ドラフトの取り切りについて。

ツイッター質問箱でこのような質問をいただいた。

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こんにちは。
ドラフトのやり方は取り切りがいいと言われてましたが、
自分は順位取りの方が絶対に良いと思っています。

取り切りにすると金額の高いカードが見えたから
構築そっちのけでいわゆるマネーピックをする人が出てきます。

ドラフトを楽しみたい、思うようにデッキを構築して強くなりたい、
勝ちたいという意欲満々な自己達成欲をもって参加する方々にとっては興ざめだと思いますし、
初心者やドラフト経験不足の方々も良いデッキを組む実力がつかず
結局のところ達成欲が満たされないようなカネやモノをわずかに得るだけで、
それが結果としてドラフトは満足できないつまらない遊びだ。
と考えてしまう原因だと思います。

カネやモノではなくドラフトを楽しむためにも取り切り方式は良くないと思いますが、
セラさんはどのようにお考えですか?
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回答だけを単刀直入に言うと、一長一短。

順位取りの利点は質問者の方のお言葉の通り。
競技性やドラフトの本当の楽しみは順位取りあってこそ。
特に後半のくだりが素晴らしい。
「初心者やドラフト経験不足の方々も良いデッキを組む実力がつかず
 結局のところ達成欲が満たされないようなカネやモノをわずかに得るだけで、
 それが結果としてドラフトは満足できないつまらない遊びだ。
 と考えてしまう原因だと思います。」
この文はドラフトをわかっており、
また楽しんでいらっしゃる方だからこそ言える文。

ここに付け足すと、
MTGは情報戦であり、物量戦であり、
駆け引きを問われる個人の実力戦でもある。
こういった戦いの一面の中で、
ドラフトが該当しないものが物量戦である。
この物量戦とは資本力のこと。

スタンダードのデッキも満足に組めないような資産の人が、
一応曲がりなりにもスタンダードのデッキを組み、
レガシーやモダンの一線級デッキと対戦したらどうなるか?

という例を言えばわかるだろうか。
100戦くらいしたら1戦か2戦まぐれ勝ちする事はあっても、
一歩間違えば100戦全てスタンダード側が負ける。
この言い方はとても極端だが、
MTGはどうしても資本力が一定以上あると強い一面がある。
ところがドラフトは違う。

ドラフトとは情報戦と駆け引きを問われる個人の実力戦である。
ドラフトのカードプールの把握、
ドラフトにおけるデッキのアーキタイプの把握、
トーナメントでは使われないようなカードの強弱を理解し、
それを実践で駆け引きとともに使いこなす。
そういった事が問われる戦いがドラフトだ。

大昔に書いた事があるのだが、
ドラフトは最もMTGの実力が出る。
店主はEDH、ヴィンテージ、オールドスクール、レガシーどれも大好きだが、
やはり最高はドラフトである事は揺るがない。

しかし、
この「最も実力が出る。」というものが嫌いな人もいるし、好きな人もいる。
この点がより競技性を増させる順位取りドラフトにとって、
メリットにもデメリットにも働く。
「順位取りで実力を明確にさせたうえで、
 報酬としてその中から好きなレアももらえる。
 最高にやる気が出る遊び方だ!」
と思う人もいれば、
「順位取りで実力を明確にさせられた挙げ句、
 順位が低ければロクなカードをもらえない。
 自分みたいに勝てない人にはこんなのどうする事も出来ない。
 やりたくない。」
と思う人もいる。
こういう人が増えすぎてしまえば、
単純にドラフトのプレイ人口が減ってしまい、
結果、本来望む競技性を失いかねない可能性も否定できない。

世の中には物量戦(資本力)で戦う事が好きな人もいる。
そしてそれは決して間違っていないし、なんら否定されるべきものではない。
「お金にものを言わせる。」
と言ってしまうと聞こえが悪いが、
資本主義経済の世の中では、
お金にものを言わせる事を否定している人はただの負け惜しみである。
物量戦が好きな人はそれほどドラフトを好まない事もある。
「せっかくお金かけてMTGのカードを買ったのだから、
 限られた時間でそれをフルで使いたい!」
という人はドラフトよりも買ったカードで遊びたいという気持ちが強いので、
ドラフトは取り切りで遊びたいと考えても仕方ないところもある。
こういう人の中には単純に構築戦が好きというだけの場合もある。

真に実力の出せる競技性ある順位取りドラフトにはこういったメリット、デメリットがある。

draft1
では、取り切りのメリット、デメリットは?という話に。
デメリットについては、
質問者の方の言葉の通り。
競技好きな人にとっては高額カードだからとピックされてしまうと興ざめするという点。
競技好きでない人にとっては、
順位取りルールで自分の引いた高いカードを失わなくて済むというメリットにも繋がる事は言うまでもない。
が、
メリットは実はそこではない。

取り切りは時間が最大のメリットになっている。
どういう事か。
一例を考えてみるとわかる。

8人で取り切りドラフトをしていて、
ある1人が急用によりドロップをしなければならないという事が起きた。
取り切りならば、そのままドロップしてもカードの順位分配がないので、
そのままドロップすればなんら問題が起きない。
しかし、順位取りの場合はドロップがしづらい。
上記の様な例でドラフトをしている会場からすぐに離れなければならないという状況なら、
その人はドラフトの最終戦+順位分配まで待っていられない。
そういう時にその人は順位に関わらずカードを諦めなければならないのか?
その人が仮に2勝状態で最終戦の3回戦前に急用が起きたら?
気持ち的に諦めがつきにくい事はおわかりいただけるだろう。
まして、
見知らぬ人と卓を囲んだドラフトであったのなら、
友人に代わりに適当なカードだけでも順位取りで取っておいてくれとも頼めない。

取り切りの場合はこういった時のドロップに関しては簡単に出来る。
これまた一長一短の話なのだが、
こういう例も考えられる。
「ああ、今回はドラフトそのものに失敗をした。
 これはこれで1つの経験ではあるが、
 出来れば次のドラフトの卓が立つのなら移りたい。」
と思っていても、
取り切りなら気持ちが切り替えやすいが、
順位取りだと最後まで頑張らないとならん!という気持ちになる人も出るだろう。
どちらが悪いとも言えない。
どちらのほうが競技性があるとも言いづらい。
考え方の問題だ。

取り切りドラフトは、
簡単にドロップ可能な点は時間においてメリットがあると理解してもらえると思う。
順位取りのほうは終わった後に全てのレアを出さねばならず、
その後の分配も含めるとどうしても時間がかかってしまう。
1枚でもレアが足りなければトラブルになりかねないし、
高額レアを雑に扱われて状態が悪くなってしまえばそれもトラブルになりかねない。
順位取りのドラフトではスリーブは必須になるが、
取り切りのドラフトでは個人の自由だ。
トラブルになりにくい方は取り切りの方になる。
トラブルになるという事は基本的に時間の損失になる。
ここでも時間損失がないというメリットがあると理解してもらえると思う。

また、店主自身でもこんな経験がある。
台湾でドラフトをした時のこと。

取り切りのドラフトで、2勝したところで、
同じく2勝している対戦相手に、
「賞品をスプリット(二人で等分する事)して、
 自分は次のドラフトの卓に早く入りたい。
 どうだ?」
と言われた。
店主は
「3戦目をやりたい。」
と断った。
対戦相手は
「何故だ?」
と言ってきた。
店主は
「すまない。自分は賞品に興味がない。
 自分はドラフトをやりにきた。
 マジックをしたいんだ。」
と言ったら、
対戦相手はわかってくれて、3戦目をやってくれた。

次の卓に行きたかった彼は競技的な人だったと思う。
そして自分の競技的だからこそ3戦目をしたかった。
これもまた考え方の違いで、
どちらが間違っているという事もないと思う。
もっとも、このドラフトが順位取りだったら、
彼は賞品をスプリットするという案を出さなかったかもしれない。

このようにどちらにも長所短所があり、
どちらが良いと言い切る事は出来ない。
ただ、
全体的には取り切りのお店が多いように感じる。
お店側からすれば、
・個人が自由にドロップ可能。
・順位分配の時間が閉店時間にかぶるとデメリットしかない。
という2つが大きいのだろう。
お店、個人での都合、価値観は様々なので、
こればかりはそのコミュニティ内で折り合いをつけて、
うまく共存していくしかないと思う。

最後に。
自分は、
「一長一短を理解した上でどちらが好きか選べ。」
と言われたら、
迷わず順位分配を選ぶ。
時間さえ許されるのなら、
順位分配で実力の問われる勝負をしたい。

それにしても最近全くドラフトしてないなぁ。
取り切りでも順位分配でもいいから、
仕事から離れてドラフトしたい。

ではまた。



記事作成日:2018/11/23



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