Bojuka Bog/ボジューカの沼
記事作成日:2017/08/11 執筆:加藤英宝
今回のこらむは、
EDHにおける《ボジューカの沼/Bojuka Bog》のお話。
《Bojuka Bog/ボジューカの沼》
土地
ボジューカの沼はタップ状態で戦場に出る。
ボジューカの沼が戦場に出たとき、プレイヤー1人を対象とする。
そのプレイヤーの墓地にあるすべてのカードを追放する。
(T):あなたのマナ・プールに(黒)を加える。
コモン
ワールドウェイクのコモンにして、
カウンターなどまず出来ない墓地追放カード。
コモンとは思えないほどの威力だ。
このお話は、
スタッフSとの間で何度か出た話題だった。
スタッフSは
《ボジューカの沼》が嫌い。
店主は
《ボジューカの沼》が好き。
この違いは何なのか。
Sは
「タップインする土地は遅れをとるからダメ。」
と言う。
ごもっともである。
しかし店主はそれでも《ボジューカの沼》を推す。
少々お話が遠回りになってしまうが、
ゆっくりと読んでもらえるとありがたい。
EDHという遊び方が確立されてから、
もう10年の時間は経過している。
最初の頃と今では随分とデッキの組み方も変わってきた。
特に昨今は速度重視のデッキを作る人が増えている。
この速度のお話は色々な考え方もあるとは思う。
その中の一例をとってお話をしたい。
4人全員が速度重視のデッキを構築して戦いに臨んだとしよう。
あなたはその内の1人だ。
2ターン目。
どんな状況になっているかは詳しくは書かないが、
自分の手札には
・2マナのマナアーティファクト
・2マナで撃てるカウンター呪文
の両方があったとする。
さて、
1:マナアーティファクトをプレイする。
2:カウンターを構えてターン終了。
どちらが正しいか。
100%正しい選択というものはハッキリ言ってしまえば無い。
どちらが正しいかはこの際は話題とは関係がない。
こういう状況はありえるよ、というだけだ。
この状況のような時、
カウンターを構える人はマナアーティファクトを展開しないので、
遅れに繋がる可能性はある。
しかし、カウンターを構えた人からジェネラルをカウンターされた人がいたら、
その人は当然追加2マナからジェネラル唱え直しになるので、
これも遅れる。
ではそこで残り二人のどちらかが漁夫の利を得て勝ちに行けるか。
4人全員がそれなりにしっかりしたデッキを組んでいるなら、
これも簡単に事が進むお話でもないだろう。
何が言いたいのかと言えば、
速度重視のデッキをこうして組んでいる4人だったとしても、
スタートダッシュをくじかれる、
または他者のスタートダッシュをくじくと、
全体的に戦いそのものが1~2ターン、
時には5ターン以上長引く事は珍しくない。
こういった序盤では《ボジューカの沼》のタップインは確かに強いとは言えない。
しかし、少しでも長引いた時に大いに変化する。
この少し長引いた時には、
当然の事ながらタップイン土地の遅れは緩和されていく。
強いデッキだから必ずそうだとは言えないものの、
強いデッキで墓地を活用するデッキは多い。
《生き埋め/Buried Alive》
《納墓/Entomb》
《Bazaar of Baghdad》
《永遠の証人/Eternal Witness》
《Timetwister》
《時のらせん/Time Spiral》
《宝船の巡航/Treasure Cruise》
《時を越えた探索/Dig Through Time》
《ヨーグモスの意志/Yawgmoth’s Will》
《動く死体/Animate Dead》等の俗に言う釣り竿カード。
キーワード能力:発掘
こういったカードの一部は、
そこから死に直結するようなカードがある。
ジェネラルでも墓地を活用する強ジェネラルはいくつもある。
代表的なところでは、
《ギトラグの怪物/The Gitrog Monster》
《擬態の原形質/The Mimeoplasm》
あたりがわかりやすいだろうか。
《ボジューカの沼》はこういったカードへの単純回答である。
墓地活用をするデッキに対して、
《ボジューカの沼》は、
・特定のカード以外ではカウンターされない。
・タップインとはいえマナが出せるカードでもある。
・対象1人の墓地の全てのカードを追放。
という、とても軽視出来ないだけの力がある。
他のカード、わかりやすいところでは、
《トーモッドの墓所/Tormod’s Crypt》
がシンプルに比べやすい。
このカードは単純に置いておけはいつでも1人の墓地を消せる強みがある。
しかし、墓地を全て追放出来るとはいえ、
単純なアドバンテージでは1枚損になる。
《ボジューカの沼》では1枚損は起きない。
《ハルマゲドン/Armageddon》や
土地を生け贄に捧げる手段から、
《世界のるつぼ/Crucible of Worlds》
《ラムナプの採掘者/Ramunap Excavator》
で再度セットランドするという事もありえる。
さらには土地である事というのは
メリットでありデメリットにもなる。
土地は1ターンに基本的には1枚しかセット出来ない事が、
ひっかかってしまう事はある。
反面、
《悪魔の教示者/Demonic Tutor》
《輪作/Crop Rotation》
あたりのコストの軽いカードで持ってきて、
瞬時に相手の墓地を潰すというアクションでは、
土地をセットするだけで、
・タップインとはいえ次ターンへの遅れはない。
・墓地を消されたプレイヤーは勝ちへの遅れに繋がる。
(状況次第では致命的になる。)
という状況になる。
ここで4人で対戦した時を想定してみよう。
墓地を活用しようとした人を、
《ボジューカの沼》で潰した。
するとどうなるか。
墓地のカードを追放された人:一番遅れて不利になる。
《ボジューカの沼》を置いた人:そのターンは動けなくとも次ターンへの遅れは無し。
残り二人:少し有利になったかもしれない。
おおむねこんな構図になる。
逆に考えると、
墓地を追放出来なかった場合、
活用しようとした人が好き放題にやって全員を倒す事も考えられる。
それをタップインランド1枚で対処可能で、
そのカードは土地であるため無駄なカードになるケースは薄い。
タップインは確かに遅れとして痛くないと言えば嘘になるが、
対処出来ないよりは良いと考えるほうが正しいのではないだろうか。
墓地対策で似たカードしては、
《フェアリーの忌み者/Faerie Macabre》
というカードがある。
能力の起動はマナコスト0で、
こちらは2枚だけ追放とはいえインスタントで使える。
しかし、
この《フェアリーの忌み者》も前述の《トーモッドの墓所》も、
基本的にはアドバンテージで1枚損だ。
そしてどちらも、
「墓地を消す役割」
しか持てない。
EDHで《フェアリーの忌み者》を通常プレイする人は少ないだろう。
多くの人が手札に構えて使えるタイミングを虎視眈々と待つはずだ。
この観点からも、
「墓地を消しても意味は無い状況であろうと、
諦めてセットランドしてしまえば次ターンからはマナが出せる。」
と言えるだけ《ボジューカの沼》は優秀だ。
特にデッキ内で無駄になるかどうかの順位付けでは、
(対戦相手に墓地活用者が0の場合)
《ボジューカの沼》>《フェアリーの忌み者》>《トーモッドの墓所》
という順位付けで最も《ボジューカの沼》が無駄にならない。
(他の墓地対策カードはおおむね《フェアリーの忌み者》と並ぶ。)
無駄になりにくい墓地対策では、
《大祖始の遺産/Relic of Progenitus》
《ファイレクシアの炉/Phyrexian Furnace》
《ひっかき爪/Scrabbling Claws》
などが代表的。
これらはダメならドローに変換するタイプなので、
これも使いやすさとしては悪くはない。
が、ダメならただのタップイン土地のほうが、
安定力は高い。
それから、忘れてはいけない事というべきか、
書いておきたい事がもう1つ。
それは追加ターンカード+《Timetwister》などのライブラリー回復カード。
この組み合わせは非常に厄介だ。
うまく回り始めるとその人のターンで止まらないままゲームが終わる。
ライブラリーに戻って再度追加ターンは非常にやられたくないものだ。
出来る事なら未然に防ぎたい。
デッキによっては墓地にある《Timetwister》をライブラリーに戻す事まで考えている。
こういったカードの組み合わせは潰す価値が十分な程にある。
墓地に追加ターン、ドロー、カウンターが数枚あったら、
もう追放したほうが無難というものだ。
こうして考えてみると、
《ボジューカの沼》は
「思考停止してデッキに入れない」
「タップインの弱いカード」
と言えるカードではない。
むしろ積極的に採用すべき1枚とさえ言える。
考え方を少々変えてみるくらいでいいのである。
「墓地が消せてもタップインする黒マナしか出せない土地。」
「初手から数ターンの間に土地が足りない時に引くと遅れる。」
と考えてしまうから弱く見えてしまうのである。
極論で言えば、
土地だと思ってデッキに入れなければいいのである。
土地だと思わなければ、
「0マナで墓地を追放出来てカウンターもほぼされないで、
次のターンからは黒マナを出せるカード。」
という事になる。
このように前向きに考える方が良い。
確かに土地として見た場合にタップインは強くない。
しかし、その点を受け入れた上で、
多種多様の墓地活用が横行するEDHで、
墓地対策0というリスクを負うくらいなら1枚採用する意味は大きい。
特にチューター系を使用した際は重要。
黒ならば必ず入れておけ!
と言われる《悪魔の教示者/Demonic Tutor》を撃った際の選択肢に、
これがあると無いとでは相当な違いがある。
何らかの状況に対応しようと《悪魔の教示者/Demonic Tutor》を使用して、
その後に持ってきたカードを手札からプレイする時、
多くのカードはそのマナコストを要求される。
《悪魔の教示者/Demonic Tutor》で《ボジューカの沼》を持ってきた時、
《ボジューカの沼》はそのターンに土地セットをしていなければ、
コスト0のソーサリーみたいなものである。
《悪魔の教示者/Demonic Tutor》後でこのアクションはとても軽い。
デッキ99枚で構築する際に、
その1枚が完全に邪魔になってしょうがないという事よりも、
いざという時にチューター系で持ってきて、
墓地へ対策の出来るコスト0のカードが土地であるという事は、
(マナが出せる、カウンターされにくい。)
タップインを差し引いても強みではないだろうか。
保険として1枚入れておくカードとして、
十分な仕事量と店主は判断している。
速度重視で墓地対策0で座して死を待つくらいなら、
タップインの遅れがあろうとも、
墓地への対策がある対応重視のほうを選びたい。
とはいえ、
環境や価値観で多くの人の判断が分かれるところでもあるだろう。
このこらむを読んでこの1枚の採用不採用について、
少しでも参考になれば幸いである。
ではまた。