今月のKその11
記事作成日:2017/03/07 執筆:加藤英宝
今回のKのお話は、大昔の店主とKのお話。
昔はこんな時代だったんだよーという思い出話。
時代はまだテンペストやストロングホールド。
日本語版のセットだけなら、
・第4版
・第5版
・クロニクル
・ミラージュ
・ヴィジョンズ
・ウェザーライト
・テンペスト
・ストロングホールド
くらいしか無かった。
エクソダスが出る前だった。
神話レアというレアリティが存在せず、
プレインズウォーカーというカードタイプも存在せず、
Foilカードすらも無い。
カードを見てもレアリティが分からない。
(レアリティによるエキスパンションシンボルの色分けがされていない。)
太古の時代である。
このあたりのカードでスタンダードを経験して、
今もなお現役の人はどのくらいいるのだろう。
この頃に日本国内には、
イタリア語のリバイズドがそこらじゅうで売っていた。
英語版のリバイズドは既に多少のプレミアがついていて、
そのへんのおもちゃ屋さんや本屋さんに売っている事は無かった。
イタリア語のリバイズド(通称:イタリバ)は当時の販売代理店であったホビージャパンが、
「外国にあった不良在庫を引き取ったから日本に大量に出回った」
という噂を聞いたが、真相はわからない。
ともかくこのイタリバは日本国内で1パック450円(当時の定価)で、
結構どこでもというくらいに買えた。
英語版のデュアルランドに手が出ない人にとって、
このイタリバはとても嬉しいセットだった。
言うまでもなく店主はこのイタリバに飛びついた。
ひとまず何が何でもデュアルランドが欲しいと思った。
今でこそ、そこそこのカード資産を持つ店主でも、
この頃はデュアルランドなんてほとんど持っていなかった。
だから、
「英語版でなくても構わない、
デュアルランド10種を合計40枚揃えたい」
と思った。
お金が許す限りイタリバを買っていた。
考えてみるとこの行動は案外と正解だった。
リバイズドのレアは127種。
当時の当たりレアなら、
デュアルランド10種
《ハルマゲドン/Armageddon》
《神の怒り/Wrath of God》
《極楽鳥/Birds of Paradise》
《ネビニラルの円盤/Nevinyrral’s Disk》
《セレンディブのイフリート/Serendib Efreet》
《冬の宝珠/Winter Orb》
《Fork》
などが比較的当たりとされていた。
準当たりラインには
《不吉の月/Bad Moon》
《十字軍/Crusade》
《サバンナ・ライオン/Savannah Lion》
《停滞/Stasis》
《Sedge Troll》
《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon》
《地震/Earthquake》
《吠えたける鉱山/Howling Mine》
このあたりのカードは今は高くないカードだが、
当時には人気もあったカードたちだった。
そして、
《Copy Artifact》
《Braingeyser》
《Fastbond》
《Wheel of Fortune》
などの強力なカードたちは比較的ハズレ扱いだった。
ヴィンテージ(当時の呼称はType1)で1枚制限されていたりするカードだったので、
仕方ないと言えば仕方ないのだが。
準当たりラインのカードは他にもあったが、
1パック450円という事を考えると、
もとがとれる可能性はそれなりにあった。
5パックに1枚くらいは準当たりか当たりレアがあったのだから。
デュアルランド10種、
レアの種類は127種、
確率をこれだけで計算すると、
1パックでデュアルランドを引く確率は7.874%。
乱暴に言ってしまうと、
1箱の三分の一(12パック)を買えば、
デュアルランドを1枚くらい引くのである。
残りの11枚が全部ハズレだと少し悲しいものがあるが、
そこそこのレアが出ていれば、
これでもとがとれてしまった時代だった。
そういえばこの頃はデュアルランドに値段の差があまりなく、
どんなデュアルランドも1対1でトレードが出来るくらいだった。
他にも、
《神の怒り》や《ハルマゲドン》2枚とデュアルランド1枚でもトレードが出来た。
今では考えられない交換レートだ。
余談になるが、イタリア語の《神の怒り》は
「Ira di Dio」
というカード名になっている。
ジョジョの奇妙な冒険に出てくるキャラクターのディオは、
この神という意味のイタリア語から来ている。
それもあってか、
イタリア語の《神の怒り》が好きな人もいた。
それから、ヴィンテージの制限ではあったが、
《悪魔の教示者/Demonic Tutor》
《太陽の指輪/Sol Ring》
《新たな芽吹き/Regrowth》
の3枚はアンコモンなので、
これを引いてもそこそこ嬉しかった。
特に今の値段を考えれば、
《悪魔の教示者/Demonic Tutor》は当たりだ。
あと言うまでもないのだが、
店主にとって一番のアンコモンの当たりは
《セラの天使/Serra Angel》だ。
もうこれさえ引いていれば大喜びであった。
加えて当時の人気カードや高額アンコモンでは、
《惑乱の死霊/Hypnotic Specter》
《巨大戦車/Juggernaut》
《拷問台/The Rack》
《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
《動く死体/Animate Dead》
などがあった。
これらも考えると、
イタリバは定価であれば損する確率はそれほど高くなかった。
ついでに、コモンで出る、
《赤霊破/Red Elemental Blast》
《稲妻/Lightning Bolt》
《密林の猿人/Kird Ape》
《暗黒の儀式/Dark Ritual》
あたりも悪くない。
そんなイタリバを店主とKは、
だいたい毎週金曜日の夜に3パック買っていた。
この日も二人とも3パックずつ購入した日だった。
開封前。
K「ここから俺はデュアルランド3枚引くから。」
K「まぁ、残念ながらお前のパックはカスレア3枚だな。」
(この画像は当時にはまだ生まれてないんだが。)
K、いきなりの自分のカードと人のカードを決めつけである。
–イタリバ開封1ターン目–
店主の開封1ターン目。
店主「あ、《Sedge Troll》引いた。」
K「ハァ?」
《Sedge Troll》
コスト:2赤
クリーチャー トロール(Troll)
Sedge Trollはあなたが沼(Swamp)をコントロールしているかぎり+1/+1の修整を受ける。
(黒):Sedge Trollを再生する。
2/2
レア
今のクリーチャー性能から見ると、
「何?この弱い生物。これでレア?」
と言われてしまいそうだが、
この当時はこれで相当に活躍した生物。
レガシー(Type1.5)でも使われていた。
沼さえあれば、3マナ3/3で再生持ち。
この当時にそんなスペックの生物はいなかったので、
十分に活躍した1枚だった。
黒マナ1つあれば《稲妻/Lightning Bolt》で死なない事は大きかった。
とはいえ、
《恐怖/Terror》
《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
《火葬/Incinerate》
では倒せてしまうのだが。
《菅草スリヴァー/Sedge Sliver》
《垣のトロール/Hedge Troll》
の元となったカード。
英語名をカタカナ発音するとセッジ・トロルなので、
愛称:せっちゃん
の名で親しまれたカードである。
話を戻そう。
イタリバ、Kの開封のターンである。
K「まぁ見てろ、ここでデュアルランド引くから。」
開封。
K「《歪んだ秘宝/Warp Artifact》…。」
店主「ほう、デュアルランドねぇ…。
で、その曲がった十円玉みたいな絵はなんだい?」
K「うるせー。これからが本番なんだよ。
残り2パックでデュアルランド2枚引くし。」
–イタリバ開封2ターン目–
店主の開封2ターン目。
店主「よし、2パック目行こう。
お、《不吉の月》か。悪くない。」
K「なめるなよ、ここで俺の引きを見せてやるぜ。」
返しのKの開封ターン。
K「《魔力のとげ/Manabarbs》…。」
店主「ほう、デュアルランドねぇ…。
これがかの有名なデュアルランドなんですかい?」
K「なんだこのカードは!俺をなめてんのか!」
店主「先生、デュアルランドじゃないんですかい?」
K「ラストがある、ラストが!」
–イタリバ開封3ターン目–
店主の開封3ターン目。
3パック目に手をかける。
店主「おー《Badlands》だ。もとはとれたな。」
K「なんだと!?」
店主「3パック開封して、
《Sedge Troll》
《不吉の月》
《Badlands》
の3枚なら悪くないな。」
K「待ってろ、俺も最後でデュアルランドを…」
返しのKの開封ラストターン。
K「《磁力の山/Magnetic Mountain》…。」
K「なんだこれは!?いるかこんなもん!!」
友人の車の中でK、大絶叫。
K「俺のデュアルランド3枚はどこ行ったんだ!」
引いてもいないカードの所有権を主張するK。
K「俺をなめるのもたいがいにしろ!
二度と俺のところに戻ってくるな!」
カードを車から国道1号線に投げ捨てるK。
(ゴミはゴミ箱に捨てましょう。)
もうこのお話は10年以上も昔になるが、
Kはこの頃からこんなである。
三つ子の魂百までとはよく言ったものである。
10年以上の時間が経っても、
この時の彼があまりにも面白かった事もあり、
引いたレアと彼の顔は明確に忘れなかった。
今月のKとお題していながらも、
過去のお話になった理由は、
先日、Kはお店には遊びに来てくれたのだが、
店主はその日風邪で倒れてしまい、
全く会えずに終わってしまったから。
会えなかった事はとても残念だったが、
Kならば今後も何かしら当店にネタを提供してくれる事だろう。
ではまた。