マジックと投資その2

この世界に足を踏み入れてもう20年の時間が経った。
「足を突っ込んだ」
だとか
「首を突っ込んだ」
などという表現では済まされない程長い時間だ。
頭のてっぺんから足のつま先まで、
完全にどっぷりである。
人からは、
「1日のうち25時間はMTGのことを考えている。」
と言われた事もある。
そんなCardshop Serraの店主が前回のこらむに引き続き、
このカードゲームの世界における投資についてお話をしてみたい。

長く、そして多くのお客様、プレイヤーの方々と接してくると、
色々なMTGに対する接し方を見る事が出来た。
人それぞれの経済力、価値観、知能、癖によって、
その接し方はまさに千差万別、十人十色だった。
千差万別、十人十色とは言っても、
この世の中を支配しているものは資本主義というものである以上、
最終的にはある程度はお金がものを言う世界である。
当たり前の話なのだが、
1円のお金も一切の労力もかけないでMTGをしている人はいない。
人それぞれのお金のかけ方というものがあるだろうから、
店主もわざわざ価値観を押し付けようとも思わないが、
これだけこの世界に長くいると、
多くの方々の様々なお金のかけ方を見る事が出来る。

その中でも最ももったいないお金のかけ方だろうと思ったものがあった。
その人はこんな話をしていた。
仮にこの人の名前をA君としてこう。

「モダンの時期終わったし、
 モダンパーツ売り払ってそろそろスタンやるかー。」

他の会話内容からも、
グランプリやプロツアーなどの時期に合わせて、
自分の手持ちを売り払っては新しいカードを購入。
当然売り払うカードだけでは足りないので自腹を切る。
長年ずっとこんなスタイルでMTGをやっているようだった。
このやり方にはデメリットしかない。

まず、実力の面で、
自分でカードをしっかりと持っていないと実力がつかない。
借りて遊んでいるだけの人で実力者になれるのは稀である。
自分のカードを持ち、試行錯誤を重ねて、
はじめて実力がつくこの世界において、
「時期が過ぎたから手放す。」
などという行為は愚かとしか言いようが無い。
強くなれるわけがないのである。

経済的にはもっとマイナスである。
このカードゲームは以前のこらむでも書いている通り、
「遊べる株券」
というあだ名もあるほどに現金化が可能な一面がある。
この点については、
制作会社であるWizards of the Coastが、
ユーザーの資産について一定量考えてくれているため、
古参プレイヤーが安心してMTGを続けられる環境にある。

絶対に上がり続ける株は存在しない事と同様に、
MTGの世界も絶対は無いだろう。
とは言うものの、
ある一定の資産を持ち続ける事はとても大切である。
多くの人は限られたお金しかないのだから、
そのお金を工夫して使わなければいけない。
MTGのカードは100円のカードが2000円になる事もあるが、
必ずしも自分の持っているカードが高騰するとは限らない。
特にこの話に出てきているA君のようなプレイスタイルでは、
基本的にはトーナメントカードを追いかけている事になる。
トーナメントカード=需要が高いカードであり、
そういったカードは価格もそれなりであり、
価格は上にも下にも動く。
トーナメントの時期によって売り買いをしている人は、
おおむね「高値掴み」をして損をしている。

競技に出る事はもちろん悪い事ではない。
グランプリやプロツアーも確かに良い。
だが、
そうして競技志向を重視するがために、
大切なものを見落としてしまう事は多い。
上記のように競技を追いかけるあまり、
カードをどんどん売り払ってしまう行為は、
「お腹を空かせたタコが、自分の足を食べてしまう。」
と形容すべき行為である。

・カードを売り払って、別のカードの高値掴み。
・カードを売り払って、グランプリに出場。
・カードを売り払って、交通費にあてる。


これらは行動としてはかなりもったいない。
そしてこういう行動をする中にはこういう事を言う人がいる。

「思い出はプライスレス。」

思い出に値段はつけられない。
ああ、とても素晴らしい言葉だ。
ただし、これを言う人が資産家であるのなら、だが。
往々にしてこの言葉は貧困層の人ほうが言う事が多い。
世の中の富裕層の数よりも貧困層の数のほうが多いのだから、
当然と言えば当然なのだが。

貧困層「思い出はプライスレス。」

富裕層「思い出はプライスレス。」

同じ言葉でも立場が違えば、意味も変わってくる。
資産を持たない人が言えば、ただの負け惜しみとも解釈出来る。
資産を持つ人が言えば、言葉のままに解釈される。

同じ言葉を言うにしても、
資産に余裕がある状態で言いたい。

貧富の差というものは、生まれた時からの差も確かにある。
二十歳を超えても毎月平均1000万円以上のお小遣いをママンからもらっていた政治屋もいる。
とても不平等だとは思うが、
それでも貧困になる理由は必ず自分にもある。
逆に富裕となれるチャンスもある。
それらは全て日々の積み重ねだ。
この日々の積み重ねの大切さがわからず、
色々な形で幸せを逃した人を随分と見てきた。

間違っても、
「お腹を空かせたタコが、自分の足を食べてしまう。」
と形容すべき行為は避けねばいけない。
今そうしてしまっているならこれ以上重ねるべきではない。

チャンスというものは自分で掴みとるべき時というものがある。
自身の経験している一例を挙げてみよう。

Mishra's Workshop
店主は《Mishra’s Workshop》を4000円程で買っている。
8枚とも。
何故8枚?と思う人もいるだろう。
簡単である。
保存用:4枚
デッキ用:4枚
で合計8枚。
MTG歴が浅い頃から「保存用」などと考える人は珍しいかもしれない。
少なくとも自分の周囲にはそんな人は自分だけだった。
4000円×8枚=32000円。
今ではこの32000円で《Mishra’s Workshop》を1枚買う事も出来ない。

10年以上も前の自分はこう考えていた。
「自分はMTGを長く続けたいし、強くなりたい。
 ではそうするために何をしなければならないか?
 それは昔のカードも今のカードも知り、
 それらを持つ人にならなければならない。
 今、自分の財力では厳しいけれど、
 頑張って昔のカードを買おう。
 いつか、何年先かわからないけれど、
 自分がそうやって買った昔のカードが高騰する日が来るはずだ。」
と。
今、《Mishra’s Workshop》はかなりの金額になっている。
もう《Mishra’s Workshop》を4000円どころか、
10倍の40000円で買える日さえ来ないのではないか。
この話をお客様や友人にすると、
「もっと早くMTG始めていれば!」
「過去に戻れるなら《Mishra’s Workshop》や《Black Lotus》買いまくるのに。」
「何故俺は○年前に○○を買わなかったんだ!当時の俺の馬鹿!」
「EDHなどの古いカードを使った遊び方がこんなに流行ると思わなかった。
 買っておけば良かった。」
といった言葉をよく聞く。
誰もが一度は思う事だろうが、
それでも残念ながらタイムマシンは存在していない。
過去に戻る方法は無いのだ。
過ぎ去った時間についてはもうどうしようもない。
これからを考える事が大切だ。

Mishra’s Workshop》のように、
高くなってしまったカードはなかなか下がってこない事が多い。
下がらないものをただ指をくわえて待っているわけには行かないのも事実。
欲しいのであれば、必要であれば、
それはどこかで買う1枚となる。
そして買うならその品の将来性を見据え、
手放さないくらいの気持ちでの購入も大切である。
(手放してはいけないとは言っていない。)
グランプリに出るなとは言わない。
スタンダードをやるなとも言わない。
けれども、何が無駄で何が無駄でないのか、
それはよくよく考えて限られたお金と時間を使うべきである。

つまりは、
「今欲しいカードを買うよりも、
 よく考えて長く長く使いそうなカードを買う事」
が大切なのである。

ではまた。



記事作成日:2018/06/21