エターナルへの新規参入について。
記事作成日:2018/02/18 執筆:加藤英宝
ツイッター質問箱でこのような質問をいただいた。
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年々、デュアランなどが値上がっていってるので
エターナルの新規参入が難しくなってると思います。
既にアンシーやボルカは1枚で諭吉数人の現状ですし、
デュアラン集めるだけで数十万とかになると
やはりやりたい!とは思えないと自分は考えてます
(まあ、それがエターナルと言われるとどうしようもないのですが)
ただこれから数年、数十年と渡ってMTGを続けるには
大きな問題になってると思います。
再録禁止リストは重要だと思うのですが、
この値上がりに対する新規参入が見込めない状況にどう思いますか?
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回答の文字制限たった100文字では、
さすがに書ききれないものだったので、
こらむで回答する事に。
「エターナル」という区分がされている、
レガシーやヴィンテージのカードは、
ここ何年かで随分と値上がりしている。
オールドスクールという誰がやっているのかすらわからない、
公式でもないフォーマットの影響もあるのか、
「え?こんなカードがこんなに高いの?」
という事もしばしば見られる。
レガシー、ヴィンテージ、オールドスクール、
どれもおおむね、
「札束で殴り合うゲーム」
というほどの世界になっている。
ヴィンテージの大会で参加者8名にも関わらず、
「うん、テーブルの上に多分500万円くらい置いてあるな。」
なんて光景は別段おかしな状況ではなくなってきている。
確かにこれでは新規参入は難しいという人の気持ちがよくわかる。
しかし、レガシークラスのMTGの世界というやつは、
それでもかなり伸びている。
むしろCardshop Serraの大会ではスタンダードよりも人が来る。
この理由は何か?
それは案外シンプル。
まず、
スタンダードがつまらないし、追いつけない。
(誤解しないで欲しいが周囲の多くのプレイヤーの言葉であり、
店主一人の意見ではない。)
もうこれは如実にわかる。
2015~2017年くらいの新セットカードはハズレが多かった。
まがりなりにもカード屋なんぞをやっているとよくわかる。
シングルカードの売れ行きや価格がひどい。
そのセットのトップレアが国内最安なのに、
全然売れないなんて事もあった。
刷らなくても誰も文句も言わないのに、
わざわざ反感を買うような両面だとか合体だとか、
寝言みたいなシステムを作ったりした事も原因の1つだろう。
スタンダードが面白くないと言う人が増えるのも致し方ない。
次に、
プレイヤーの年齢層。
店主は人生半分MTGに突っ込んでいて、
一般人にMTG歴を言うだけでも「へ?」と言われるくらいの歴だ。
自分でも思う。
よくも飽きずにこれだけ続けていられるものだと。
なにせ自分のDCIナンバーは6桁だ。
そんな桁数の頃からやっている人って案外いない。
(Cardshop Serraのスタッフの野郎どもは自分以外に二人6桁がいるが。)
台湾でドラフトのエントリーの時にDCIナンバー書いたら
「6桁?!」
と驚かれた事がある。
ちょっと話がそれてしまったが、
何が言いたいかというと、
プレイヤーのMTG歴が相当な数字になってきているという事は、
・収入面は安定してきたが、時間がない。
・スタンダードやろうとすると時間が無いので、
デッキをいじる時間を作れないまま、
いつの間にかスタンダード落ちしてしまう。
という2つの事が多くのプレイヤーに発生してくる。
スタンダード落ちで一気に値段が落ちるくらいなら、
最初からレガシー、ヴィンテージの高額カードを買ったほうがマシ!
と考える人は当然のように出てくる。
そこで引退になってしまう人もいるのは事実だが、
やめない人は
「よし、スタンダード落ちとか気にする必要がないから、
EDHかレガシーやろう!」
となる人に段々となっていく。
EDHは基本的にはどんなカードでも1枚あればOKだが、
レガシー、ヴィンテージとなるとそうもいかない。
オールドスクールはさらにぶっとんだ世界だ。
しかし、
時間は無くとも収入の安定したMTGプレイヤーは、
「おう、どうせ値段下がらないんだろ?
たまにしかMTGで遊べねえんだ。
高い?上等だ!買って遊ぶぜ!
それでもMTGやめたくねえんだよ!」
と高いカードへの購入を決断する。
(高いカードを売る時も買う時もCardshop Serraを強く推薦する!)
希少なカードに需要が集まれば、
当然のごとく値段は上がってしまうが、
それでもやっぱりみんなMTG大好きなのだ。
加えて大切なコミュニケーションツールだ。
やめたいわけがない。
それに、高額カードを購入する人たちの大半は、
前述の通り、
「値段下がらないんだろ?」
と思っている。
これが案外大事。
間違って再録されて値段(資産)が下がる事があったら困るわけだ。
再録禁止リストはそういう意味でもとても重要だ。
MTGでない某TCGをやっていたプレイヤーが引退した時に、
こんな事を言っていた。
「あのカードゲームはダメだ。
新セットが出るたびに上位互換が出たり、
トーナメント環境トップのレアがコモンになったり、
構築済みデッキに入ったりして、
資産がぼろぼろになる。
ルールもわからない時があるし、
禁止やルール変更も無茶苦茶でついていけない。」
と。
ま、なんという名前のカードゲームかはここじゃ挙げないが、
よく自社コンテンツを自らの手で滅ぼす事で有名な会社の、
とてもとてもよく売れたお遊戯、とだけ言っておこうか。
MTGはいくらなんでもこの会社と同じ事はしないと信じている。
MTGを長くプレイする人にとって、
特にレガシー、ヴィンテージをプレイする人にとって、
「いざという時にお金にかえられる紙」
である事はとても重要だ。
この、いざという時にお金にかえられる資産が、
「再録で値段崩壊」
なんて事があったら、
とてもじゃないがMTGを続けていられないと思う人も多い。
いかにレガシーやヴィンテージに新規参入が難しいと言えども、
プレイヤーの年齢層と時間と収入を考えると、
結構仕方のないものでもある。
この業界も高齢化社会になっていくのである。
この質問をしてくれた方は、
なかなかこのレガシーやヴィンテージに踏み込めない気持ちなのだと思う。
しかし、考えてもみてほしい。
「いざという時にお金にかえられる紙」
の偉大さを。
この世の色々な娯楽をいくつか挙げて比べてみてほしい。
電源系ゲーム、スマホゲーム、映画鑑賞、ライブ、釣り、
ギャンブル、風俗、車、テーマパーク、旅行、スポーツなどなど。
別に、
これらのどれにお金をかける事も店主は一切否定はしない。
否定はしないが、
「遊びながらも、いざという時にお金にかえられる娯楽」
という娯楽なんてそんなに簡単に転がっていない。
電源系のゲームはゲーム機もソフトを買取に出せばひどく低い数字で買い叩かれる。
スマホゲームはIDを売る事も出来るが課金した分を取り戻す事は出来ないし、
ゲームソフトやゲーム機を買取に出すよりも安い金額でしかIDは売れないだろう。
車は時々レアなものを持っていれば話は別だが、それはレアケース。
ギャンブルは胴元が勝つのが基本だし、
風俗、テーマパーク、旅行、ライブ、映画鑑賞については、
お金は掛け捨てだ。
レガシー、ヴィンテージへの参入はそうやって考えてみると、
それほどリスクの高い遊びでもない。
「いざという時にお金にかえられる」
とわかって手を出せるのだから、
下手な娯楽よりよほど安全という見方はあると思っている。
少なくとも大半の娯楽はお金が戻ってこないのだから。
そのため、
新規参入が困難という気持ちはわかるものの、
これは考え方次第、と言っても良いのではないかと。
そして、質問してくれた方へ。
質問内で、
「これから数年、数十年と渡ってMTGを続けるには」
という一言。
ここ。
数年、数十年とMTGを続ける・・・
という事は、
今、貴方が持っているカードのどれかは、
数年か数十年した時に今の数倍の値になっているかもしれない。
そして、数年か数十年した時の貴方ではない誰かが、
その高騰化したカードと環境に向かって、
「値上がりに対する新規参入が見込めない状況」
と言う日が来てもおかしくない。
数年、数十年後を見越す気持ちのある人ならば、
レガシー、ヴィンテージへの参入に向かって、
店主は背中を押してあげたい。
勝手な気持ちではあるのだが、
レガシー、ヴィンテージ、EDHで、
新しいカードも古いカードも使って遊ぶ事こそ、
MTGの真の楽しみを知る事に繋がる。
スタンダードやモダンだけで止まっている人達、
是非とも太古のカードの世界へ飛び込んでみよう。
ではまた。