ルール裁定について。
記事作成日:2015/04/02 執筆:加藤英宝
ルール裁定について。
2015年3月の裁定で、EDHのルールが少し変更された。
「統率者は手札やライブラリーに戻る際も、
統率者領域に置いても良い。」
というルールに変更された。
今までは、
・死亡した場合
・打ち消された場合
・追放された場合
・手札やライブラリーから墓地に置かれた場合
において、
統率者領域に置く事が出来た。
今回のルール裁定により、
手札に戻す呪文、《送還/Unsummon》や《死者再生/Raise Dead》で、
統率者領域に置く事が出来るようになり、
《終末/Terminus》や《邪魔/Hinder》の場合も、
統率者領域に置く事が出来るようになった。
簡単に言ってしまえば、
「ジェネラルは戦場以外の領域に移動する際はジェネラル領域に置ける。」
という解釈をすればわかりやすい。
どうでもいい話ではあるが、
ジェネラルはオーバーサイズカードでも基本的には問題が無くなった。
この裁定は単純にジェネラルの一方的な強化という解釈で間違いない。
問題は別にある。
《呪文丸め/Spell Crumple》
《混沌のねじれ/Chaos Warp》
《予期せぬ不在/Unexpectedly Absent》
のように、
「統率者デッキセット」
に収録されているカードたちだ。
これらのカードは、
「ジェネラルをライブラリーに戻して、
ジェネラルを無効化する。」
という事を目的として作られているはずだ。
にも関わらず、このルール裁定はいかがなものか。
《浄火の戦術家、デリーヴィー/Derevi, Empyrial Tactician》というカードは、
ジェネラルに指定しておくと、
どんな除去方法をとっても4マナでプレイされてしまう。
(エンチャントで無効化する以外)
以前までなら、
《混沌のねじれ》や《呪文丸め》でライブラリーの中に行ってくれたのだが。
とはいえ、
「殴ってジェネラルダメージ21点を狙うジェネラル」
「殴るor能力でライフ40点を削るジェネラル」
の2種のようなデッキは、
ジェネラルがライブラリーの中に入ってしまうと、
どうしてもデッキがただの紙束になりがちだ。
このルール裁定によって、
このタイプのデッキはそれなりに立ち位置を確立出来る。
一例では
《歩く墓場、髑髏茨/Skullbriar, the Walking Grave》
このカードの能力は、
《Skullbriar, the Walking Grave/歩く墓場、髑髏茨》
コスト:黒緑
伝説のクリーチャー ゾンビ(Zombie) エレメンタル(Elemental)
速攻
歩く墓場、髑髏茨がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、それの上に+1/+1カウンターを1個置く。
歩く墓場、髑髏茨に置かれているカウンターは、それがプレイヤー1人の手札やライブラリー以外のいずれの領域に移動しても残る。
1/1
レア
今回のルール裁定のおかげで、
手札やライブラリーに戻る事が置換出来るようになったため、
自身の能力での+1/+1カウンターが残り続けるメリットが強化された。
他にも「見たらそいつから倒せ!」と言われる、
最悪のジェネラルとして名高い、
《トレストの密偵長、エドリック/Edric, Spymaster of Trest》。
これもライブラリーの中に押し込めるカードで無効化出来なくなったため、
相対的に強化された1枚である。
ハッキリと言ってしまえば、
《歩く墓場、髑髏茨》を使っている人は少ない。
《トレストの密偵長、エドリック》や《浄火の戦術家、デリーヴィー》を使っている人のほうが、
圧倒的に多いだろう。
ただでさえ、「見たら倒せ」のジェネラルたちが、
このようなかたちで強化されてしまうのは好ましくない。
EDHなのだから、
ジェネラルありきのデッキを作る人が多い事は間違いない。
もともと
「最初から手札にあるかのようにプレイ可能。」
「死んでもマナさえ払えば何度でもプレイ可能。」
という他には無いルールでジェネラルは強い存在なのだから、
これ以上強くする理由は無かったかのように思える。
マジックは、
今までもルール裁定で戦略性を失わせる事を何度かやっている。
・マナバーンルールを消滅。
・戦闘ダメージのスタックルールを消滅。
この2つはゲームの深さを明らかに減退させてしまった。
ルールを簡潔にするためとはいえ、
ゲームバランスを狂わせる行為はしてほしくなかった。
また、伝説ルールの変更も相当に影響力があった。
上記のマナバーンと戦闘ダメージと伝説ルール変更、
加えて、このEDHのルール変更、
これらは本当に必要に迫られた変更だったのか、
甚だ疑問である。
プレイヤーの中には、
「ルールが変更されて嫌になったから引退」
という人も少なからずいた。
明言は避けるが、とある別のトレーディングカードゲームは、
ルール変更や禁止改訂をし過ぎて、
・同じテキストが書いてあるのにカード名によって効果が違う。
・カードのルールについて公式でも「わからない。」と回答する。
・単純なユーザー離れ。
などの問題が起きている。
3つ目については、
そのカードゲームを卒業してMTGに走る人も多いと聞く。
ここまで書いてしまうと、
この別のカードゲームが、どのカードゲームかは読んでいる人の9割くらいはわかるだろう。
MTGは歴史があるだけでなく、
ゲーム性やルールについても、
他のカードゲームとは比べ物にならない程しっかりとしている事は間違いない。
それを理解したうえでも、
新しい事への挑戦やルールの整備は必要だとは思うが、
絶対に必要とは限らない。
ルールをいじる人たちはもう少し慎重にやって欲しいものである。
変更されるルールによって、
プレイヤーを振り回すだけでなく、
せっかくデザインされたカードを台無しにするのは、
あまりにも寂しい。
冒頭部分でも触れた、
《呪文丸め》
《混沌のねじれ》
《予期せぬ不在》
のように、狙ってデザインされたカードが、
こういうかたちで台無しになる事はあって欲しくない。
今回の裁定はEDHという遊び方にしか影響しないものだが、
せっかく作ったカードの一部が意味を成さなくなりかねない仕様変更は、
非常に残念である。
一応補足で書いておくと、
マジックの基本的なルール裁定と、
EDHのルールや禁止改訂は別の機関がおこなっているので、
今回のお話は、それを全て合わせたかたちで書いている。
ユーザーの視点では、
「どこのどいつがルール裁定をしようと、
周囲のプレイヤーたちのマジック離れを起こさせず、
マジックを死ぬまで楽しませてくれ!」
という一言に尽きるはずだ。
店主の言いたい事もこれである。
ではまた。