屈指のコレクターの条件

ツイッター質問箱でこのような質問をいただいた。

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“自称”関東屈指のコレクターと自負しておりますが、
日本・世界的なコレクターを名乗るには、
どの様なカードをコレクションに加えれば宜しいでしょうか。
(黒枠、エラーカード、プロモ・・・etc)
是非、ご教示いただければ幸いです。
※個人で入手できるレベルのカードでお願い致します。
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質問の意図は、
「屈指のコレクターの定義」
と言い換えても差し支えないと思う。
これは非常に難しい。
この質問への回答は絶対的な正答ではなく、
あくまで店主の個人的な視点に基づく意見に過ぎない事を前提としたい。

MTGのコレクションと言っても本当に多方面に渡ってジャンルがある。
シンプルな言い方だけなら、

所有カードの相場平均価格での総合計。

という一言で終わりになってしまう。
極端に言って、世界の富豪が

「俺、今からMTG始める。
とりあえずだいたいの目につくカードを、
片っ端から全部4枚ずつ買う。」


と言って、だいたいが揃うのであれば、
大半のプレイヤーは一瞬で資産額で負けだ。

と、こんな事を言ってしまうと身もフタもない。

店主も相当なコレクターだと自分で思っているものの、
かなわない人は結構いる。
例えば、
FOILカードのコレクション
エラーカードのコレクション
αのPSA鑑定済みカードのコレクション
パワー9の合計所有枚数のコレクション
あたりであれば、
自分よりも上がいる事を知っている。

ただ、
セラの天使/Serra Angel》の所有枚数なら世界一のはずだし、
世界で唯一の原画所持者なので、
セラの天使》コレクションに限り自分より上はいない。
ついでに言っておけば、
セラの天使》のイラストレーターであるDouglas Shulerさんに、
わざわざ別の天使の絵まで描いてもらったファンなど他にいるだろうか。

さて、「屈指のコレクターの定義」というものを考えてみよう。
考えてみようとは言ったものの、
人それぞれの趣味嗜好への定義付けは本当に難しい。
定義付けとまで行くのなら、

王道のカードをどれだけ持っているか?
もしくは準王道と言えるくらいのカードをどれだけ持っているか?


これを基準に考えてみる事にしよう。

・パワー9全部持っている?
・デュアルランド40枚持っている?
・《Bazaar of Baghdad》4枚持っている?
・《Mishra’s Workshop》4枚持っている?
・《Time Vault》1枚持っている?
・《Library of Alexandria》1枚持っている?

・・・うん、この質問書いているとあと100問くらい書かないとならない。
一言でまとめてしまおう。

・あなたはヴィンテージとレガシーのデッキを組む時にどんなデッキでも基本的に組めますか?

まず、これが第1問目、屈指のコレクター入門編。
書いている自分で理解しているけれども、
この質問の時点でプレイヤーの9割が「いいえ。」の回答になるはず。
でも、世界ランキングにランクインするようなコレクターにとって、
この質問は入門編でしかない。
(必須クラスのおおむねを所有、一部足りないものを一瞬で買える財力があるならばOK。)

屈指のコレクター=ヴィンテージ、レガシープレイヤー
と必ずイコールで結べるものでは無いにせよ、
屈指のコレクターを自称する人がこの程度を持っていなかったら、
本物の屈指のコレクターに笑われてしまうだろう。
ところで、第1問目で9割の人が脱落する質問を書くこらむって、
読む人がどれだけいるんだろう?

まずはこの課題をクリアできた人、
この時点でMTGコレクターの上位2万名以内にランクイン。
おめでとう。

一般的にパワー9、というより、
α、β、Unlimitedのレアは3セットの合計でそれぞれ約2万枚刷られたと言われている。
パワー9を1枚ずつ揃えると、
それだけでもコレクションのランキングで2万番以内になる。
とはいえ、
それぞれ約2万枚と言っても、
それは25年前の話。
この25年の時間でどれだけの枚数がこの世から失われたか。
1割か2割か、それともそれ以上か。
仮に2割として仮定すると、
先程の順位は1万6千番以内にランクアップする。

ここからさらにふるい落としをかけてみる第2問目。


P9


・あなたの持っているパワー9は黒枠ですか?

ここはα版のほうが希少価値高いでしょ?
と言う人が出るのもわかるのだが、
ひとまとめの黒枠という形をとりたい。
β版のように現在と同じカットが好きという人は一定量いる。
それにα版には欠点がある。
パワー9ではないが、
α版《Volcanic Island》が存在しないので、
デュアルランド40枚とパワー9を黒枠で綺麗に同セットで揃えられない。
そのためβ版をコレクションの主軸にする人もいる。
この2つの理由から、
どちらが優れているという判断はすべきではなく、
どちらも王道であると見るほうが適切だろう。

1問目の質問と2問目の質問が両方「はい。」と答えられる人は、
この時点で相当なレベルのコレクターと言える。
α版+β版のパワー9の合計枚数はそれぞれ約5000枚。
2割失われているとするなら約4000枚。
つまり、2つ目の質問で「はい。」の人は世界で4000番以内に入る。

さあ次の質問へ行こう、第3問目。

・あなたの持つ10種×4枚:計40枚のデュアルランドは英語黒枠ですか?

この質問で相当な数の脱落者が出るはず。
他言語の黒枠デュアルランドをコレクションしている人がいるが、
あくまで王道として見ると、
MTGの本家本元の英語版こそが王道である事は否定できないので、
他言語コレクターの方には申し訳ない。

この40枚は前述の通り、
α版の《Volcanic Island》が存在しない事で条件を満たせる人が激減する。
β版を用意するしかない。
そしてそれだけではない。
パワー9ならヴィンテージで1枚制限だが、
デュアルランドに1枚制限はかかっていない。
コレクションの際にもデュアルランドは4枚集める事から、
α版やβ版のデュアルランドを40枚集める事は、
黒枠パワー9を1枚ずつよりも難易度が高い。

これまた前述しているが、
α版、β版、Unlimitedのレアは3セットの合計でそれぞれ約2万枚。
α版、β版だけだと約5000枚。
4枚ずつ集めるとすると
均等に全員が集められたとしても、
約1250人にしか行きわたらない。
そもそも約1250人の人間にだけ行き渡らせる事が現実的ではないし、
α版の《Volcanic Island》が存在しないうえに、
これまた2割程度失われているとするなら、
これを揃えられる人は1000人未満にまで落ちる。

3つ目の質問でもまだ「はい。」と言える人なら、
もう屈指のコレクターと言えるのではないだろうか。
なにせもうこの3つの質問に「はい。」だけで、
世界ランキングで1000番位内に入るのだから。
MTGプレイヤーのアクティブユーザーの実数はわからない。
アクティブユーザーが10万人しかいなかったとしても、余裕で上位1%に入る。
上位1%という事は偏差値で言うと約73。
学力のランキングでこの偏差値だったらエリート。

ここからさらに絞り込んでみよう、第4問目。

・あなたの持っている黒枠英語のデュアルランド40枚と、
α版またはβ版のパワー9はNear Mintですか?
(状態が良くてもサインが入っていたらダメ。)


と聞くと1000番位内にいる人でも結構な数が脱落。
25年も前の品なので、状態の良いものはかなり少ない。
デュアルランドのようによく使われるカード40枚全てNear Mintは難しい。

それから、

・あなたはオールドスクールのデッキを再録カード抜きで組めますか?
(再録を認めるのはUnlimitedのみという条件。)


という質問も追加。
オールドスクールは《Chaos Orb》というヴィンテージでも禁止のカードが使えるうえに、
カードプールが古いカードに限定されている。
この限定された中では、
「ヴィンテージやレガシーではトーナメントカードにならないが、
 オールドスクールではトーナメントカードになる。」
というカードがある。
そのため、ヴィンテージやレガシーは組めても、
オールドスクールは無理という人は必ずいる。
こういった理由を含めてオールドスクールの構築は難易度が高い。

この5問目まで全て「はい。」の人はそろそろ世界で100番以内に入りそうだ。
これが上位0.1%に入るのであれば、偏差値にして約80。
学力のランキングでこの偏差値だったら超がつくエリート。

また、この5つまでの質問で脱落していたとしても、


Splendid Genesis & Fraternal Exaltation


・あなたは《Splendid Genesis》を持っていますか?
・あなたは《Fraternal Exaltation》を持っていますか?


という質問だけは「はい。」と言える人がいるかもしれない。

この2つは
Splendid Genesis》110枚
《Fraternal Exaltation》220枚
と言われている。
どちらも、MTG生みの親、リチャード・ガーフィールド夫妻とその友人、
そしてWotC社の社員に配られたとされている。
110枚、または220枚全てが流通する事は考えにくいので、
実際の流通枚数はどちらも十数枚~数十枚といったところだろう。
両方持っている人なんてそれほど多くない事は想像に難くない。
ここまでの他の質問が全て「いいえ。」でも、
この2枚を持っているだけで相当なコレクター。

質問者の方が
「※個人で入手できるレベルのカードでお願い致します。」
と言っているが、
この2つのカードは複数人が個人入手しているので、
(流通量が一桁ではなく二桁はあると予想出来る。)
ギリギリ個人が入手できるレベルと言えるだろう。
なお、

《Phoenix Heart》3枚(現在確認されている枚数)
《1996 World Champion》1枚
《Shichifukujin Dragon》1枚


の3つは個人が入手できるギリギリを完全に超えてしまっている。

この時点の7つの質問で「はい。」と全部答えられた人、
Cardshop Serraの店主お墨付きの最高クラスのコレクターと認めます。
でも、まだ質問は終わりません。

ここまで書いて、
サマーマジックは?
と思った人もいるかもしれない。
確かにあれは貴重なアイテムなのだけれども、
質問形式で書くのがとても難しい。

・あなたはサマーマジックのカードを最低1枚持っていますか?

ではちょっと質問が弱すぎるか。

・あなたはブルーハリケーンを持っていますか?

だといいラインだろうか。

・あなたはサマーのデュアルランドを持っていますか?

だと、個人で入手できるレベルを完全に超えてしまう。
ブルーハリケーンは
Splendid Genesis
《Fraternal Exaltation》
と並ぶ、コレクター垂涎のアイテムなので、
質問に加えてみても良いかもしれない。
そしてブルーハリケーンも複数枚の流通を確認出来ている。
サマーのレアカードについては、
一応全てのカードが存在するらしいが、
これだけ長くMTGの世界にいる自分でも、
目の前で全てを確認したことはない。
こういった流通の少なさから、
質問形式でサマーのレアを出すのは無理難題と判断。
実際のところはコモン1枚でも持っていれば大したものと言っていいと思うのだが。
ちなみに、
海外のオークションでサマーのコンプリートセットが出た事があるらしい。
落札者や落札金額などは不明。
面白そうだから1つだけ例外を設けてもいいかもしれない。

・ブルーハリケーンは持っていないがサマーの《Demonic Tutor》を所有している。

という例外。
サマーの《Demonic Tutor》だったらブルーハリケーンと同じレアリティなので、
発行枚数の期待値は変わらない。
サマーの《Demonic Tutor》はイラストの悪魔のおでこに描かれている逆五芒星が無いという仕様になっている。
おでこの逆五芒星が消えている《Demonic Tutor》はサマーのみ。
意外と知らない人が多そうなカード知識。
この《Demonic Tutor》も持っていたらすごいと言える1枚。

このへんでちょっと方向性を変えた質問も加えてみよう。

・あなたはGuru Land5種、最低でも1枚ずつ持っていますか?

基本土地の最高峰。
ここでもサマーは?という意見もあると思う。
イラスト、デザインの人気度を考慮すると、
コレクターズアイテムとしてGuruのほうに軍配が上がる。
オールドスクールやヴィンテージデッキが組めるけれども、
このGuru Landには手を出さなかったという人もいそうだ。
プロモーションカードも基本的には再録・・・というより第二刷が無いものばかりなので、
ある意味では再録禁止カードだ。
これも5種1枚ずつあるだけで今は結構なカード資産。
内容としては入門編の質問よりも楽だけれども、
コレクションの話題で、
基本土地に一切触れないのも面白くないと思ってこの質問。

ラスト、第10問目。

・あなたはα版、β版、Unlimitedのどれか1つ、
アラビアンナイト、アンティキティ、レジェンド、ザ・ダーク
の合計5セットのコンプリートセットを持っていますか?


これまたオールドスクールやヴィンテージを組める資産があっても、、
この5セットのコンプリートを持っていない人は多いはず。
屈指のコレクターという事を考えたら、
やはり初期のセットのコンプリートは持っていたいところ。

さて、全10問をまとめてみよう。

1:あなたはヴィンテージとレガシーのデッキを組む時にどんなデッキでも基本的に組めますか?

2:あなたの持っているパワー9は黒枠ですか?

3:あなたの持つ10種×4枚:計40枚のデュアルランドは英語黒枠ですか?

4:あなたの持っている黒枠英語のデュアルランド40枚と、
  α版またはβ版のパワー9はNear Mintですか?
 (状態が良くてもサインが入っていたらダメ。)

5:あなたはオールドスクールのデッキを再録カード抜きで組めますか?
 (再録を認めるのはUnlimitedのみという条件。)

6:あなたは《Splendid Genesis》を持っていますか?

7:あなたは《Fraternal Exaltation》を持っていますか?

8:あなたはブルーハリケーンを持っていますか?
またはサマーの《Demonic Tutor》を持っていますか?

9:あなたはGuru Land5種、最低でも1枚ずつ持っていますか?

10:あなたはα版、β版、Unlimitedのどれか1つ、
アラビアンナイト、アンティキティ、レジェンド、ザ・ダーク
の合計5セットのコンプリートセットを持っていますか?


全部に「はい。」と言える人いるのだろうか。
これを読んでいる人の中にいたら、
名乗りをあげてほしい程のコレクターだ。
全部「はい。」の人は、
おそらく上位0.00315%以内。
偏差値90という驚愕の数値。
この偏差値だと100万人中30人くらい。
10万人中だとたった3人。
ここまで行けばもう屈指という言葉の意味のままの順位。
(屈指:数多くの中から指を折って数えられる程に優れていること。)

最後に。
個人が入手できなくはないものの、
もう無理だろうと思うレベルの質問。
サマーのカード並みに入手が困難なものなので、
これも定義としては正しくないと思う。

・あなたはミドルエイジをコンプリートしていますか?

・あなたはエッジ・オブ・ザ・ワールドをコンプリートしていますか?

・あなたはα版、β版、Unlimitedのどれか1つ、
及びそれ以降すべてのセットのブースターパックをそれぞれ1つ以上持っていますか?


ミドルエイジとエッジ・オブ・ザ・ワールドなんて、
普通の人は知る事すらないほどのコレクターズアイテム。

参考:
ミドルエイジ(Middle Ages)1
ミドルエイジ(Middle Ages)2
ミドルエイジ(Middle Ages)3
エッジ・オブ・ザ・ワールド


最後の3問含め、
13問全て「はい。」と答えられる人はいるのだろうか。
いたとしたら偏差値100くらいになりそうだ。
偏差値100=上位0.00002%。
この数値は200万人に1人。

質問者の方は全て「はい。」と言える方だったかどうかわかりませんが、
この王道コレクション10問(13問?)でいかがでしょう。
あ、最後に、
偏差値の数字や世界ランキングはあくまで、
「このくらいのカード資産だったら、
 このくらいの数字ありそうだなぁ。」
という想像を書いただけなので、
完全には参考にならないと思います。
書いてある通り、
アクティブユーザーの実数がつかめないので、
想像の範囲を超えられないのです。
ご了承下さい。

以上、店主の独断と偏見による屈指のコレクターの条件でした。

ではまた。



記事作成日:2018/07/27



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