孫夫人

今回のお題は、
孫夫人/Lady Sun
三国志に出てくる数少ない女性登場人物の一人。
ポータル三国志に出てくるカードで女性は、
孫夫人/Lady Sun
籠絡の美女 貂蝉/Diaochan, Artful Beauty
烈女 祝融夫人/Lady Zhurong, Warrior Queen
の3人のみ。


Lady Sun / 孫夫人
コスト:1青青
伝説のクリーチャー — 人間(Human) アドバイザー(Advisor)
(T):クリーチャー1体を対象とする。孫夫人とそれを、オーナーの手札に戻す。
この能力は、あなたのターンの間で、攻撃クリーチャーが指定される前にのみ起動できる。
1/1
レア

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小覇王 孫策/Sun Ce, Young Conquerer》と《呉主 孫権/Sun Quan, Lord of Wu》の妹。
当然の事ながら孫堅の娘。
孫策と孫権は同じ母だが、
孫夫人とは母親違い。
そして、孫夫人は
蜀主 劉備/Liu Bei, Lord of Shu》の奥さん。
呉のお姫様が、
蜀の大将の嫁になるという事は、
説明は不要かと思うが、政略結婚。
この政略結婚により、
一応血縁上、劉備と孫権は義兄弟。
イラストの赤ん坊はダメ劉備のダメ息子のダメ劉禅。
この絵で見ると、実子だと勘違いする人もいるだろうが、
劉禅と孫夫人は血が繋がっていない。
劉禅の母である甘夫人はこの時点で既に他界。
河岸で白馬に乗って追いかけている武将は《虎威将軍 趙雲/Zhao Zilong, Tiger General》。

この孫夫人というのは言うまでもなく正式な名前ではない。
実在の人物ではあるが、本名は正確には残されていない。
一般的には孫尚香という名前で呼ばれる事が多いが、
これも本名ではなく、劇などで使われる呼称。
2008年、2009年の映画レッドクリフ前後編でも孫尚香の名で登場している。
こらむでは孫尚香の名前で呼ぶ事にする。

そして本名が記録に残されていないどころか、
史書:呉書の中にさえ一切の記述が無い。
いくら男尊女卑の時代で、
しかも敵国である蜀に嫁いだからといって、
呉書にまで記述がないという扱いはあまりにぞんざい。
呉の国を作った孫堅、孫策、孫権の血縁者とは思えないほどだ。

これが史書の状態なので、
姓:孫
名:不詳
字:不詳
生没年:不詳
というわからないだらけ。
一応三国志演義では孫仁の名らしいが、
これは彼女の同母兄:孫朗の別称と言われている。
意外かもしれないが、三国志演義でも孫尚香の名を使っていない。

劉備配下の法正の伝承の中で、
「劉備の恐れる者は北に曹操、南に孫権、蜀内には孫夫人」
という記述が残っている。
しかもこのコメントをしたのが諸葛亮だというから驚きだ。
劉備にとってそれほど恐ろしい相手だったという事だろう。
どういった意味でこの記述が残っているのかは謎だが、
「兄たちと似た性格だった」
という記述がこの法正伝にはある。
孫策、孫権と似ている=気性の激しい人という解釈でいいのだろうか。
(実際に気性の激しい性格だったらしいが。)
この人も孫堅の血をしっかりと受け継いでいるという意味もあるだろう。

劉備と結婚した年は209年。
孫権が27歳、劉備が48歳。
年齢不詳とはいえ、
30年近くも離れている劉備と結婚という話から、
おそらくこの頃の孫尚香が20歳前後。
齢50にして20歳前後の嫁をもらえるのであれば、
普通は大喜びしそうなものだが、
前述の通り、劉備にとってはとても恐い存在だったようだ。
もっとも相手が20歳でも喜べないほどの醜女だったという可能性もある。
なお、
美人だったという記述はないので、
孫尚香は美人ではなかったのかもしれない。
あ、そういえば、
Cardshop Serraの店主と同じ名字の芸人さんが、
(名前はCardshop Serraのある静岡県の名産品。)
年齢差30どころか年齢差45の方と結婚してましたね。
あの芸人さんはとても喜んでましたね。
周囲はどう思っているのかわかりませんけれども。
おっと、話がそれてしまった。

話を戻そう。
孫尚香は劉備が恐れるほどの気性の激しい性格なだけでは無かった。
婚姻時に孫尚香は子飼いの部下達を劉備のもとへ連れてきた。
この兵士たちは素行が悪く、他とトラブルをおこす事も多かった。
こんな状態では、夫婦仲が良くなるわけがなく、
孫尚香の存在に怯えに怯えた劉備は、
孫尚香への牽制、として自分への護衛として趙雲を付けるほどだった。
(どれだけ小心者なのか、劉備さん。)

そして、良いとは言えない夫婦生活にピリオドを打つ日が簡単に来てしまう。
呉から
「母が危篤、帰国せよ」
という報を聞き、
孫尚香は劉禅を連れて呉に帰ろうとする。
が、この報は呉の策略で、母は危篤でもなんでもなく、健康そのもの。
これに対し、
諸葛亮は趙雲に命じて劉禅を奪還。
この劉禅を連れて呉へ帰ろうとするシーンが、
MTGの《孫夫人/Lady Sun》のイラストになっている。
孫尚香は頑として聞かず劉備のもとへ帰ろうとしない。
そのまま公安県に城を築かせて別居を開始。
(この城の建築費って誰が払ったんだろう?)
事実上の離婚と言って過言ではないだろう。

孫尚香の記述で残っているものはこれだけなので、
その後どうなったかという事は一切不明。
わざわざ城を作って住むという事は、
呉に帰ったわけでもなく、
かと言って、劉備とよりを戻す、
もしくは呉に戻っている事があるとすれば、
それ相応に記述が残るであろうと予想するなら、
そのままその城で死ぬまで暮らしたと見るべきだろうか。
劉備と孫尚香の間には子供が無かった事を含めて、
夫婦仲は良くなかったと見てもいいだろう。

演義での孫尚香は正史とは全く違う記述となっている。
まず、政略結婚に際し、
孫尚香の母が
「劉備を見て決める!」
と言い出し、実際に劉備を見て、
「この男になら娘をやってもいい。」
と思ったというところから始まる。
政略結婚なだけでなく、この婚姻には謀略が渦巻いていて、
結婚の酒宴の席で周喩や呂範は劉備暗殺を画策。
しかし、それに気づいた孫尚香の母は、
「婿殿に何をするか!」
と一喝。
暗殺は失敗に終わる。

が、周喩の謀略はそれだけに終わらず、
結婚の祝宴を連日開き、
酒におぼれさせて劉備を骨抜きにして、
呉国にとどめてダメにさせるという案に方向転換。
(この作戦、相当ザルだと思うのは気のせいだろうか。)
きっちりこの案にひっかかるダメ劉備だが、
最初から全てを見通していた諸葛亮大先生は、
「困ったらこうしろ」
と策を趙雲に授けてあり、
この状況への対処法を用意していた。
「もう毎日ここで酒飲んで暮らしたい。帰りたくない。」
と、ろくでもない事を言い出した劉備を、
趙雲はなんとか説得し、
強制的に帰国を開始する。
この時に孫尚香は劉備の妻として、一緒に行くと言い出した。

呉の武将たちは、
「せめて孫尚香だけでも取り返す!」
と、劉備を追いかけたが、
孫尚香に
「私はこの劉玄徳の妻にして、
 呉の孫権の妹です。
 無礼者!下がりなさい!」
と母や父、そして兄二人に負けず劣らずの一喝で武将たちを下がらせ、
夫婦そろって荊州に帰る事が出来た。
孫尚香の母も、孫尚香自身も、
三国志演義では劉備の事が気に入っていた。

荊州に戻ってからも、
孫尚香は侍女たちには武装をさせていたため、
その点については劉備は常に怯えていたという。

その後、呉の策での母の危篤の誤報の部分はほぼ同じだが、
演義ではそのまま孫尚香だけが呉に帰国。
そのまま孫尚香は劉備のもとへは帰らなかった。
これについては、
「帰らなかった」とする説と、
「帰れなかった」とする説がある。
再婚の話も出たものの、
孫尚香も彼女の母もそれを望まず、
再婚はしないまま時が過ぎた。

その後、蜀と呉の仲は修復不可能なほど悪くなり、夷陵の戦いが勃発。
蜀が大敗北を喫し、劉備は白帝城に逃げ込んだ。
この際に、劉備が戦死したという噂を信じた孫尚香は、
夫の死を嘆き、長江に身を投げて自殺した。
(この劉備戦死は誤報だが、その後、劉備は白帝城で亡くなる。)

このように、三国志演義では、
決して幸せな結婚ではなかったかもしれないが、
夫婦仲は良かったと言っていいだろう。
孫尚香は気は強いものの、
一途な面を持っている女性として書かれている。
また、
正史、演義ともにこの二人の間に子は生まれていない。

それから、
孫尚香は弓腰姫と呼ばれたり、
自身が武装していたという話があるが、
このどちらの記述も演義にも正史にも存在していない。
この記述が存在するのは吉川英治の三国志。
また、映画レッドクリフではこれを採用したのか、
孫尚香は武装している。
完全に余談なのだが、
映画レッドクリフの孫尚香は、
その役の女優さんが、
少林サッカーのヒロイン役もやっているため、
レッドクリフを見ていても、
「いつアクロバティックなサッカーを始めるのか」
という目で見てしまっていた。
こんな事考えているのは自分だけではない…はずだ。

MTGでの孫尚香は、
多少強引気味だが、
「自身と対象のクリーチャーを手札に戻す。」
という能力で、
「劉禅を連れて呉に帰る」
という部分を表現している。
能力が桁違いに強いわけでもなし、
かといって3マナで1/1なので、
他の三国志武将と同じで、ほとんど使われない。
当然トーナメントシーンでもお目にかかったことは一度もない。
EDHでも、この人を使っている人は見たことがない。
青単のジェネラルは他のいくつかの伝説生物たちが、
あまりに強いのでこればかりはどうしようもない。
よほど孫尚香が好きでなければ、
これをジェネラルにする事は無いだろう。

とはいえ、あんまりに弱いというわけでもない。
能力の起動はタップだけなので、
稲妻のすね当て/Lightning Greaves》さえあれば、
3マナ(1青青)で相手のクリーチャーを戻しまくるという事も出来る。
速足のブーツ/Swiftfoot Boots》でも同じ事が出来るが、
こちらでは4マナ(2青青)かかる。
なお、ジェネラルにしないのであれば、
速攻をつける方法+《魔の魅惑/Aluren》で、
相手のクリーチャーだけ全て戻すという事が出来る。
精霊の魂、アニマー/Animar, Soul of Elements》をジェネラルにして、
ヤヴィマヤの火/Fires of Yavimaya》や《熱情/Fever》を積めば、
相手のクリーチャーを全て戻し、アニマーを強化して攻撃…と相性も良い。
他にも、
騙し討ち/Sneak Attack
でも同様の事が可能。
赤マナの分だけ相手のクリーチャーを戻せる。
少々強引だが、
孫夫人/Lady Sun
永遠の証人/Eternal Witness
騙し討ち/Sneak Attack
の3枚と追加ターンカードで無限ターンも可能。
青の強力なジェネラルたちには及ばないが、
こんな面白い使い方が出来るカードはこれだけなので、
一考の余地はある。
もし興味が沸いたら、《孫夫人/Lady Sun》をデッキに入れてみよう。

ではまた。



記事作成日:2013/10/14