ヴィンテージデッキ紹介その14。
記事作成日:2020/01/13 執筆:加藤英宝
《Fastbond》がヴィンテージで解禁されたので、
こんなデッキを紹介。
-クリーチャー4枚-
4《面晶体のカニ》
-インスタント12枚-
4《意志の力/Force of Will》
2《輪作/Crop Rotation》
1《Ancestral Recall》
1《渦まく知識/Brainstorm》
1《時を越えた探索/Dig Through Time》
1《噴出/Gush》
1《精神的つまづき/Mental Misstep》
1《吸血の教示者/Vampiric Tutor》
-ソーサリー7枚-
1《悪魔の教示者/Demonic Tutor》
1《ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe》
1《商人の巻物/Merchant Scroll》
1《思案/Ponder》
1《Timetwister》
1《宝船の巡航/Treasure Cruise》
1《ヨーグモスの意志/Yawgmoth’s Will》
-エンチャント7枚-
4《Fastbond》
3《ハグラへの撤退/Retreat to Hagra》
-アーティファクト6枚-
1《Black Lotus》
1《Mox Emerald》
1《Mox Jet》
1《Mox Sapphire》
2《世界のるつぼ/Crucible of Worlds》
-土地24枚-
4《霧深い雨林/Misty Rainforest》
3《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》
3《雲の宮殿、朧宮/Oboro, Palace in the Clouds》
4《Tropical Island》
2《Underground Sea》
2《Bayou》
1《Glacial Chasm》
1《The Tabernacle at Pendrell Vale》
1《シミックの成長室/Simic Growth Chamber》
1《ゴルガリの腐敗農場/Golgari Rot Farm》
1《ボジューカの沼/Bojuka Bog》
1《冠水樹林帯/Waterlogged Grove》
-サイドボード15枚-
3《夏の帳/Veil of Summer》
3《不毛の大地/Wasteland》
2《魔力流出/Energy Flux》
2《貪欲な罠/Ravenous Trap》
2《トーモッドの墓所/Tormod’s Crypt》
1《露天鉱床/Strip Mine》
1《ハーキルの召還術/Hurkyl’s Recall》
1《ボジューカの沼》
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このデッキの主軸である《Fastbond》はこんなカード。
《Fastbond》
コスト:緑
エンチャント
あなたはあなたのターンの間に、土地を望む枚数だけプレイしてもよい。
あなたが土地をプレイするたび、
それがこのターンにあなたがプレイした最初の土地でない場合、
Fastbondはあなたに1点のダメージを与える。
レア
MTGの初版であるアルファ、ベータから存在するレアカード。
土地は1ターンに1枚セットという、
基本中の基本のルールを破るカード。
初版に存在する時点で、
「一番最初に出た、MTGの基本ルールをぶち破るカード」
と言えるカード。
ヴィンテージで20年以上も制限されていて、
2019年8月30日に制限が解除された。
20年以上1枚制限されていて、
ここへきて解除されるというカードは非常に珍しい。
結構色々と悪さの出来るカードなだけに、
この解禁はちょっと興味深いものがあった。
23年ほどの1枚制限されている間、
いろいろな土地に関するカードと特殊地形が登場して、
太古の昔とは違って色々な事が出来るようになった。
このデッキに採用されている中では、
まず、この2枚で《Fastbond》はデメリットが消える。
《Glacial Chasm》
土地
累加アップキープ 2点のライフを支払う。
(あなたのアップキープの開始時に、このパーマネントの上に経年(age)カウンターを1個置く。
その後あなたがこの上に置かれている経年カウンター1個につき、
アップキープ・コストを1回支払わないかぎり、それを生け贄に捧げる。)
Glacial Chasmが戦場に出たとき、土地を1つ生け贄に捧げる。
あなたがコントロールするクリーチャーは攻撃できない。
あなたに与えられるすべてのダメージを軽減する。
レア
・累加アップキープが2ライフ
・戦場に出したら土地を1枚生け贄
・自分のクリーチャーは攻撃不可
デメリットを3つも書いてあるが、
ダメージを全て軽減するという大きな能力があり、
《Fastbond》の追加セットランドのダメージを消す事が出来る。
つまり何枚土地をセットしても痛くない。
この組み合わせを成立させると下記のコンボは楽になる。
上記2枚に加えて、
・《面晶体のカニ》+《シミックの成長室》
・《面晶体のカニ》+《ゴルガリの腐敗農場》
・《面晶体のカニ》+《雲の宮殿、朧宮》
やる事はどれも同じで、
おかえりランドは出したら自身を戻して、
追加セットランドを連打で相手のライブラリーアウトを狙う。
《雲の宮殿、朧宮》は自身の能力で戻してセットランドを繰り返す。
《Glacial Chasm》が無くても、
相手のライブラリーの枚数次第では削り切れる。
《面晶体のカニ》が2枚並んでいるとかなり楽。
もう1つのこのデッキの勝ち手段では、
・《ハグラへの撤退》+《シミックの成長室》
・《ハグラへの撤退》+《ゴルガリの腐敗農場》
・《ハグラへの撤退》+《雲の宮殿、朧宮》
これがあるが、
こちらは《Glacial Chasm》無しで成立。
あるとライフが1ずつ増えていく。
無い場合は自分のライフはプラスマイナスゼロ。
相手のライフが1ずつ減っていく無限コンボ。
この他にも、サイドボードから
《世界のるつぼ》+《露天鉱床》
《世界のるつぼ》+《不毛の大地》
が決まればロックが可能で、
採用はしていないが、
《ズアーの宝珠/Zuran Orb》を使うと無限ライフ、無限マナも可能。
ここに、《冠水樹林帯》を加えると無限ドローも可能。
また、
《Fastbond》+《精力の護符/Amulet of Vigor》+おかえりランド
という組み合わせもある。
ライフの続く限りマナを増やせるため、
《チャネル/Channel》みたいな事が出来る。
この組み合わせも《Glacial Chasm》があると無限マナに。
そして《輪作》のおかげで土地は簡単にサーチ可能。
《世界のるつぼ》があると、土地を生け贄というコストも気にならないうえに、
《Fastbond》+《世界のるつぼ》+《Glacial Chasm》だけでも強い。
ダメージは《Glacial Chasm》で防ぎ、
アップキープに《Glacial Chasm》の累加を払わずに墓地に落とす。
メインフェイズで《Glacial Chasm》を墓地からセット。
生け贄に捧げた土地も含めて墓地の土地は全部セット。
これを決めると、
隙があるタイミングは自分のアップキープからメインフェイズまで。
これ以外の時は全てダメージが通らない。
ライフ損失系カードで無ければ死なない状態を作れる。
もちろん《世界のるつぼ》さえ壊してしまえば止められるのだが、
必ず壊せるとは限らないだけにこの3枚の組み合わせはかなり強い。
あとは、やろうと思えばだが、
《埋没した廃墟/Buried Ruin》を採用、
もしくは《アカデミーの廃墟/Academy Ruins》の採用により、
破壊された場合の《世界のるつぼ》の回収を考えるのも1つ。
こんなふうに考えていくと、
色々な土地と《Fastbond》の組み合わせが面白い程出てくる。
特に《世界のるつぼ》の存在が大きい。
だいたいの悪さをこの1枚が補助してくれる。
このデッキを構築した際に、
《The Tabernacle at Pendrell Vale》と《ボジューカの沼》は、
ドレッジ、メンター等クリーチャーが横並びするデッキや、
墓地活用の多いデッキと対戦する事を考えてメイン採用だったが、
メインは《露天鉱床》や《不毛の大地》でも良い。
1枚制限カードではあるけれども、
《三なる宝球/Trinisphere》も採用し、
《世界のるつぼ》を増やして、
というロック状態を作るのも1つ。
決まればほぼ抜け出す事が出来ない。
例外は墓地に《露天鉱床》がある時に
《ボジューカの沼》をセットする事だが、
タイミング的にかなり難しい。
特に《Fastbond》まであった場合は、
抜け出す事は不可能なロック。
この《Fastbond》解禁により、
これだけの可能性が生まれた事はとにかく面白い。
ただ、一度制限されたカードなので、
いつまた制限に戻るかはわからない。
これから出るカード次第ではまた制限という事もありえる。
なにせ過去にそういうカードがある。
《噴出》というカードは、
2003年7月1日に制限カードに指定される。
2007年6月20日に制限解除される。
2008年6月20日に再び制限カードに指定される。
2010年10月1日に制限解除される。
2017年4月24日に制限カードに指定される。
という変わった経緯を持っているカード。
2度制限解除されて3度制限されたカードは珍しい。
このデッキにももちろん採用されている《噴出》だが、
もし制限解除された途端にこのデッキに4枚採用になるカードだろう。
多分制限解除されないけど。
というわけで、
この《Fastbond》というカード、
解禁されたからには是非使ってみて欲しい1枚。
なにせ20年以上4枚使える世界が無かったカードだ。
今までほとんどの人が経験しなかった事を公式大会で経験出来るようになったのだから、
この際使ってみよう。
ではまた。