Illicit Auction/無道の競り

今回のお題は《無道の競り/Illicit Auction》というカード。
Illicit Auction
Illicit Auction/無道の競り
コスト:3赤赤
ソーサリー
クリーチャー1体を対象とする。各プレイヤーは、
そのコントロールを得るためにライフで競りを行ってもよい。
あなたは、点数付けを0として競りを始める。ターンの順序に従い、
各プレイヤーは最高点数を超える点数をつけてもよい。
最高点数が動かなくなった場合、競りは終了する。
最大の点数をつけたプレイヤーは、その点数に等しい点数のライフを失うとともに、
そのクリーチャーのコントロールを得る。(この効果は永続する。)
レア

ザ・人身売買。
人権を無視して問答無用で生物を競売にかける不思議なカード。
購入者の生命で競売を行うという、
一晩が20年くらい続いている麻雀漫画のようなカード。
支配魔法/Control Magic》の類似品。
赤らしくないように見えるものの、
不確定のライフを払うところが赤らしさ。
この一風変わったカードはミラージュのレア。
ミラージュの発売は1996年10月7日。
考えてみればもう20年も前のカード。
その後、第6版(1999年4月28日発売)に再録されているが、
それ以降では再録は一切されていない。
MTG歴ヒトケタ年数の人では、
「なにそれ?」
なカードだ。

読んで多くの人が抱くであろう感想は、

・全然強くない。
・ネタ系のカード。
・50円レア。
・これでレア?

といったマイナスな感想ばかりだろう。

ミラージュ発売当時でもネタカードとしてしか扱われないレアであった。
言うまでもなく一度たりともトーナメントカードになった事もない。
このカードはその後もまともな主戦場を与えられた試しはもちろんない。
EDHでさえ使われる事など一般的ではない。
なにせEDH歴が相当に長い店主でも、
これを撃たれた事は未だかつて無いのだから。

では全く使えないのかと言ったらそうでもない。
「5マナのソーサリーで1枚のカードに対処」
という点では相当に使いにくい。
しかしだ、
よく考えてみよう。

ジェネラルの挙動に間に合うかどうかというものは別として、

「あなたは自分のジェネラルが勝手に《無道の競り》に賭けられた。
 さあ、いくらのライフを払って落札する?」

ここがポイントだ。

状況はどうあれ、
オークションに賭けられてしまう生物は、
間違いなく、

・兇悪ジェネラル
・放っておくと数ターン以内に勝負が終わるかもしれないジェネラル
・ジェネラル以外では明らかに危険な生物


のどれかのはずだ。
ここではジェネラルが賭けられている事で話題を進めたいので、
1か2の選択という事でお話を。

EDHでは対戦相手は基本3人いる。
生物がオークションに賭けられると、
4人で競るという点からして、
通常の60枚デッキの1対1と明らかに違うのである。

プレイヤーA(《無道の競り》を撃つ人)
プレイヤーB(ジェネラルは《艦長シッセイ/Captain Sisay》)
プレイヤーC
プレイヤーD

とプレイヤーがいたとしよう。
この状況でBのジェネラルに向かって撃ったらどうなるか?
プレイヤーAから時計回りにオークションへの入札が開始される。
さて、
プレイヤーBはどうする?
ジェネラルを奪われたらゲームにならない。
なにせ奪われたら他人が《艦長シッセイ》を起動してくるリスクも恐ろしいが、
自分のデッキが全く回らなくなる事は明白だ。
単体除去呪文と違って、
永続的コントロールの移動は対処がかなり面倒だ。
結構なライフを払ってでもなんとか取り戻したい。
プレイヤーBはこんな気持ちになるだろう。

しかし、プレイヤーA、C、Dはそんな事はお構いなしだ。
全員の共通の気持ちは
「プレイヤーBにだけは落札させないぞ。
 ただ、自分が落札するならともかく、
 プレイヤーBと自分以外が落札するなら、
 せめて害の無い奴が落札してくれないかなぁ。」
となるだろう。

この状況では、
プレイヤーBに渡さないために誰かが相当なライフを払ってでも、
プレイヤーBの落札だけは阻止しに行く事が多いはずだ。
反面、プレイヤーBは必死に落札を狙いに行くだろう。
案外と価格(ライフ)がいくらになるかは想像もつかない。
普段の60枚デッキ、初期ライフ20のゲームと違い、
EDHはライフを増やしてくるデッキやジェネラルもあるし、
初期ライフは40もある。
10ライフ払ってでもプレイヤーBの落札を止める人がいても不思議はない。
状況次第では10ライフくらい安いんじゃないか?となる事も。

このオークションで、
プレイヤーBは自身のジェネラルを落札出来たとしても、
結構なライフを払う事になるだろう。
ただし、周囲からは、
「それでもアレを守りに行く程という事は、
 あいつは全員を倒しに来るに違いない。」
と警戒される事は明白で、
そのまま攻め立てられてライフ0まで行く可能性もある。

反面、他の誰かが落札をした場合、
状況次第ではそのジェネラルを有効活用するだろうし、
そうでない場合でも
「オーナーのところに戻らないように全員で守りに行く。」
なんていう変わった状況も。
オーナー以外の3人で談合して、
「こいつは落札後に絶対に起動しない。誰が落札しても、
 可能な限りオーナーのところへ戻らないよう努力する同盟」
も可能だ。

さて、このカード、
こういう状況だけ見ると、
強いんだか弱いんだかわからない部分もあるのだが、
EDHにおいて決して弱くないという事は断言出来る。

EDH黎明期ならいざ知らず、
昨今のEDHは多くの人が
「ジェネラルありき」
のデッキを構築する傾向にある。

ジェネラルありきのデッキとは、
ジェネラルで勝つ、ジェネラルでアドバンテージをとる、
ジェネラルでコンボを決めるなどの、
ジェネラルをデッキの基軸としているデッキの事だ。
ただのデッキの色公開用(カラーマーカー)になっているデッキのほうが珍しい。
「EDHはジェネラルを活かして楽しもう!
 ジェネラルを上手く使って勝ちに行こう!」
という構築になっている人が大半だ。

ジェネラルありきのデッキは当然の事ながら、
ジェネラルを除去されると非常につらい。
特に単体除去呪文で潰されるならばまだ良いが、
永続的にコントロールが奪われるとかなりきつい。
自分でジェネラルに除去を撃ってから、
ジェネラル領域に起き直して再度プレイするか、
手札に戻す呪文や能力で手札に戻して再度プレイなど、
2度以上の手間が必要となる。
この手間はかなりの遅れをとるので相当に不利だ。
デッキによっては単体除去が少なかったり、
全く入っていない場合もある。
そうなるとこんなカードでオークションに賭けられてしまい、
間違って落札出来ないなんて事になると、
敗北につながりかねない。
結構シャレにならないカードという事だ。
(それでも5マナだから重たい事には変わりないのだが。)

この《無道の競り》の注意点はいくつか書いておこう。

まず、《無道の競り》は対象をとる呪文である。
悟った達人、ナーセット/Narset, Enlightened Master
霧を歩むもの、ウリル/Uril, the Miststalker
マローの魔術師ムルタニ/Multani, Maro-Sorcerer
などの呪禁や被覆持ちは対象にとれないため、
オークションに賭けられない。
(自分のコントロールしている呪禁持ちなら賭けられるが、
 そんな馬鹿な事をする人はいないだろう。)

オークションの注意としては、
開始は《無道の競り》を撃ったプレイヤーである。
無道の競り》を撃ったプレイヤーは開始価格0でスタート。
撃ったプレイヤーは最初の開始価格を1以上の数字に出来ない。
撃ったプレイヤーが最初に自分の好きな数字で入札出来るのは、
一周してからという事。
そこからターン順に入札を開始。
上記と同じようにプレイヤーAが撃ち、B、C、Dのプレイヤー順に入札をするなら、

Bはパスを宣言するか1以上の数字で入札。
Cはパスを宣言するかBが1以上の数字を入札したならそれ以上の数字で入札。
Dはパスを宣言するかBかCが1以上の数字を入札したならそれ以上の数字で入札。

0のままはなかなか無いだろうが、
B、C、Dが3人ともパスを宣言するとAが落札。
落札の条件は、
「最高額を入札してから全員がパスをしたら落札。」

自分の順番がまわってくるたびに、
パスか入札を選択出来るので、
一度パスをしてしまっても再入札は可能。

EDHではプレイヤー同士の相談は基本的にOKとされているので、
入札中に色々な話をして落札するか否かを決めてもよい。

わかりやすく?書くと、

「0円スタート!
 最低落札価格無し!
 自動延長あり!
 ノンクレーム(勝手に出品してるけど文句は言うな!)
 ノンリターン(《送還/Unsummon》系の呪文は撃つな!)
 でお願いします!」


というどこかのネットオークションのお約束文句のようなものである。

ただし、やっている事は《無道の競り》という名前の通りで、

「息子のカードを断捨離と称して勝手にオークションに出品!」

である。
余談になるが、
Illicit Auction》という英語名

Illicit=不正な、無許可の
Auction=競売

という意味なので、
全く間違っていない。

ちなみに《無道の競り》が一切効かないジェネラルもいる。
店主のトレードマーク的ジェネラルであり、
とても大好きなジェネラル、
三日月の神/Kami of the Crescent Moon
である。
こいつはどこにコントロールされていようが能力を発揮するので、
売り物にならないのである(笑)
例外的には生贄エンジンがある場合は別だが、
それは他のジェネラルでも同じだ。
もっとも生贄エンジンがある状況で、
わざわざ《三日月の神》を《無道の競り》に賭ける人も少なそうだ。
他の生物をまっとうに除去するほうが建設的である事の方が多い。

この《無道の競り》というカード、
もともとはただのお酒の席で話題になったカードだったのだが、
実際に使ってみると案外と面白かった。
赤いデッキならば採用してみてはいかがだろう。
生物がオークションに賭けられるたびに、
色々な反応と落札結果を楽しめる。
こんなカードはなかなか無い。
多くのEDHプレイヤーに体験していただきたい1枚である。

ではまた。




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