kaja Foglioさんのイメージで描かれたものなのかもしれない。
というわけで、
質問者様の回答に対しては、
店主も正確にはわからないというのが正直なところ。
たぶんアインシュタイン。
でも三角帽子のほうか、
プレート持っているほうかはわからない。
いずれにせよ、
「E=MC^2」を発見した!
という感じで描かれたものだと思われる。
なお、この「E=MC^2」の式は前述の通り1907年、
または1905年に発表されているが、
完全実証されたのはなんと100年後の2008年。
案外と最近の話だったりする。
アインシュタインの頭の凄さがわかるエピソードだ。
さすがは「この人がいなかったら文明が100年遅れた」等の評価をもらう人だ。
ところで、この「E=MC^2」とは
質量とエネルギーの等価性に関するお話で、
「この等価性の帰結として、質量の消失はエネルギーの発生を、
エネルギーの消失は質量の発生をそれぞれ意味する。
したがってエネルギーを転換すれば無から質量が生まれる。」
というもの。
物理学系の勉強をしていない人には全然わからないお話なのだが、
《Eureka》のカードの効果は、
おそらくこれを考えて作られたと思われる。
最後の一文がカードの効果そのままになっている。
エネルギー=マナ(2緑緑)+手札(《Eureka》をプレイする事で消費する)
と考えられる。
次に《Eureka》の効果は、
コストを無視してパーマネントを好きなだけ出せるので、
最後の文の「無から質量が生まれる。」を表現している。
質量=パーマネントということ。
これを踏まえて最後の一文をMTGを考慮して書き直すと、
「したがってマナと手札を転換すれば、
無からパーマネントが生まれる。」
という事になり、
《Eureka》のカードそのものを上手く表現している。
カードデザイナーのセンスを感じさせる1枚だ。
あと、
意外と気づかないというより、
普通気づくわけがない小ネタとしては、
世界初の原子力空母「エンタープライズ」の飛行甲板に、
「E=MC^2」
と書かれているのだが、
ファイナルファンタジー3のエンタープライズではエウレカに行く事が出来ない。
(エウレカに行けるのはインビンシブル。)
知っていても人生で何の役にも立たない知識。
最後に、
《Eureka》を使った漢らしいデッキを以前に紹介しているので、
こちらも一緒に見てみてほしい。
このカードは何発も撃った事があるので間違いない。
《Eureka》は使うととても楽しいカードだ。
時々自爆するけど。
レッツプレイエウレカ!
ではまた。
記事作成日:2020/10/01