華佗

今回のお題は、
名医 華佗/Hua Tuo, Honored Physician
三国時代のブラックジャック先生。
三国志のような戦乱の時代にして、
武将でも文官でもなく、医者としてその名を残す珍しい人。


名医 華佗/Hua Tuo, Honored Physician
コスト:1緑緑
伝説のクリーチャー 人間(Human)
(T):あなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚を対象とし、
それをあなたのライブラリーの一番上に置く。
この能力は、あなたのターンの間で、
攻撃クリーチャーが指定される前にのみ起動できる。
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レア
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姓は華
名は佗
字は元化
生年不詳、没年は208年。

確かな記録は残っていないものの、
世界で一番最初に麻酔手術をおこなった医者というお話が残っている。
このお話は三国志正史にしっかりと書かれており、
麻酔薬も「麻沸散」と明確に書かれている。
この麻沸散を使ってどのような手術を行い、
その手術が成功したかどうかの記録が無い。

確かな記録が残っている世界最初の麻酔手術は、なんと日本。
1804年に華岡青洲という江戸時代の医者が、
全身麻酔で乳癌の手術を成功させている。
三国時代は184年から280年。
もし、華佗が麻酔手術を成功させていたとしたら、
この華岡青洲の時代から1600年も早い。

麻酔と手術の話を抜きにしても、
同時代にこれほど名を轟かせた医者はいない。
それだけを鑑みても、
驚異的な腕を持つ医者である事は間違いない。

華佗は生年が不明なだけでなく、
生まれから青年時代の事はほとんどが不明。
三国志に登場した際も、
「相当な歳のはずだが、見た目は若い。」
といった記述があるだけで、年齢不詳。

顔や身体がキズだらけだったり、

高額の治療費を請求したり、

メスを投げるのが得意だった…という話は無い。


この時代に医師免許というものは無かったはずなので、
無免許医であると言えば無免許医。
妻はいたようだが、名前は不明。
ピノコという名でない事は確か。
その妻との間に「沸」という名の子がいて、
その子が麻酔薬の元となる実を食べて死んでしまった事から、
その麻酔薬に「麻沸散」という名をつけたという民間伝承が残っている。

華佗は先日のこらむの馬超のように、
三国志正史と三国志演義でかなり記述が違う。

三国志正史では、
名医との評判を聞いた曹操が典医にむかえるものの、
それほど良い待遇をしなかった。
この時代は医者という職業が、
それほど社会的地位が高くなかった事が原因の1つで、
決して曹操が狭量であったわけではない。
しかし、華佗はこれを不満に感じ、
医学書を取りに行くと言って家に帰り、
そのまま妻の病気を理由に曹操の元へは戻らなかった。
その後、曹操は華佗の事を調べ、
妻の病気が嘘であると知り、
華佗を捕らえて投獄した。
投獄後、
曹操陣営随一の軍師である荀彧が命乞いをするものの、
曹操はそれを聞かず、華佗を獄中死させてしまった。
華佗は死ぬ前に牢番に自著の医学書を託したが、
曹操からの罰を恐れた牢番はその医学書を焼却処分してしまった。
こうして稀代の医者の知識と技術は後世に伝えられる機会を失ってしまった。
なお、曹操は偏頭痛や眩暈を持っており、
それに対処出来る唯一の医者が華佗だった。
華佗の死後、自らの持病の事に加え、
息子の曹沖の病気に他の医者では対処出来ずに、
曹沖を病死させてしまった事を後年まで悔いたという。

曹操の典医となる前の話では、
陳登を診察した時の話が驚異的だ。
陳登は生魚から感染した寄生虫によって胃をやられていた際に、
華佗の診察を受けた。
華佗は陳登に薬を処方してこの寄生虫を吐き出させた。
治療後、華佗は
「この病状は3年したら再発する。
 その時は良い医者を準備しておくように。」
と注意した。
3年後に言った通りに再発するが、
その時に華佗ほどの医者はおらず、
陳登は39歳の短い生涯を閉じる事となる。
予言部分は誇張かもしれないが、
非常に興味深いお話だ。

また、ある郡守(今で言う県長か市長)が重病で苦しんでいた際、
華佗は激怒させる事が治療法であると診断。
一体どんな病気だったんだろうかと疑問になるが、
病名は記録されていない。
華佗はこの時、高額の治療費を請求して受け取った挙句、
何も治療らしい治療を施さず、
郡守の悪口雑言を並べ立てた手紙を置いて失踪。
これに激怒した郡守は怒りのあまり血を吐いてしまう。
そして血を吐いた郡守はそのまま病気が治ってしまったという。
…この話だけ何処かの無免許医の話のようだ。

ここまでは三国志正史のお話。

三国志演義ではとくに有名なエピソードを紹介しよう。
龐徳との戦いで毒矢を受けた関羽の治療をするため、
荊州に出向き、右腕の肘の骨を削るという手術をおこなっている。
この際に華佗は
「患部の痛みで動いてしまわぬように、腕を固定しなければなりません。」
と関羽に言うも、
「この程度の痛みなんという事もない。」
と関羽は断り、
右腕を固定せずに手術を開始した。
関羽は手術の間、酒を飲みながら平然と馬良と碁を打っていたという。
その後、腕が治り、関羽は治療費を払おうとしたが、
「自分がここに来たのは関将軍のお人柄を慕っての事です。
 また、治るか治らぬかは天命であり、
 私が礼をいただく道理はありません。」
と断った。
関羽、華佗の双方を魅せる気持ちの良い話だ。
MTGの華佗のイラストはちょうどこのお話から。
腕を治している華佗、平然と碁を打つ関羽が描かれている。
ただ、もう少し関羽を筋肉質に描いてもいいと思うのだが。

この関羽の話の後、
華佗は頭痛に苦しむ曹操に召し出され、そこで、
「頭痛の原因は頭の内部にあります。
 麻酔を飲んで切開手術をしなければなりません。」
と言ったところ、
「そんな事をして私を殺す気か!」
と曹操が激高。
華佗は関羽の時の切開手術の話を出して大丈夫だと反論したが、
これが火に油を注ぐ結果となった。
「肘と頭では違う。
 まして関羽にかかわっているという事は、
 お前は劉備の手の者である可能性は高い。」
と曹操はさらに怒り、
華佗を投獄してしまった。
正史では荀彧の命乞いだったが、
演義では賈詡が命乞いをする。
しかし結果は変わらず、華佗は獄中死してしまう。

この時、やはり牢番に医学書を託そうとするが、
この牢番の妻が
「医者としての腕がいかにあろうとも、
 (華佗のように)獄死するのならこんなものは不要です。」
と言って、医学書を焼き捨ててしまう。
正史と演義の違いの1つに、
この医学書に演義では「青嚢書」(せいのうしょ)という名前がついている。
この名は、華佗が関羽のもとを訪れた際に、
青い袋を持っていたという描写から。
(青嚢書の「嚢」の字は袋と同じ意味。)

余談ではあるが、
正史でも関羽の腕の話は出てくるものの、
治療した医者は華佗ではない。
関羽が腕を負傷した年には既に華佗は獄中死している。

前述の命乞いの件についても、
正史で荀彧、演義で賈詡になっている点は、
演義での時系列では荀彧は既に死んでいたため、
同じ曹操陣営の軍師である賈詡に差し替えられている。

一方MTGの《名医 華佗/Hua Tuo, Honored Physician》は、
「あなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚を対象とし、
 それをあなたのライブラリーの一番上に置く。」
という《ヴォルラスの要塞/Volrath’s Stronghold》と同じ能力。
この能力は、
「死者をも生き返らせる医術」
と言いたいのだと思う。
創作の多い三国志演義でも死者を復活させるような事はしていない華佗だが、
MTGのカードにするなら、
この能力にするくらいのアイデアしかなかったのだろう。
もうちょっとコストをかけてでも、
「墓地から手札に戻る」
くらいにしてくれたら使えるカードだったのだが。
ポータル三国志のカードであるため、
ご多分に漏れずほとんど活躍の場は無いと言っていい。
レガシーで使えるからと言ってデッキに放り込まれているケースを見たこともない。

EDHでは緑単のジェネラルとしてはあまりに頼りない。
背教の主導者、エズーリ/Ezuri, Renegade Leader
マナの座、オムナス/Omnath, Locus of Mana
クローサの拳カマール/Kamahl, Fist of Krosa
迷える探求者、梓/Azusa, Lost but Seeking
などが活躍する世界で、
3マナ1/2でこの能力では物足りないどころの話ではない。
ただ、伝説のクリーチャーではあるので、
SerraのEDHの《艦長シッセイ/Captain Sisay》のデッキには採用している。
墓地に落ちた強いクリーチャーを再利用する手段にはなるので、
保険的な1枚として採用している。
白緑というデッキの色で、
艦長シッセイ/Captain Sisay》で持ってくる事が出来る、
ヴォルラスの要塞/Volrath’s Stronghold》能力であるのなら、
それほど手に腐る能力ではないと見ていい。
実際に《大修道士、エリシュ・ノーン/Elesh Norn, Grand Cenobite》、《ガドック・ティーグ/Gaddock Teeg》を墓地から戻し、
場を制圧するための補佐役を担ってくれた事がある。

ジェネラルとしては不足どころの話ではないし、
緑単色のデッキではそれほどの活躍は見込めないと思うが、
特定のデッキでは華佗が頑張ってくれる環境はある。
召喚酔いするとはいえ、能力は《ヴォルラスの要塞/Volrath’s Stronghold》なので、
弱いという事はない。
それに能力はマナがかからない。
タップだけで起動出来るので比較的使いやすいと言える。
特にどんなカードも1枚限定のEDHなら、
クリーチャーを再度使えるように出来る事は大きい。
興味を持ったら華佗先生をデッキに採用してあげよう。

ではまた。



記事作成日:2013/08/13