再録禁止と価格変動について。後編
記事作成日:2018/08/30 執筆:加藤英宝
『再録禁止と価格変動について。』の後編。
カードの価格変動について
・ちょっと値段高すぎじゃない?
・カードを投機目的で買う人もいるんじゃない?
・高騰についてどう思う?
・高騰してるカードが下落することもある?
・今後高騰するカードは?
・高値→安値、安値→高値になったカードは?
WotC社について
・WotC社はこの高騰状況と偽造に対して今後どう対応すると思う?
・新フォーマットの可能性は?
上記内容についての回答をしていく。
今の高騰はひどすぎないか、カード高すぎじゃないか?
という意見については、
これはもう仕方がないとしか言えない。
現在のプレイヤー層を考えてみるとわかる。
あなたのMTG歴は何年ですか?
あなたの年収はいくらですか?
あなたは現在何歳ですか?
という質問の回答を沢山の人からかき集めてみると簡単だ。
この3つの質問の回答から導き出される一言が、
「お金はあるが時間がない。」
になるはず。
MTGの世界も高齢化社会である。
社会人になってからMTGを始めた人、
学生時からずっと長くやっている人、
社会人の時からで数えてもMTG歴二桁の人、
様々だとは思うが、
現在、どう考えてもMTGは大人の趣味である。
トレーディングカードゲームの王という立場は、
スポーツに置き換えると野球のようなもの。
数あるスポーツの中で野球ほど興行として成り立っているものは無いだろう。
野球は子供から大人までプレイされるスポーツとして確立しているが、
プロ野球の試合の観戦というものは子供だらけにはならない。
チケット代からしてスポーツ観戦は大人の趣味だ。
MTGも最初はよく子供の遊びと言われた。
学生で始めた人も少なくない。
けれども継続してプレイする人は今や大人が多い。
ショップをやっているとよくわかるのだが、
小学生や中学生がカードを買いに来る事はとても少ない。
高校生ですら少ない。
お客様の大半は大学生以上。
学生とニートは時間があるが、
多くの社会人は限られた時間しか趣味の時間を持てない。
逆に、
社会人は一定量自分の使えるお金に自由がきくが、
学生とニートは限られたお金しか趣味に費やせない。
(たまにどこかの元首相みたいな例外もいる。
あの人は趣味で政治屋でもやっているのかと思う。)
こういう社会人プレイヤー層は
「限られた遊べる時間に気合とお金を突っ込む!」
と思う人が当然のように増える。
なにせMTGは一生楽しめる趣味なのだ。
どこかの店主も、
「カードショップやめてMTGだけずっとやっていたい。」
などと不謹慎な事を考える事があるのだ。
そいつは今、仕事のし過ぎで頚椎症性神経根症にかかって半年以上だ。
こんな事を考えているバチがあたったのだろう。
MTGを一生楽しめる趣味だと思うからこそお金もかけたいもの。
そして、
学生の時は買えなかったあの憧れのカードを今こそと思う人がいるのも、
全く不思議な事ではない。
昔は5000円だったカードが今は2万、3万。
でも「今の自分なら買える」と言いながらそのお金を出す人がいるから、
当然の如く需要と供給のバランスが変わり、
カードの価格は高騰する。
これはもう防ぎようがない。
経済というものは常に需要と供給で価格が決まる。
「今の値段は異常だ。」
という人の気持ちはとてもよくわかる。
とてもよくわかるのだが、
その「異常な値段」で買う人がいれば、
その「異常な値段」は「相場として正当な値段」になる。
もしその品が下落したら、
「正常な値段に戻った。前の値段が異常だった。」
という人が出るのもわかる。
しかし、経済の世界の中では、
どちらも正常な値段だ。
・高値→安値、安値→高値になったカードは?
という質問があったが、
高値→安値は、
「スタンダードでだけ活躍して、
流行らなくなってモダン以下で使われなくなったカード全般。」
で終わり。
安値→高値は
《Black Lotus》
と一言で終わってしまいそうな。
このカード、25年前は500円しないくらいのパックから出るカードだったのだから。
それが今や100万円超え。
もうちょっとまともに回答すると、
オールドスクール系カードと再録禁止系カードは全般的に高騰。
高騰したものが下落はありえるかと言えば無いとは言わない。
「上がり続ける株は無い。」
という経済の言葉もある。
真っ先に下がるとすれば、
「今後廃れていくフォーマットで一線級のカード」が下がる事が最もありえる。
スタンダード落ちも話としては近い。
今のプレイヤーは知らない人もいるが、
昔はエクステンデッドという、
レガシーとスタンダードの間のレギュレーションがあった。
今のモダンみたいなものだが、
当然今とはカードプールもアーキタイプも違っていた。
しかし、ある時から一気に廃れ、
公式レギュレーションからも消えてしまった。
こういう事が起きるとそのフォーマットでの一線級カードは下落がありえる。
今後こういった環境に対し、
どう対応するのかという事については、
WotC社はとても複雑な立場にある。
「MTGが廃れる事があってはならない。
多くのプレイヤーにMTGを長く続けてもらいたい。
MTGを長く続けているプレイヤーほどEDH、レガシー、ヴィンテージのような、
昔のカードも今のカードも気にしなくて良い遊び方に流れていく。
この遊び方に流れていくと、
新しいカードを買わなくなる人も出てくる。
しかし、WotC社としては新しいカードが売れてもらわないと困る。
かといって再録禁止カードの再販などしようものなら、
会社としての信用が崩れる事も恐ろしいが、
プレイヤーが離れる可能性も恐ろしい。
なんとか話題性あるカードで新カードを買ってもらいたいし、
その試行錯誤も沢山しているものの、
批判ももちろん色々ある。
さあ、どうしよう。」
今のWotC社の立場はこんな感じだろうと思う。
この文の途中にもあり、
前述の部分にもある通り、
プレイヤーはある程度高齢化が進んでいて、
MTG歴も長くなってきている。
そうなると、
WotC社の望みとは相反してしまう価値観の人はどうしても出てきてしまう。
それが先程言った、昔買えなかったカードを今買う層である。
これにどうWotC社が対応するか、
それは古参にも受け入れてもらえる新カードの発行という課題になる。
ここ数年はその課題に大失敗と言って過言でないセットの発売が多く、
(特に精神VS物理のセットは最悪だった。)
ドミナリアでなんとか盛り返しに来ている。
ただ、ドミナリアで盛り返したものの、
やはりレガシー、EDHを始めとした、
古いカードを使った遊び方の勢いは止まらないし、
止めるわけにもいかない。
WotC社の対応、課題はレギュレーションにも求められている。
モダンとレガシーの間に作るか、
それともモダンとスタンダードの間に作るか、
予想の斜め上を行って、オールドスクールをオフィシャルにするか。
なんにせよWotC社には、「飽きさせない工夫」を求められている。
個人的には、
「ヴィンテージとレガシーの間にもう1つレギュレーション作るからな!」
というくらいにチャレンジャーな事をしていただきたい。
絶対やらないと思うけれども。
ではまた。