黒枠と白枠のお話。

今回のお題は黒枠と白枠のお話。

マジック・ザ・ギャザリングのカードには少なからず白枠のカードが存在する。
黒枠と白枠のカードがどうして存在しているのか、
しっかり知っている人は案外と少ないだろう。
同業者であるカードショップで働く者でさえ知らない人が多い。

マジック黎明期にはこの黒枠、白枠にルールがあった。

・エキスパンションは全て黒枠。
・基本セットはその言語に最初に訳された版に限定版として黒枠が存在する。


という2つのルール。
英語版の黒枠の基本セットと言えば、αとβ。
(αが1993年8月、1993年10月に発売。)
2版であるUnlimitedが白枠になっているのはこの理由だ。
(Unlimitedは1993年12月発売。)

もちろんそれ以降3版であるRevisedから9版までずっと白枠。
(Revisedは英語版が1994年の4月に発売。)

フランス語、ドイツ語、イタリア語の3言語は、
Revisedの時に訳されたのでRevisedの限定版(初期版)のみ黒枠。
その後、Revisedの白枠版が刷られている。

量としては白枠版のほうが多い。
(3言語のRevisedは1994年に英語版より少し後に発売。
 イタリア語は同年中に白枠を発売。
 フランス語とドイツ語は翌年に白枠発売。)
画像はドイツ語黒枠。

日本語、中国語、スペイン語、ポルトガル語、韓国語の5言語は、
第4版の時に訳された。
この第4版でマジックは9言語になり、
世界的カードゲームとして、
カードゲームの王様としての地位をかためた。

ただし、国によって刷られた数やタイミングにズレがある。
英語版は1995年4月、日本語版は1996年4月。
1年以上の差が開いている。

日本語版は黒枠の量のほうが多く、白枠は少ない。
中国語、韓国語にいたっては白枠版は存在しない。
スペイン語は黒枠と白枠があるが、発行数等は不明。
ポルトガル語は謎だらけ。
なにせ1パックが15枚ではない。
白枠はあるらしいが、発行数等は不明。

また、同時代に刷られたクロニクルについても、
「あれは基本セット第4版の一部である。」
という前提から、
英語版のクロニクルは白枠、
日本語版のクロニクルは黒枠、
というルールになっている。
クロニクルはこの2言語のみ。
つまり黒枠クロニクルという存在は日本語版のみである。

アラビアンナイトの絵で、
黒枠日本語の《真鍮の都/City of Brass》はここにしか存在しない。
非常に貴重な品である。

さらに知らない人が多い事としては、
ルネッサンスというセットの存在だ。
これが非常にわかりにくい代物で、
正確に説明の出来る人がとにかく少ない。
まず、ルネッサンスとはフランス語、ドイツ語、イタリア語の3言語にしか存在しない。
そして、フランス語とドイツ語の中身は一緒だが、イタリア語だけ中身が違う。

フランス語とドイツ語の中身は
第4版に収録されているカードから、
Revisedに収録されているカードを差し引いたもの。
わかりにくいだろうか。
例えば、
魔法使いの弟子/Apprentice Wizard
ボール・ライトニング/Ball Lightning
といったカード、
これらはRevisedには無いが、第4版にはある。
なので、ルネッサンスに入っている。
不吉の月/Bad Moon
白騎士/White Knight
といったカード、
これらはRevisedにも第4版にもある。
なので、ルネッサンスには入っていない。

第4版-Revised=ルネッサンス

という謎の差分セットなのだ。
書く必要はないと思うがルネッサンスにデュアルランドは入っていない。

そして、イタリア語に至ってはもっと変なセットである。

(第4版+クロニクル)-(Revised+Legends+The Dark)=イタリア語ルネッサンス

という式を書けば理解出来るだろうか。
こちらは何故こうなったのかというと一応理由がある。
LegendsとThe Darkにはイタリア語版が存在するからである。
ドイツ語やフランス語のルネッサンスとの大きな違いはクロニクル部分。
イタリア語ルネッサンスのパックからは、
真鍮の都/City of Brass
アーナム・ジン/Erhnam Djinn
ウルザの鉱山/Urza’s Mine
ウルザの魔力炉/Urza’s Power Plant
ウルザの塔/Urza’s Tower
などが出るが、
ドイツ語、フランス語のルネッサンスからは出ない。
しかし、ドイツ語、フランス語のクロニクルが存在しているわけではない。
このあたりは中途半端なのだ。

このルネッサンスのセットは全て黒枠である。
ルネッサンスというセットが存在した理由は、
「最初にWotCはフランス語、ドイツ語、イタリア語の3言語において、
 第4版を出さない予定だった。
 そのため、第4版との差分のカードのみを収録したものを、
 黒枠として存在させて発行するに至った。」
という話を聞いた事がある。
ただし、この3言語の第4版は後々に発売されている。
はて、ルネッサンスを出す事に意味があったのだろうか。

こんな事を何故筆者は知っているか。
それは簡単である。
このルネッサンスの3言語全てボックス開封した事があるからである。

そして、第7版の時にFoilのみ黒枠が出るという謎の仕様に。
(第6版まではFoilそのものが存在していない。)

その後、第9版の時、ロシア語が登場。
当然ロシア語版だけ黒枠になる。
この時、ロシア語版のシングルカードは高かった。

そして、第10版で、記念というつもりだったのか、
最初のルールは破壊され、
全言語でこれ以降出る基本セットが全て黒枠というルールになった。

また、例外的に一部のカードが白枠で再録される事があった。
・アンソロジーデッキボックス
・バトルロイヤルデッキボックス
・ビートダウンデッキボックス
といったシリーズだ。
このシリーズは、現在のデュエルデッキシリーズの元祖みたいなものだ。
デュエルデッキは全部黒枠ルールが制定後に出ているので全て黒枠である。

さらに、ここに書かれているもの以外でも白枠が存在している。

ポータル三国志
ポータルスターター

の2つだ。
この2つが白枠である理由だけはわからない。
少なくともポータル1とポータル2が黒枠であるにも関わらず、
何故わざわざ白枠で発売したのか全くわからない。

ポータル三国志は
1999年5月に日本語版が発売、
1999年7月に英語版と中国語版が発売。
英語版、日本語版、中国語版の3言語しか存在せず、
しかも刷られた数では例外的に英語版が最も少ない。

ポータル三国志は発売当初に超がつく程の不人気セットだった。
理由はとても簡単だ。

・公式大会で使用不可。
・カードが白枠。
・そもそもカードの大半が根本的に弱い。

発売して数年の時間が経ってから、
「レガシーとヴィンテージで使用解禁。」
となった途端に高騰。
こうなるまでおもちゃ屋さんの片隅で1パック100円で売られていた程である。
レガシーとヴィンテージで解禁後、
この世界にEDHという遊び方が確立され、
値段はより高騰の一路をたどっている。
未開封品については1パック5000円を超えるという驚きの価格だ。

ポータル三国志は公式で使えなかった時代に、
在庫処分セールで投げ売りされただけでなく、
長い時間公式大会で使えなかった事で、
ユーザーが破棄してしまい、絶対数がより減った。

なお、ポータル三国志は英語版のシングルカードが少々割高である。
これは、フランス語やドイツ語等の他言語が存在していない事と、
発行枚数の少なさが影響している。
ポータル三国志は黒枠でなかった事、
三国志に出てくる武将たちが軒並み弱い事など、
全体として失敗エキスパンションだった。

ポータルスターターについては、
1999年7月発売、
「何故このセットを作った?」
と言いたくなる内容である。
見るべきカードが
Grim Tutor》1枚のみと言っても過言ではない。
Grim Tutor》はこのセットにしか存在しないという不思議なカードで、
EDH需要、ヴィンテージ需要で高騰した1枚である。

これも黒枠が存在しない事が残念がられる1枚。
他にも《Goblin Settler》というカードが、
ポータルスターターにしか存在しないカード。
案外とこの能力と同じカードが無いという意味では珍しい1枚。

このポータルスターターはスターター99と呼ばれる。
こらむではわかりやすくするためポータルスターターと呼んだ。
比較的ポータルスターターという呼称のほうが定着している事もその理由。
エキスパンションマークは★というちょっとかっこいいセットだった。

どういった経緯にせよ、
この2つのセットは黒枠で出して欲しかったセットだった。

現在は全てのカードセットが黒枠で出すとされているので、
今後白枠のカードが印刷される事は無いだろうと思われる。
さらにMagic2015の次で最後の基本セットとなると発表があった。
この発表を考えても白枠になる必要は無いだろう。
今後は1年間に
大きいカードセットA
小さいカードセットA
大きいカードセットB
小さいカードセットB
という流れでエキスパンションを出すという予定だそうだ。
もっともこれも何年かしたら変化する日が来るかもしれない。
だが、
わざわざ白枠のカードを今後する事はしないだろう。

こういった状況を踏まえても、
「白枠でしか存在しないカード」
が少々不憫である。

ではまた。



記事作成日:2014/10/09