α版とβ版のお話2。

先日、お客様からこんなお問い合わせがあった。

「アルファ版の《Black Lotus
  ベータ版の《Black Lotus
  記述が同じなので、
 ベータ版のカットをアルファのカットに削った場合、
 それはアルファ版と見分けが付きますか?」
と。

なかなか珍しい問い合わせがあるものだ。
「こんな馬鹿行為やる人なんて普通いないだろ。」
と思うのが普通。
だが、
世の中のほんの一握りの馬鹿というのは常人の想像を遥かに超えた行動をしてくれる。
店主はそういうお馬鹿さんを、
地平線馬鹿と呼んでいる。
言うまでもない、
「果てしなく馬鹿」
という意味だ。
当然つける薬は存在しないので、
カードを削るようなお馬鹿さんは、
是非ともマジック界から消えていただきたいものである。

実際にベータのカードを削り、
アルファのカットにしたカードというものを見た事がある。
「実際に見た事がある。」
という事は、一瞬で見抜けた、という事でもある。
そのくらいいい加減なカットだったのだ。
店主はこの粗悪品を見た事があるだけで、
自分のコレクションでは1枚も持っていない。

友人曰く、
「ベータのカードを削って、
 アルファのカットの品に出来たら、
 発行枚数が3分の1の商品に変化させられるんだから、
 欲にかられてやる奴はいるんじゃないかな。
 それが常識的であるかどうかは別として。」
と。
この意見は至極真っ当な意見だ。
ただ、失敗したらベータとしての価値も失うリスクもあるし、
完璧なカットを素人が出来る可能性も低い。
どうみてもやるべきではない。


上記の画像はただのベータ版の《Volcanic Island》。
言うまでもなくアルファ版には存在していない。

こういう事をやるマヌケは、
アルファ版とベータ版で記述の違うカードもあると考えない事もある。
Volcanic Island》のようにアルファ版が存在しないカードや、
極楽鳥/Birds of Paradise》のように記述の違うカードを、
ベータ版からアルファ版にカットしてしまったら、
100%見抜かれてしまう。

この愚行はそこらじゅうで行われているかというと、
そんな事はない。
最初に書いたように、
やるのはほんの一握りの馬鹿だけであり、
常識的なマジックプレイヤーがこんな事をするわけがない。
もしこれを読んでいる貴方の友人が、
「ベータのカードをカットして、
 アルファのカードにしたい。」
と言い出すのであれば、
その人がカードをカットする前に、
友人としての縁をカットしてあげるべきである。

このお客様のお問い合わせへの回答としては、
「よほど精巧にカット出来ない限りは、
 素人であろうと見分けがつく。」
の一言。
どうしても心配ならば確認方法が2つほどある。

1つ目、これは非常に簡単。
可能な限り良い性能のスキャナーを用意する。
カードをスキャナーの最大の画像の大きさで撮る。
カードの角部分をスキャンした画像をさらに拡大して見る。
へたなカットをしていればこの拡大画像で、
おかしな形になるはずだ。

2つ目、こちらは単純。
PSA鑑定である。
Cardshop Serraが鑑定代行をしているので、
PSA鑑定にかけてみればよいのである。
もしそのカードがベータのカードをアルファにカットしていたら、
「鑑定出来ません。」
という結果で帰ってくるか、
状態のわりにやたらに点数の低い評価を下されるだろう。
PSAでは、PSA1(Poor)の評価に、
「カードの一部が欠けている場合。」
というものがあるので、
カードの状態がどれだけ良くても、
カットされている=一部が欠けている
と見なされ、評価が下がるか、
「カードを切り取った跡がある時点で鑑定不可。」
と見なされる。

1つ目の方法は自身の目が頼り。
ただし、落とし穴がある。
それは、
ベータのカードをノンスリーブで使い倒し、
あまりに使い込み過ぎて角が丸くなってしまい、
アルファカットのようになってしまっているものと、
本物のアルファとが区別がつきにくい状態となった場合。
もっとも、
ここまで状態が悪いカードのアルファかベータかを悩む事自体が珍しいが。
アルファかそれともカットされたベータかを気になってしまうのは、
どんなに状態が悪くてもEX以上のものが大半のはずなので、
それほど懸念されるものではない。
下記の画像を見ていただきたい。


この《Wheel of Fortune》は、
10年以上前から店主が使っているベータ版。
買った時からこのくらいボロボロだった。
このくらいボロボロになっていても、
まだベータ版かアルファ版かの区別はつく。
このカードはPSA鑑定にかけてもPSA3かPSA2だろう。
これ以上ボロボロになっているカードが、
アルファかベータかを心配する人は少ない。
少ないからこそベータ版をアルファ版と称して売る、と言えなくもないが、
可能性だけを考えているとキリがない。

2つ目の方法は確実性が高い。
鑑定済みになるという事は、
状態評価も含めて、
「この品は○○(カード名)の評価○○だ。」
と言ってもらえるのである。
多少のお金はかかるが、
安心とカードの状態保持が手に入る事は、
コレクターとしてとても重要だ。
大切なコレクションを守る方法としても2つ目は最良に近い。
お手持ちのコレクションをデッキに入れない人であれば、
PSA鑑定が最もお薦めしたい方法である。

なお、Serraの店主が知っている、
この類の最大の非道行為では、
「コレクターズ・エディションのカード(角が直角)を削り、
 ベータ(もしくはアルファ)のカードと称してネットオークションで販売し、
 売り払ったら『そんなの知らない。』という態度。」
という詐欺。
オークションでは表側の画像しか見せないため、
裏側の金枠部分は商品が届いてからでないとわからなかったという。

ネットオークションがダメだとは言わないが、
ネットオークションでは、
出品者の評価が高かろうと低かろうと、
騙される時は騙される。
高額な商品は確実に信用出来るところで購入する事をお薦めしたい。

ではまた。



記事作成日:2015/03/05