The Tabernacle at Pendrell Vale
記事作成日:2018/06/30 執筆:加藤英宝
今回のお題は、お客様のリクエストこらむ。
《The Tabernacle at Pendrell Vale》。
名前が読みにくい事と、
カード名がそこそこに長いので、
日本では「長い名前の土地」という変なあだ名をつけられている。
この呼び名も十分長いと思うのは店主だけだろうか。
《The Tabernacle at Pendrell Vale》
伝説の土地
すべてのクリーチャーは
「あなたのアップキープの開始時に、あなたが(1)を支払わないかぎり、
このクリーチャーを破壊する。」
を持つ。
レア
ただでさえ近年のプレイヤーは英語版が読めない人が増えていると聞くので、
「長い名前の土地」という名は今後も定着しそうな感じだが、
一応このカードはカタカナ発音すると、
「ザ・タバーナコー・アット・ペンドレル・ヴェイル」
と発音するらしい。
なんとなく「タバーナクル」と発音しそうな感じなのだが、
英語が出来る人に聞いてみたら、
「タバーナコー」と発音するほうが正しいんだとか。
だいたいの日本人は「タバーナクル」と呼んでしまうはず。
2018年6月の時点でのこのカード、
NMクラスでだいたい30万円超え。
このカードの値段についてとレガシーのデッキについて語るのも悪くはないものの、
それは既にそこらじゅうで語られていそうなので、
Cardshop Serraのこらむではちょっと違った角度でお話を。
まず、レジェンドのセットの事から。
レジェンドとは、
1994年6月10日発売。
コモン:75種
アンコモン:114種
レア:121種
全310種の構成。
2018年のセットであるドミナリアは
基本土地:5種、
コモン:105種
アンコモン:82種
レア:56種
神話レア:17種
全265種の構成。
これだと少し参考になりにくいので、
FOILも神話レアもない大型最後のセットであるウルザズ・サーガも参照。
基本土地:5種
コモン:110種
アンコモン:110種
レア110種
全335種の構成。
ドミナリア:260種(基本土地を除外。)でレア56種+神話レア17種=73種。
サーガ:330種(基本土地を除外。)レア110種。
レジェンド:310種(基本土地はセットに無し。)レア121種。
おわかりかと思うのだが、
レジェンドはこのように、
セットで見てもレアが妙に多い。
単純に1パックから狙ったレア1種を引ける確率が他よりも低い。
さらに発行数も昔のほうが当然少ないうえに、
発売が1994年の6月という事は、
今から24年も前ときたら、
そもそも未開封パックの数も限られてくる。
こんな状況から狙った1枚のレアを引くというのはかなり無謀だ。
さて、いくつか数字ばかりを書いてみよう。
出現率
1/121=0.82644628099174%
これが平均的にレジェンドに入っているレアの確率として、
《The Tabernacle at Pendrell Vale》のみを狙って引く場合を計算。
確率計算としては、
「1枚以上引ける確率。」
を計算。
小数点第三位以下は切り捨てで表示。
36パック(1箱)
引ける確率:25.825%
72パック(2箱)
引ける確率:44.980%
108パック(3箱)
引ける確率:59.189%
121パック(レア種類数)
引ける確率:63.363%
確率という関係上、121パック開封したとしても、
3割以上の確率で《The Tabernacle at Pendrell Vale》を引くことができない。
そもそも2018年の今、
レジェンドを1人で121パック開封する人は何人いるのだろうか。
144パック(4箱)
引ける確率:69.728%
180パック(5箱)
引ける確率:77.546%
5箱開けても90%にならない恐怖。
もう少し計算してみよう。
216パック(6箱)
引ける確率:83.345%
252パック(7箱)
引ける確率:87.646%
288パック(8箱)
引ける確率:90.836%
324パック(9箱)
引ける確率:93.203%
360パック(10箱)
引ける確率:94.958%
8箱まで行くと9割方引ける。
逆に、確率だけで言えば、これだけ引いたとしても、
《The Tabernacle at Pendrell Vale》を引けないことはありうる。
実際には、これだけ開けて出ないカードがあれば
販売当時に封入率に偏りがあるのではないかと騒ぎになっていると思われる。
パックの封入エラーは時折起こるため、起こりえないとは言えないが。
そしてレジェンドは、
現在、1パック5万円くらい。
(国内在庫無し、海外オークション価格参考。
海外の場合は送料と関税もかかる事も考慮。)
つまり10箱開封するためには1800万円くらい必要。
1800万円もあったら場所にもよるが、田舎の家と土地がセットで買える。
車で言うと最高級ベンツを新車で買えるくらい。
こういう視点で考えても、
レジェンド10箱をストレートにキャッシュで買える人は少ない。
そもそも10箱何処にあるんだろう。
箱で売っている事さえ少ないので、
2箱以上を揃える事が一般人には現実的ではない。
少し安い、イタリア語のレジェンドでも探すのは困難だ。
一昔前まではちょいと頑張れば箱くらいならなんとか買えたのだが。
それでも一昔前で英語版1箱30万円くらい。
今は英語版1箱180万。
随分と上がったものだ。
さすがにブースターパックから引く事が無謀なだけに、
こういうカードは諦めてシングルで買うほうが現実的だ。
昨今よく話題になる各種スマホゲームについても、
こういった確率の話が出てくる。
1パックも1ガチャもこういう点は同じ。
さすがに1ガチャ5万円という事は無いものの、
確率というやつはこんなものなので、
課金をする人は気をつけよう。
《The Tabernacle at Pendrell Vale》は、
使えるレギュレーションが、
オールドスクール
ヴィンテージ
EDH
レガシー
の4つくらい。
オールドスクールとヴィンテージはともかく、
EDHやレガシーでは単品1枚のカード価格では現状トップ。
EDHならほぼ並ぶ程度に《Timetwister》がある程度。
なんにしても一般的なプレイヤーがほいほいと買える状況にないのはよくわかる。
どっちのレギュレーションでも4枚必要にはならないだけマシと言ったところか。
それでもコレクターというやつは4枚集めたがるものだが。
もっとも主戦場と言えるのはレガシー。
ヴィンテージではほぼ見ない。
EDHでは置く人も見たし、使った事もある。
が、やはり高額過ぎて持っていない人がとても多い。
EDHで使うと相当な人が困ってくれる楽しいカードなのだが。
特に禁止にして欲しいジェネラルランキング上位にいそうな、
《トレストの密偵長、エドリック/Edric, Spymaster of Trest》にはいい感じに刺さる。
あと《群衆の親分、クレンコ/Krenko, Mob Boss》にも。
言うまでもないとは思うが、
このカードは当然のごとく再録禁止リストのカードだ。
《ペンドレルの霧/Pendrell Mists》
《幕屋の大魔術師/Magus of the Tabernacle》
というリメイクが行われているが、
オリジナルとは比べ物にならない。
今後もリメイクのようなカードが出ても不思議は無いカードではあるが、
このカードに勝るとも劣らないカードが出る事は無さそうだ。
それにしても、
《Timetwister》といい、このカードといい、
10年前には想像もつかないお値段になってしまった。
ついでに言うと、
オールドスクールという遊び方は今から10年程前に作られたのだそうだ。
この遊び方を知ったのは4~5年前だったと思うが、
こういう遊び方を知った時も衝撃的だった。
MTGの世界はこれからどんな風に変わっていくのだろう。
値段も遊び方もこの先10年でまた変化していくはず。
オールドスクール
ヴィンテージ
EDH
レガシー
の4つ以外に古いカードを使った遊び方が1つくらいは出て来そうだ。
《The Tabernacle at Pendrell Vale》に限らない話だが、
レガシー、ヴィンテージクラスのカード達は、
「今日が最安値。」
である事が多いのだ。
そして新しい遊び方が確立されれば、
当然また需要も変わる。
MTGを一生の趣味にと思えたなら、
どこかでの決断は必要だと思う。
これはショップの店主だから、営業だからで言うのではない。
MTGを骨の髄まで楽しむためには、
多種多様のカードに触れる事は絶対条件だからだ。
強いカード達には、
それを持った人にしかわからない事が沢山ある。
それは所有して経験して欲しい。
「そんな事を言われても買えないものは買えない!」
と言う人が多いのもわかる。
けれども、
お金で済ませられる経験ならしておくのも1つの選択。
いつかお金で済ませられない日が来るか、
経験するチャンスを完全に失う日が来る事もある。
その時に、タイムマシンを欲しがるくらいなら、
お金で済ましてしまうのも1つだと認識しておいても損はないと店主は考えている。
少なくとも我々が生きている間にタイムマシンが開発される事はないだろう。
個人的には一生の間に、
机の引き出しから青い猫ロボが出てくる事に大期待しているのだが。
ではまた。